電子取引の取引情報の保管について
黒田「リエさん、以前もお話ししましたが電子取引の取引情報の保管に関して、明らかになった部分がありますので説明させて頂いていいですか。」
リエ「電子取引の取引情報の保管というと、ネットショップでの買い物に伴う領収書や、取引先からメール添付で送付された請求書や見積書等で、相手先から紙で提供されていないものはオリジナルのデータを保管しなければいけないという新しい決まりのことですよね。」
黒田「そうです。本来は令和4年の1月から開始とされていたところ、実質的に2年後の令和6年1月に延長されましたが、『電子帳簿保存法一問一答』で新たな情報が公表されていますので、それについて申し上げます。」
リエ「お願いします。」
黒田「まず一つはネットバンクの振込控も電子取引情報に該当することが明らかにされています。」
リエ「やはりそうですか。恐らく該当するとは伺っていましたが、そうなると該当書類がかなり増えますよね。」
黒田「そうですね。各銀行のインターネットネットバンキングの機能にもよりますが、振り込んだ後の、振込日・振込先・振込金額といった情報が表示されるデータを、検索できるように保管しておかなければなりません。」
リエ「となると、特定の振込日で複数の振込情報が一覧で表示されるデータでは、振込先や振込金額で検索ができないので、まとめて複数の振込を行っていても1件毎に分けて保管しないといけませんね。」
黒田「非常に手間のかかる作業になってしまいますが、今のところはそうせざるを得ない状況です。」
リエ「わかりました。他は何がありますか。」
黒田「ほかで御社に関係ありそうなことでは、保管された電子取引情報の訂正削除履歴が残るシステムで保管をしたとしても、そのシステムの外、つまりその影響が及ばないインターネットサイトでダウンロードしたり、メールで受信したような場合は、その受信に関する情報についての訂正削除履歴がシステムには残らないので、それらの情報の取扱いについての規程が必要となります。」
リエ「なるほど、当社も場合によってはシステムで保管することも想定していますが、電子取引情報の受信に関する情報ついてはどうしてもシステム外になるはずなので、いずれにしても電子取引情報の取扱いに関する規程は必要ということですね。」
黒田「あとは、単価契約など取引金額のない契約書や見積書といった情報は、取引金額を空欄か0円のどちらかに統一して、その統一した方の条件で検索できるようにしておけばいいそうです。」
リエ「それは対応が簡単そうですね。わかりました。」
黒田「あと、この電子取引情報の保管規定は延長されたといっても、あくまで『やむを得ない場合』に令和5年12月31日まで書面による保管が認められるということなので、『やむを得ない場合』がどの程度のものなのかが明らかになっていませんでした。ただ『電子帳簿保存法一問一答』で、税務調査等で電子取引情報の保管について確認された場合に、現状の対応状況と今後の見通しについて説明できれば差し支えないとされています。したがって、全くやっていませんというのは良くないと思いますが、例えば『社内のパソコンに保管しているが、検索を前提にした保管方法のルールについて検討中で、令和5年の12月までにはルールを確定して、令和6年1月には完全な状態で運用する予定です』や『システム導入を検討しているがどのシステムを導入するかを検討中で、令和4年中には導入システムを決定し、令和5年〇月には運用を開始する予定です』といった説明ができればいいということだと思われます。」
リエ「そうですか、当社も中途半端な状態だったので心配していましたが、現状と今後の説明はできそうなので少し安心しました。」
黒田「今後も新たな情報が出てくると思いますが今のところ御社に関係ありそうな新情報は以上です。」
リエ「気がかりが全て解決したわけではありませんが、有難うございました。引き続きよろしくお願いします。」