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非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例措置

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1.制度の仕組み

 後継者(特例経営承継受贈者・特例経営承継相続人等)が非上場会社(特例認定贈与承継会社・特例認定相続承継会社)の代表権を有していた者から、贈与又は相続若しくは遺贈により、その特例認定贈与承継会社・特例認定相続承継会社の非上場株式を取得した場合には、一定の条件の下、その取得した全ての非上場株式に係る課税価格に対応する贈与税又は相続税について、その後継者の死亡の日等までその納税が猶予されます。

2.主な適用要件

(1)先代経営者の要件

・会社の代表者であったこと(贈与時までに代表権の返上が必要)
・被相続人と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ、その同族関係者の中で筆頭株主であったこと

(2)後継者の要件

●特例経営承継受贈者の要件
・会社の代表者であること(代表者はその者以外にいてもよい)
・18歳以上であり、かつ、役員就任後3年を経過していること
 後継者が被相続人の相続開始の直前において特例認定承継会社の役員でないときであっても、次の場合には本制度の適用を受けることができます。

① 被相続人が70歳未満で死亡した場合
② 後継者が中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の確認を受けた特例承継計画に特例後継者として記載されている者である場合

・同族関係者と合わせて発行済議決権株式総数の過半数を保有し、かつ、その同族関係者の中に保有株式数の上位者がいないこと(認定対象者は代表権を有する承継計画に記載された発行済議決権株式総数の10%以上を有する者で3人までに限る)
・贈与時から認定申請日まで、贈与により取得した特定認定贈与承継会社の株式のすべてを保有していること

●特例経営承継相続人等の要件
・特定代表者であった被相続人の死亡の直前において役員であったこと
・相続開始日の翌日から5ヶ月を経過する日において代表権(制限が加えられた代表権を除く)を有していること
・相続又は遺贈により株式等を取得した代表者であり、同族関係者と合わせてその過半数を保有し、かつ、その同族関係者の中に保有株式数の上位者がいないこと(認定対象者は代表権を有する承継計画に記載された発行済議決権株式総数の10%以上を有する者で3人までに限る)
・被相続人の相続開始時から認定申請日まで、相続又は遺贈により取得した特例認定相続承継会社の株式のすべてを保有していること

(3)先代経営者以外からの贈与

・先代経営者以外の会社代表者でなかった複数の株主からの贈与・相続・遺贈の場合も適用対象となります。
・特例経営承継受贈者が特例認定贈与承継会社の代表者以外の者から贈与等により取得する特例認定承継会社の非上場株式等については、特例経営贈与承継期間内にその贈与等に係る申告書の提出期限が到来するものに限り、納税猶予の特例の対象となります。

(4)適用対象となる会社

・「中小企業基本法」で規定された中小企業であること
・非上場会社であること
・資産保有型会社等に該当しないこと等

(5)事業継続要件

●法定申告期限後5年間の事業継続期間
 雇用確保要件として、常時使用する従業員数が5年平均で贈与又は相続時の従業員数の8割以上であることが必要です。ただし、特例事業承継税制ではこの雇用確保要件を満たさない場合でも、認定経営革新等支援機関の意見が記載されている「雇用確保要件を満たせない理由を記載した書類」を都道府県に提出すれば納税猶予の取消しはありません。

(6)担保の提供

 この制度の適用を受けるためには、原則として「特例適用非上場株式等」のすべてを担保に提供する必要があります。

(7)「継続届出書」の提出

 引き続きこの特例の適用を受ける旨や、会社の経営に関する事項を記載した「継続届出書」を、経営承継期間内(5年間)は毎年、その期間の経過後は3年ごとに所轄税務署へ提出する必要があります。

(8)「特例承継計画」の提出

 原則として平成30年4月1日から令和6年3月31日までに、会社は認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて作成した「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります。

3.減免制度

 従来からの事業承継税制において、民事再生や会社更生の時に一定の猶予税額を免除する制度があるのと同様、特例事業承継税制においても、「経営環境の変化を示す一定の要件」を満たす場合には、特例承継期間経過後に非上場株式の譲渡、合併による消滅、解散時において減免制度が導入されています。

4.相続時精算課税制度の適用

 特例事業承継税制では、特例経営承継受贈者が贈与者の推定相続人以外の者(その年の1月1日において18歳以上である者に限る)であり、かつその贈与者が同日において60歳以上である場合には、相続時精算課税の適用を受けることができます。

5.猶予税額の納付・免除等

(1) 5年間の事業継続要件を満たさなくなった場合には、猶予贈与税額・猶予相続税額の全部を利子税と併せて納付する必要があります。
(2) 5年経過後、対象株式を継続保有していれば、猶予が継続され、一定の場合に贈与税・相続税の猶予税額が免除されます(「免除届出書」の提出)。
(3) 5年経過後、対象株式を譲渡した場合は一定の猶予税額等の納付が必要です。

6.適用時期

 平成30年1月1日から令和9年12月31日までの間に贈与等により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用されます。

 このコンテンツの内容は、令和4年4月20日現在の法令等によっています。

資料提供(書誌出典)

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書名:令和4年版 税務・労務ハンドブック

発行日:2022年6月7日
発行元:株式会社 清文社
規格:B6判 804頁
著者:公認会計士・税理士 馬詰政美、
   公認会計士・税理士 菊地弘、
   公認会計士・税理士 井村奨、
   特定社会保険労務士 佐竹康男、
   特定社会保険労務士 井村佐都美 著

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2022.06.14 15:32:35