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DX会計事務所の作り方 その2 「紙のDX・・・業務のペーパーレス化」

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中小企業DX推進研究会ではDX会計事務所になるためのステップとして5つの工程を提唱しています。今回は、ステップ2「紙のDX」について解説していきます。

【ペーパーレス化のメリット】

 DX会計事務所になるためのふたつ目のステップは「物理的な紙をなくす」事です。会計事務所の仕事は紙からのインプットと紙へのアウトプットが非常に多いのですが、紙が存在する限りデジタルの恩恵は享受できません。紙がなくなることによって、会計事務所の業務においては下記のようなメリットが得られます。

・情報伝達のスピードとコスト
紙の情報伝達は郵送や手渡しの為に多くの時間とコストがかかります。紙がデータ化されることによって距離に関係なく、一瞬で情報を伝達することができるようになります。

・保管場所
多くの事務所は顧問先の情報を紙で保管するため、巨大な書庫を事務所内に設置しています。紙がデータ化されることによって保管場所の問題が解決されます。

・処理速度の向上
紙に記載された「情報」がデータになっていれば、コンピュータによって自動的に処理を行うことが可能となります。

 ペーパーレス化によって業務のやり方が大きく変わると、局所的には業務スピードが低下したり、慣れない作業で従業員にストレスがかかったりすることもあり、着手しづらいという不安もあるのではないでしょうか。そこで、まずはペーパーレス化の方式と、それぞれの強み弱みを把握して、ストレスの少ないスムーズなペーパーレス化を目指していきましょう。

【ペーパーレス化の方式】

 ペーパーレス化の方式で現在、多くの事務所が取り組んでいる方法が下記の2つではないでしょうか。

①紙をスキャンし、電子資料とする方法
 この方式は多くの事務所がすでに実践されている方法です。紙を電子資料にすることによって「情報伝達のスピードとコスト」と「保管場所」に対してのメリットを享受できるようにしたものです。紙に記載された情報がデータ化されているわけではないので、コンピュータの自動処理による「処理速度の向上」のメリットは、この方法のみでは享受できません。しかしながら、ほぼすべての紙をデータに変換することができるうえ、その作業は容易なため、実践しやすい方法です。

②データの発生源で情報をデータ化し、業務フロー上ではデータのみを取り扱う方法
 会計システムに搭載されている、金融機関の明細データ連携がその代表的なものでしょう。通帳に記載されていたデータを直接システムに取り込んでしまい、以後そのデータを紙に落とし込むことなく、試算表や決算書といった最終のアウトプットまでもっていくことができます。情報をデータで取得することによって、自動仕訳などの機能で処理そのものを自動化することもできるようになります。
 この方式はインプットの段階をいかに抑えるかが重要となりますが、2022年現在ではすべてのインプットをデジタル化することは現実的には難しく、どこかで紙に記載されたデータを手入力によってデータ化する必要は出てきてしまいます。

 ペーパーレス化をするうえで、②の方法は理想的ではあるものの、実践のしやすさでは①の方法が現実的であると言えます。ペーパーレス化に初めて取り組むのであれば①の方法を採用したほうが、効果は上がりやすいでしょう。しかし、①の方法でも業務フローのほとんどで紙のまま処理を行い、最終的なアウトプットのみをスキャンして電子資料で保管するという方式に落ち着いてしまうケースもあります。これは、紙の「保管場所」に対するメリットのみに注目してしまったり、業務のしやすさなどから紙をなくしてしまうことへの抵抗を感じてしまうことに原因があります。そこで「情報伝達のスピードとコスト」というペーパーレス化のメリットを最大限享受しつつ、運用においての抵抗感をできるかぎり小さくした、ペーパーストックレスという方式をお勧めしています。

【ペーパーストックレスとは】

 ペーパーストックレスは「保管しない」という意味の「ストック」+「レス」を組み合わせた造語ですが、個人の業務上の印刷にはあまり制約をかけず、あくまでもアウトプット(中間成果物も含む)のみを紙で保管しないという事を意識してもらうためにこのような名称としています。ただし、「保管場所」のみに意識が向かないよう、運用にはいくつかのポイントがあります。

①スキャン
 紙の資料を業務フローの上流で電子資料に変換することで、「情報伝達のスピードとコスト」というメリットを担保します。また、スキャン業務を他の業務と分けて分業することで業務効率をあげます。

②フォルダ、ファイルについてルールを順守する
 電子資料の管理は紛失防止と検索性の観点などから、名称、フォルダ階層、保存場所についてルールの徹底が求められます。

③業務フロー
 電子資料であれば、既存の紙を使用した業務フローに近い形を作ることもでき、作業者のストレスも小さくすることができます。

④ツール
 電子資料を紙と同様に扱うことができるように、管理・編集がしやすいツールを使用します。

 ペーパーストックレスの詳細な方法については、研究会会員に動画で詳しく解説しています。
 無料会員でも閲覧はできますので、興味がある方は是非お申し込みください。
 https://dxgroup.jp/member-registration/

執筆者情報

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山口 高志

中小企業DX推進研究会
会長

2005年アイクスグループ (現 セブンセンスグループ) 入社。システムありきではなく「運用すること」を重視し、現場にマッチした仕組みを提案・構築し、高い存在感を示している。シンクライアントシステム、ペーパーレスシステムなどのシステム構築と運用に携わるとともに、会計事務所のシステム導入サポート、コンサルティングも行っている。
【中小企業DX推進研究会とは】
中小企業の課題解決と経営革新に役立つDXの推進のための、会計事 務所を中心とする研究会。
すべての中小企業でのDX実現のために、その成功事例や推進手法を研究し、会計事務所を通じてその情報を発信し続けます。

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