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拡充される中小企業向け所得拡大促進税制

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リエ「黒田さん、新政権の経済対策の一つとして賃上げ税制が打ち出されていましたが、その内容って分かりますか。」

黒田「詳細はまだ不明ですし、まだ確定したわけでもありませんが、先日公表された令和4年度税制改正の大綱でその概要が記載されていましたので、大まかな内容は分かります。」

リエ「どんな内容だったのでしょうか。」

黒田「所得拡大促進税制は大企業と中小企業で内容が異なりますので、中小企業向けの制度について申し上げますね。」

リエ「お願いします。」

黒田「といっても従前の制度とあまり変わってはいません。元々令和3年度の税制改正で改正されたばかりですので、そこで既に決まっていた内容からさらに税額控除額を大きくするという改正内容でした。」

リエ「従前の制度というと、会社が支払った1年分の給与が前期のそれと比べて一定以上増えていれば、税額控除が受けられるというものでしたよね。」

黒田「そうです。雇用者給与等支給額(会社が適用年度に支払った給与の合計額)が比較雇用者給与等支給額(前年度又は前年の雇用者給与等支給額)と比べて1.5%以上増加していた場合は、その増加額の15%相当額を法人税額又は所得税額から控除できるというものでした。」

リエ「確か雇用者給与等支給額というのは、役員と役員の特殊関係者に対する給与は除く必要がありましたよね。」

黒田「その通りです。その他にも出向料を受け取っている場合はその受取出向料を除くなどの決まりがあります。そして雇用者給与等支給額が2.5%以上増加していて、かつ教育訓練費が10%以上増加している場合などは、15%に10%上乗せした25%相当額の税額控除ができるというものでした。」

リエ「何となく思い出しました。それがどう変わったのでしょうか。」

黒田「1.5%以上の増加で15%の税額控除というベースは変わっていません。変わったのは雇用者給与等支給額が2.5%以上増加しただけで、15%の上乗せができるようになりました。」

リエ「教育訓練費は増加していなくても上乗せができるということですか。」

黒田「そうです。雇用者給与等支給額が2.5%以上増加していれば、その増加額の30%(15%+15%)相当額の税額控除が可能となりました。」

リエ「教育訓練費も色々細かい決まりがあって判断が難しかったと記憶しているので、教育訓練費の条件が無くなったのは助かりますね。」

黒田「条件が無くなったというよりは別口になったといいますか、教育訓練費が10%以上増加していれば10%の上乗せができるようにもなりました。」

リエ「そうなんですね。ということは、雇用者給与等支給額が2.5%以上増加していて、教育訓練費も10%以上増加していれば、雇用者給与等支給額の増加額の40%(15%+15%+10%)相当額が税額控除できるということですか。」

黒田「そうなりますね。ただ法人税額や所得税額の20%相当額が上限にはなりますが。」

リエ「やっぱりそれはあるんですね。ところでその改正はいつから適用されるのでしょうか。」

黒田「法人は令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する事業年度、個人事業者は令和5年と令和6年に適用される予定です。」

リエ「そうですか。当社は3月決算ですから、来期の給与が今期の給与より増加していれば適用の可能性があるということですね。分かりました4月は昇給の時期でもありますので、その制度の内容を踏まえて検討するよう課長に話しておきます。有難うございました。」

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「黒田さん、新政権の経済対策の一つとして賃上げ税制が打ち出されていましたが、その内容って分かりますか。」黒田「詳細はまだ不明ですし、まだ確定したわけでもありませんが、先日公表された令和4年度税制改正の大綱でその概要が記載されていましたので、大まかな内容は分かります。」リエ「どんな内容だったのでしょうか。」黒田「所得拡大促進税制は大企業と中小企業で内容が異なりますので、中小企業向けの制度について申し上げますね。」リエ「お願いします。」黒田「といっても従前の制度とあまり変わってはいません。元々令和3年度の税制改正で改正されたばかりですので、そこで既に決まっていた内容からさらに税額控除額を大きくするという改正内容でした。」リエ「従前の制度というと、会社が支払った1年分の給与が前期のそれと比べて一定以上増えていれば、税額控除が受けられるというものでしたよね。」黒田「そうです。雇用者給与等支給額(会社が適用年度に支払った給与の合計額)が比較雇用者給与等支給額(前年度又は前年の雇用者給与等支給額)と比べて1.5%以上増加していた場合は、その増加額の15%相当額を法人税額又は所得税額から控除できるというものでした。」リエ「確か雇用者給与等支給額というのは、役員と役員の特殊関係者に対する給与は除く必要がありましたよね。」黒田「その通りです。その他にも出向料を受け取っている場合はその受取出向料を除くなどの決まりがあります。そして雇用者給与等支給額が2.5%以上増加していて、かつ教育訓練費が10%以上増加している場合などは、15%に10%上乗せした25%相当額の税額控除ができるというものでした。」リエ「何となく思い出しました。それがどう変わったのでしょうか。」黒田「1.5%以上の増加で15%の税額控除というベースは変わっていません。変わったのは雇用者給与等支給額が2.5%以上増加しただけで、15%の上乗せができるようになりました。」リエ「教育訓練費は増加していなくても上乗せができるということですか。」黒田「そうです。雇用者給与等支給額が2.5%以上増加していれば、その増加額の30%(15%+15%)相当額の税額控除が可能となりました。」リエ「教育訓練費も色々細かい決まりがあって判断が難しかったと記憶しているので、教育訓練費の条件が無くなったのは助かりますね。」黒田「条件が無くなったというよりは別口になったといいますか、教育訓練費が10%以上増加していれば10%の上乗せができるようにもなりました。」リエ「そうなんですね。ということは、雇用者給与等支給額が2.5%以上増加していて、教育訓練費も10%以上増加していれば、雇用者給与等支給額の増加額の40%(15%+15%+10%)相当額が税額控除できるということですか。」黒田「そうなりますね。ただ法人税額や所得税額の20%相当額が上限にはなりますが。」リエ「やっぱりそれはあるんですね。ところでその改正はいつから適用されるのでしょうか。」黒田「法人は令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する事業年度、個人事業者は令和5年と令和6年に適用される予定です。」リエ「そうですか。当社は3月決算ですから、来期の給与が今期の給与より増加していれば適用の可能性があるということですね。分かりました4月は昇給の時期でもありますので、その制度の内容を踏まえて検討するよう課長に話しておきます。有難うございました。」
2022.01.17 16:26:32