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第30回 生産性向上に役立つ設備全般が対象!厚生労働省の業務改善助成金とは?

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 厚生労働省の業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者が生産性向上のための設備投資を行った際の費用を助成する大変人気が高い助成金です。尚、設備投資等を行うだけでなく、一定数の従業員の賃金を増額することで事業場内最低賃金を引き上げる必要があります。
 2021年は正規と非正規労働者の待遇格差をなくすために同一労働同一賃金が中小企業でも義務化され、最低賃金も28円アップと過去最大の引上げとなり、多くの事業者は従業員の賃金アップ対応に追われています。その賃金アップにより生じた損失分を、生産性向上によって補うための取組を支援するというのが業務改善助成金の目的です。
 今回はこの業務改善助成金についてご紹介します!
 助成対象者は事業場単位となり、事業場規模が100人以下、且つ事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内の事業場が対象となります。東京都の場合、2021年の最低賃金が1041円のため、事業場内最低賃金が1071円以内の事業場が対象となります。尚、最低賃金未満の賃金しか払っていない場合、最低賃金法違反となり、50万円以下の罰金を科せられる恐れがあります。
 助成率は事業場内最低賃金が900円未満の場合、4/5(生産性要件を満たした場合9/10)となります。事業場内最低賃金900円以上の場合は3/4(生産性要件を満たした場合4/5)です。尚、「生産性要件」を満たすには、助成金支給申請時の直近の決算書類に基づく労働者1人当たりの付加価値が、3年度前の決算書類と比べて伸び率が一定以上である必要があります。
 上限額は賃金引上げ額(20円、30円、45円、60円、90円以上)、引上げる従業員数(1人、2~3人、4~6人、7人以上、10人以上)によって分かれます。尚、「10人以上」は事業場内最低賃金900円未満の事業場か、生産量要件(直近3ヶ月間の売上高等の月平均値が前年または前々年同月比30%以上減少)を満たした事業場のみ適用されます。
申請するにはまず交付申請書・事業実施計画・対象経費に係る相見積・申請前3月分の賃金台帳の写し等の必要書類を労働局に提出します。尚、2021年度の交付申請期限は2022年1月31日となります。また、同一年度内であれば2回まで申請することができます。
 審査を経て交付が決定した後、提出した事業実施計画に沿って取組を実施します。具体的には、以下の取組を行う必要があります。まず就業規則や賃金規程等を改定することで、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた後、その引上げ後の賃金を対象従業員に支払います。また、計画に記載した設備投資等を実際に行い、業務改善を行います。尚、取組は2022年3月31日までに完了させる必要があります。尚、賃金引上げの6カ月経過後に賃金台帳の提出が必要ですが、全労働者分ではなく賃金引上げ対象者分のみで良いとのことです。
取組が完了しその結果を労働局に報告して、認定されれば助成金が支給されます。尚、申請前3カ月及び賃金の引上げを行ってから6カ月を経過するまでに、対象事業場の従業員を解雇した場合、または従業員の時間当たりの賃金額を引き下げた場合、支給対象外(リンク先6P 参照)となります。
 支給対象外(リンク先6P 参照)は謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、原材料費、機械装置等購入費、造作費、人材育成・教育訓練費、経営コンサルティング経費、委託費のいずれかに該当し、且つ「生産性向上」や「労働能率増進」に資することを説明できれば、労務管理ソフトや人材育成セミナー参加費等幅広い経費が対象となります。また、生産量要件を満たし、且つ30円以上の賃金アップを行う場合、「乗車定員11人以上の自動車及び貨物自動車等」や「パソコン、スマホ、タブレット等の端末及び周辺機器」も対象経費に含まれます。尚、LED電球交換等のコスト削減のための経費、暖房器具の設置といった職場環境改善のための経費、事務用機器や消耗品等の通常の事務活動に伴う経費は対象外となります。
 業務改善助成金は人件費を増額させることがマスト要件となるのがネックですが、「生産性向上」に資することを説明できれば非常に広範囲の経費を対象とすることができます。賃金の引上げを行う必要がある事業者はこの助成金を活用してみましょう。

引上げる賃金額

引上げる労働者数

 上限額  

補助率

助成対象事業場

20円以上

1人

20万円

事業場内最低賃金900 円未満】
4/5
生産性要件を満たした場合は
9/10

【事業場内最低賃金900 円以上】
3/4
生産性要件を満たした場合は
4/5

・日本国内の事業場で所属する労働者が 100 人以下

・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が 30 円以内

2~3人

30万円

4~6人

50万円

7人以上

70万円

10人以上

80万円

30円以上

1人

30万円

2~3人

50万円

4~6人

70万円

7人以上

100万円

10人以上

120万円

45円以上

1人

45万円

2~3人

70万円

4~6人

100万円

7人以上

150万円

10人以上

180万円

60円以上

1人

60万円

2~3人

90万円

4~6人

150万円

7人以上

230万円

10人以上

300万円

90円以上

1人

90万円

2~3人

150万円

4~6人

270万円

7人以上

450万円

10人以上

600万円

※対象労働者10人以上で申請する場合、以下のいずれかを満たす必要あり
・事業場内最低賃金900円未満の事業場
・直近3ヶ月間の売上高や生産量等の月平均値が前年または前々年同月比30%以上減少

執筆者情報

株式会社ナビット

わたしたち株式会社ナビットは補助金・助成金情報検索サイト「助成金なう」を運営しております。
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 厚生労働省の業務改善助成金は、中小企業や小規模事業者が生産性向上のための設備投資を行った際の費用を助成する大変人気が高い助成金です。尚、設備投資等を行うだけでなく、一定数の従業員の賃金を増額することで事業場内最低賃金を引き上げる必要があります。 2021年は正規と非正規労働者の待遇格差をなくすために同一労働同一賃金が中小企業でも義務化され、最低賃金も28円アップと過去最大の引上げとなり、多くの事業者は従業員の賃金アップ対応に追われています。その賃金アップにより生じた損失分を、生産性向上によって補うための取組を支援するというのが業務改善助成金の目的です。 今回はこの業務改善助成金についてご紹介します! 助成対象者は事業場単位となり、事業場規模が100人以下、且つ事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内の事業場が対象となります。東京都の場合、2021年の最低賃金が1041円のため、事業場内最低賃金が1071円以内の事業場が対象となります。尚、最低賃金未満の賃金しか払っていない場合、最低賃金法違反となり、50万円以下の罰金を科せられる恐れがあります。 助成率は事業場内最低賃金が900円未満の場合、4/5(生産性要件を満たした場合9/10)となります。事業場内最低賃金900円以上の場合は3/4(生産性要件を満たした場合4/5)です。尚、「生産性要件」を満たすには、助成金支給申請時の直近の決算書類に基づく労働者1人当たりの付加価値が、3年度前の決算書類と比べて伸び率が一定以上である必要があります。 上限額は賃金引上げ額(20円、30円、45円、60円、90円以上)、引上げる従業員数(1人、2~3人、4~6人、7人以上、10人以上)によって分かれます。尚、「10人以上」は事業場内最低賃金900円未満の事業場か、生産量要件(直近3ヶ月間の売上高等の月平均値が前年または前々年同月比30%以上減少)を満たした事業場のみ適用されます。申請するにはまず交付申請書・事業実施計画・対象経費に係る相見積・申請前3月分の賃金台帳の写し等の必要書類を労働局に提出します。尚、2021年度の交付申請期限は2022年1月31日となります。また、同一年度内であれば2回まで申請することができます。 審査を経て交付が決定した後、提出した事業実施計画に沿って取組を実施します。具体的には、以下の取組を行う必要があります。まず就業規則や賃金規程等を改定することで、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた後、その引上げ後の賃金を対象従業員に支払います。また、計画に記載した設備投資等を実際に行い、業務改善を行います。尚、取組は2022年3月31日までに完了させる必要があります。尚、賃金引上げの6カ月経過後に賃金台帳の提出が必要ですが、全労働者分ではなく賃金引上げ対象者分のみで良いとのことです。取組が完了しその結果を労働局に報告して、認定されれば助成金が支給されます。尚、申請前3カ月及び賃金の引上げを行ってから6カ月を経過するまでに、対象事業場の従業員を解雇した場合、または従業員の時間当たりの賃金額を引き下げた場合、支給対象外(リンク先6P 参照)となります。 支給対象外(リンク先6P 参照)は謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、原材料費、機械装置等購入費、造作費、人材育成・教育訓練費、経営コンサルティング経費、委託費のいずれかに該当し、且つ「生産性向上」や「労働能率増進」に資することを説明できれば、労務管理ソフトや人材育成セミナー参加費等幅広い経費が対象となります。また、生産量要件を満たし、且つ30円以上の賃金アップを行う場合、「乗車定員11人以上の自動車及び貨物自動車等」や「パソコン、スマホ、タブレット等の端末及び周辺機器」も対象経費に含まれます。尚、LED電球交換等のコスト削減のための経費、暖房器具の設置といった職場環境改善のための経費、事務用機器や消耗品等の通常の事務活動に伴う経費は対象外となります。 業務改善助成金は人件費を増額させることがマスト要件となるのがネックですが、「生産性向上」に資することを説明できれば非常に広範囲の経費を対象とすることができます。賃金の引上げを行う必要がある事業者はこの助成金を活用してみましょう。
2021.12.10 17:34:50