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簿外負債は事前開示がミソ

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「退職金負債」と「社会保険未加入負債」

貸借対照表の右上に計上されているのが「負債」ですが、譲り受け側が一番気にする項目といっていいでしょう。

何を気にするのかと言うと、貸借対照表に計上されている買掛金や借金ではなく、計上されていない「簿外負債」があるのかどうかという点です。

小さな会社でよくある簿外負債は、「退職金負債」と「社会保険未加入負債」。

退職金規程があれば、その計算式にのっとって現時点で既に発生している退職金額を概算把握しておき、譲り受け手に事前に伝えておくべきです。

また、会社であれば社会保険への加入は必須ですが、残念ながら未加入の会社も現実的には存在しています。

この場合、そのことを事前に伝えておくべきでしょう。
承継後に、譲り受け側が国から追加徴収される可能性があるからです。

簿外負債の事前開示が第三者承継成功のカギ

これらがもし譲り受け側との交渉途中で、譲り受け側により発覚したような場合は、多分その多くの交渉はブレイクとなるでしょう。

つまり、破談です。

譲り受け側の心理としては、「他にも簿外負債があるのではないか」と疑心暗鬼になるからです。

株式譲渡で会社を承継した場合、承継後は、上記の簿外負債だけではなく、会社への訴訟案件やそれにまつわる損害賠償請求など、基本的には全て譲り受け側が責任を負うことになります。

そのため、簿外負債の事前開示は、第三者承継成功のカギといえるのです。

人的保証や物的保証

また、負債で事前に確認しておくべきは、社長個人が借入金やリースで個人保証しているかどうかや、自宅などの物的保証をしているかどうかです。

可能であれば、第三者承継手続きに入る前に、これら保証を外しておくのがベターですが、そうもいかないことが多いでしょう。

この場合、これら人的保証や物的保証を一覧にしておき、「人的保証及び物的保証を外すことが承継の条件です」と、事前に譲り受け側に開示しておく必要があります。

失敗しない第三者への事業引継ぎ「事前準備5ポイント」
https://forms.gle/QECYeztPGPTt3Uor6

執筆者情報

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マネーコンシェルジュ税理士法人/ビジネスサクセション株式会社 代表

会計事務所を経験後ソニー株式会社に勤務。その後2003年今村仁税理士事務所を開業、2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。ビジネスサクセション株式会社、代表取締役社長。税理士・宅地建物取引主任者・CFP等

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2021.11.05 16:14:11