企業法務で知っておくべきインボイス制度

1.インボイス制度とは
インボイスとは、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」等(以下「インボイス」といいます)のことです。 消費税の仕組みは、課税期間の売上税額から課税仕入れ(消法 2 ①十二)に含まれていた仕入税額の控除(以下「仕入税額控除」といいます)を行い、累積課税を防いでいますが、仕入税額控除の要件として、これまでの区分記載請求書等の保存に代えて、令和5年10月1日から、インボイス等の保存が要件とされることになります(以下、平成28年改正後の消費税法のことを、新消法といい、新消法30、57の2、57の4)。インボイス制度の導入により、仕入税額控除の要件として、一定の事項を記載した帳簿の保存も必要であることについては、変更ありません。
2.インボイス制度の導入による影響
インボイス制度の導入は、消費税において食品等に関する軽減税率に対応するためや、 消費税名目で支払われながら、支払先が消費税免税事業者であることなどから、消費税が納税されず、支払先の利益となってしまうなどの益税を解消することなどが目的とされています。インボイス制度の導入により、適格請求書発行事業者でない者からの仕入について、 仕入税額控除が受けられないことになるため、対応できない事業者が取引を中止されるおそれがあるなどの影響がありますので、現時点において免税事業者であったとしても、 適格請求書発行事業者の登録を受けることについて、検討したほうがよいでしょう。
3.適格請求書発行事業者の登録
インボイス制度の導入後、仕入税額控除を受けるためには、適格請求書発行事業者の登録を受けるとともに、課税事業者となる必要があり、課税事業者となることにより、消費税の申告義務が生じます。 インボイス制度が導入される令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、令和3年10月1日から令和5年3月31日までに適格 請求書発行事業者登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。免税事業者が課税事業者となるためには、別途「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要がありますが、 経過措置として、登録日が令和5年10月1日の属する課税期間の場合、適格請求書発行事業者の登録申請書のみで足りるとされています。適格請求書発行事業者となった場合には、 取引の相手方の求めに応じて適格請求書を交付する義務、写しの保存義務などが必要となります。
4.経過措置
インボイス制度を円滑に導入する観点から、経過措置として、従前の区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等と経過措置の規定の適用を受ける旨を記載した帳簿を保存している場合には、以下の一定の期間、一定の割合について、仕入税額として控除できる制度が設けられています。
期間 |
割合 |
---|---|
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで |
仕入税額相当額の80% |
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで |
仕入税額相当額の50% |
このコンテンツの内容は、2021年7月末日現在の法令等によっています。