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その8 その他の留意点

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令和3年の年末調整 手続の電子化に向けて
その1 昨年と比べて変わった点
 1 年末調整手続の電子化に向けた環境整備等
 2 税務関係書類における押印義務の見直し
 3 各種申告書を電磁的方法により提出する場合の事前承認の不要化
 4 e-Taxによる申請等の拡充
 5 新型コロナウイルス感染症に関連する所得税FAQの追加
 6 負担すべき割合が記載された控除証明書を添付する場合の当該記載の省略
 7 ベビーシッター利用料等に充てる助成金品の非課税措置
その2 年末調整手続の電子化について
 1 年末調整手続の電子化とは
 2 年末調整手続が電子化された場合の手順
 3 年末調整関係書類の電子データによる提供の対象となる書類
 4 年末調整手続の電子化に向けての勤務先における準備
 5 電子化についての実施方法の検討
 6 源泉徴収票等の電磁的方法による提供
その3 給与の源泉徴収と年末調整
 1 「居住者」及び「非居住者」の区分と源泉徴収
 2 毎月の源泉徴収
 3 年末調整とは
 4 年末調整の対象となる人ならない人
 5 年末調整を行う時
 6 非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける場合
その4 申告書作成とチェックポイント(扶養控除等申告書)
 1 各種控除を受けるために必要な申告書
 2 扶養控除等(異動)申告書の提出の有無
 3 内容の確認(扶養親族、控除対象配偶者、障害者、ひとり親、寡婦、勤労学生ほか)
その5 申告書作成とチェックポイント(基礎控除申告書等)
 1 基礎控除申告書
 2 配偶者等控除申告書
 3 所得金額調整控除申告書
その6 申告書作成とチェックポイント(保険料控除申告書)
 1 生命保険料控除額の記入と内容の確認等
 (1)生命保険料控除の概要
 (2)生命保険料控除額の記入とチェックポイント
 2 地震保険料控除額等の記入と内容の確認等
 (1)地震保険料控除等の概要
 (2)地震保険料控除額等の記入とチェックポイント
その7 申告書作成とチェックポイント(住宅借入金等特別控除申告書)
 1 受理に当たって
 2 申告書への記入方法
 3 内容の確認とチェックポイント
その8 その他の留意点
 1 年末調整の対象給与と徴収税額の集計に当たっての注意事項
 2 過納額の還付と不足額の徴収
 3 年末調整後に給与の追加払や扶養親族等の異動があった場合の再調整
 4 令和3年分の法定調書を提出する際の留意事項

1 年末調整の対象給与と徴収税額の集計に当たっての注意事項

(1)未払給与とその税額

 本年中に支給日が到来して支払の確定した給与は、未払となっている場合でも本年の年末調整の対象となりますから、その未払給与と未徴収の税額とを集計に含めます。逆に、前年分の未払給与で、本年に繰り越して支払った給与やその給与からの徴収税額は、既に前年の年末調整の対象とされていますから、集計には含めません。

(2)現物給与とその税額

 食事の支給や、各種保険料の使用者負担などの現物給与のうち課税の対象となるものについては、その支給額と徴収税額とを、それぞれ給与の総額と徴収税額の合計額に含めて集計します。

(3)本年最後に支払う給与の税額

 年末調整をする本年最後に支払う給与については、通常の月分としての税額計算を省略してもよいことになっていますが、この場合にはその給与に対する徴収税額はないものとして集計します。
 この給与の通常の月分としての税額は、年末調整により一括精算されることになります。

(4)年の中途で再就職した人の取扱い

 年の中途で就職した人で、就職前に他の給与支払者に扶養控除等申告書を提出して支払を受けていた給与がある人については、その前職分の給与を含めて年末調整を行うことになりますから、前の給与支払者から本年中に支払を受けた給与とその給与から徴収された税額を集計に含めます。
 この場合、前職分の給与とその徴収税額については、その人が前の給与支払者から交付を受けた「給与所得の源泉徴収票」などで確認することになりますが、その確認ができるまではその人の年末調整は見合わせてください。

(5)前年分の年末調整による過不足額

 前年分の年末調整による過納額や不足額を本年に繰り越して充当したり徴収したりしている場合でも、これらに関係なく、徴収税額は本年の給与から徴収すべきであった税額によって集計します。

(6)年の中途で扶養控除等申告書の提出先を変更した人の取扱い

 2か所以上から給与の支払を受けている人で、年の中途で扶養控除等申告書の提出先を変更した人については、前の提出先からその変更の時までに支払を受けた給与と、後の提出先から支払を受けた給与の全部とが年末調整の対象となりますから、その両方の給与と徴収税額をそれぞれ集計します。

2 過納額の還付と不足額の徴収

(1)過納額の還付(超過額の精算)

ア 給与支払者から還付する場合

 過不足額を計算した結果、過納額が生じた場合には、給与支払者は、その過納額を、年末調整を行った月分(通常は12月分。納期の特例の承認を受けている場合には、本年7月から12月までの分。)として納付する「給与、退職手当及び弁護士、司法書士、税理士等に支払われた報酬・料金に対する源泉徴収税額」(給与等税額)のうちから差し引き、過納となった人に還付します。給与支払者は、その月分として納付すべき税額から還付した額を差し引いた残額を納付することになります。
  年末調整を行った月分の徴収税額のみでは還付しきれないときは、その後に納付する給与等税額から差し引き順次還付します。

【注意事項】

① 年末調整をする本年最後の給与について、通常の月と同じように税額計算を行った上で年末調整をした結果、超過額が生じた場合には、その給与から徴収すべき税額(その月分の税額)は、まだ納付されていませんので、その超過額からその徴収すべき税額を控除した残額を還付します。
  なお、超過額よりもその徴収すべき税額の方が多いときは、その徴収すべき税額から超過額を差し引いた残額を徴収することになります。
② 年末調整をした給与のうちに未払の給与が含まれている場合には、その計算上生じた超過額のうちには、その未払の給与についての未徴収の税額が含まれていますので、その超過額からその未徴収の税額を控除した残額を還付します。
  超過額から未払給与分の税額を控除した場合には、その控除した部分の税額は、その未払の給与を支払うときに徴収すべき税額に充当されます。

イ 税務署から還付する場合(給与支払者が還付できない場合)

 次の場合のように、給与支払者が納付する「給与、退職手当及び弁護士、司法書士、税理士等に支払われた報酬・料金に対する源泉徴収税額」がないか、あってもごくわずかであるため、給与支払者のところでは過納額の還付をすることができない場合には、「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」などを税務署に提出することにより、税務署から給与支払者に一括して還付するか、あるいは過納となった各人に直接還付することになります。
① 解散、廃業などにより給与支払者でなくなったため、過納額の還付ができなくなった場合
②  徴収して納付する税額が全くなくなったため、過納額の還付ができなくなった場合
③ 納付する源泉徴収税額に比べて過納額が多額であるため、還付することとなった日の翌月から2か月を経過しても還付しきれないと見込まれる場合

(2)不足額の徴収

 不足額は、年末調整をする月分の給与から徴収し、なお不足額が残るときはその後に支払う給与から順次徴収します。 
 年末調整をする月分の給与から不足額を徴収すると、その月の税引手取給与(賞与がある場合には、その税引手取額を含みます。)が、本年1月から年末調整を行った月の前月までの税引手取給与の平均月額の70%未満となるような人については、「年末調整による不足額徴収繰延承認申請書」を作成して給与支払者の所轄税務署に提出し、その承認を受けて、不足額を翌年1月と2月に繰り延べて徴収することができます。

3 年末調整後に給与の追加払や扶養親族等の異動があった場合の再調整

 年末調整後に本年中に本年分の給与を追加して支払うこととなった場合や、翌年1月末日までに保険料の証明書類を提出することを条件として年末調整を行ったにもかかわらずその証明書類がその期日までに提出されない場合には、年末調整の再調整が必要となります。
 また、次の場合には、「給与所得の源泉徴収票」を受給者に交付することとなる翌年1月末日までの間、年末調整のやり直しをすることができます。
(注)翌年になってから給与の改定が行われ、本年にまで遡って支給されることになった場合の新旧給与の差額は、その給与の改定が行われた年分の所得となりますから、本年分の年末調整をやり直す必要はありません。
① 年末調整後に子が結婚して控除対象扶養親族の数が減少した場合や受給者本人が障害者に該当することとなった場合など、年末調整後に扶養親族等の数が異動した場合
② 年末調整が終わった後、配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けた配偶者や受給者本人の合計所得金額の見積額と確定した合計所得金額に差額が生じたことにより、配偶者控除額又は配偶者特別控除額が変動する場合
③ 年末調整が終わった後、住宅借入金等特別控除申告書の提出があった場合や、本年中に生命保険料や地震保険料などを支払った場合

4 令和3年分の法定調書を提出する際の留意事項

 法定調書の種類ごとに、令和2年中に提出すべきであった当該法定調書の枚数が100枚以上であった場合には、令和4年中に提出する当該法定調書はe-Tax、光ディスク等又はクラウド等により提出する必要があります。
 令和3年分の法定調書の提出期限は、令和4年1月31日(月)です。

出典 国税庁:令和3年分 年末調整のしかた(令和3年9月)
      :源泉所得税の改正のあらまし(令和3年4月)
      :その他国税庁ホームページ掲載情報(令和3年9月末現在)

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執筆者情報

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税理士 阿瀬 薫

昭和53年大阪国税局入局、国税庁法人課税課勤務等を経て、平成24年税務大学校研究部教授、27年沖縄税務署長、31年熊本国税不服審判所長を歴任し令和2年退官、税理士登録(麹町支部所属)

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2021.11.25 16:18:23