税務職員の「質問検査権」について
Q、税務調職員は、質問検査権を基に調査を行いますが、質問検査権というのはどのようなものですか。また質問検査権はどこまで及ぶのですか。
A、実は、法律の条文には”税務調査”という言葉は存在しません。税務調査が実施される法的根拠となるのが、国税通則法74条の2から74条の6に規定される質問検査権です。
質問検査権は、適正公平な課税の確保の観点から、税務職員が納税義務者等に対して質問し、帳簿書類その他の物件を検査し、または当該物件の提示若しくは提出を求めることができる行政上の権限です。国税通則法74条の2の条文を読むと「調査について必要があるとき」は、「質問する」「帳簿書類その他の物件の検査する」「事業に関する帳簿書類の検査や提示、提出を求めることができる」と明記されています。
では具体的に税目別に説明します。
所得税、法人税、消費税に関する調査
まずは、所得税からポイントを説明します。
<対象者>
(1)所得税
イ、所得税の納税義務者、納税義務があると認められる者又は確定損失申告書等を提出した者
ロ、支払調書又は源泉徴収票、信託の計算書等を提出する義務がある者
ハ、上記(イ)の者に金銭若しくは物品の給付についての権利義務がある者又はあったと認められる者
(2)法人税
イ、法人
ロ、上記(イ)の者に対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡についての権利義務がある者
(3)消費税
イ、消費税の納税義務者、納税義務があると認められる者又は還付を受けるため申告書を提出した者
ロ、上記(イ)の者に対し、金銭の支払若しくは資産の譲渡等についての権利義務がある者
税目ごとにまとめましたが、質問検査権の範囲を考えるに当たりベースになるのはこの部分です。
相続税及び贈与税に関する調査
<対象者>
(1)相続税又は贈与税の納税義務者又は納税義務があると認められる者
(2)相続税法第59条に規定する調書を提出した者又はその調書を提出する義務があると認められる者
(3)納税義務者又は納税義務があると認められる者に対し、 債権若しくは債務を有していたと認められる者又は債権若しくは債務を有すると認められる者
(4)納税義務者又は納税義務があると認められる者が株主若しくは出資者であったと認められる法人又は株主若しくは出資者であると認められる法人
(5)納税義務者又は納税義務があると認められる者に対し、 財産を譲渡したと認められる者又は財産を譲渡する義務があると認められる者
(6)納税義務者又は納税義務があると認められる者から財産を譲り受けたと認められる者又は財産を譲り受ける権利があると認められる者
(7)納税義務者又は納税義務があると認められる者の財産を保管したと認められる者又はその財産を保管すると認められる者
この他に、酒税やたばこ税等に関しても、質問検査権について示されていますが、ここでは対象者が少ないと思いますので省かせていただきます。
税務調査は、調査官個人の経験や感性、勉強度合いにより変わってきます。中でも経験が重要と言われており、複雑な調査になればなるほどそこがものを言うといいます。
なお、前記の質問検査権の規定による当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならないこととされています。この範囲で税務調査は行われます。