退職金の現物支給の注意点!
旭課長「黒田さん。ちょっといいですか?」
黒田「はい。何でしょう。」
旭課長「うちの役員1名が今度退任されるのですが、退職金として会社所有の不動産を希望しているのです。会社としては今、資金繰りが厳しいので了承する予定なのですが、何か注意することはありますか?」
黒田「退職金の現物支給ですね。まずはその不動産の時価を算定することですね。」
リエ「相続税評価額ではダメなのですか?」
黒田「はい。実際に取引される時価を算定する必要がありますので、一般的には不動産鑑定士等に査定をしてもらいます。」
旭課長「帳簿価格は2000万円くらいですが、おそらく時価は3000万円くらいでしょうね。」
黒田「その場合、帳簿価格と時価との差額1000万円の譲渡益が会社側で計上されます。そして退職金として3000万円が損金に計上されるので、結果的には帳簿価格と同じ2000万円が会社の損失となります」
リエ「退職金を受け取る方は時価3000万円の不動産が2000万円で手に入るのであれば、ラッキーですね。」
黒田「いえいえ。退職金を受け取る方は、あくまで3000万円の退職金を受け取ったことになるので、それに応じた所得税や住民税を納付することになります。」
旭課長「金銭で退職金を支給した場合は所得税や住民税を差し引いて支給しますよね。現物支給の場合はどうするのですか?」
黒田「退職金が現物資産のみの場合は、退職者から所得税及び住民税相当額を徴収することになりますので注意が必要ですね。」
リエ「えー! 退職者としてみれば退職金を貰ってるはずなのに金銭は出ていくのですか?」
黒田「更には不動産を取得することによる不動産取得税や登録免許税などの出費も個人負担ですので、その辺は前もって伝えておいたほうがよいかと思います。」
旭課長「他に何か注意することはありますか?」
黒田「消費税の問題があります。退職金の支給を決議する際の議事録に現物支給であること及び現物資産の種類・金額等が明記されていれば消費税の課税対象となりませんが、それらが明記されず単に退職金の支給とその支給額だけを決議したような場合は、元々は金銭で支給する予定だったが事後に現物資産で弁済した、いわゆる代物弁済となります。そうなると消費税法上は土地に関しては非課税売上高、建物に関しては課税売上高として処理することになります。」
旭課長「やはり退職金の現物支給となると色々と注意しなければなりませんね。ありがとうございました。」