HOME コラム一覧 住宅ローンの借換えは住宅ローン控除できるの?

住宅ローンの借換えは住宅ローン控除できるの?

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リエ「住宅ローンを返済期間中に利息軽減などの効果を得るため、別の住宅ローンに借り直し等をした場合、引続き住宅ローン控除の適用を受けることができますか。」

黒田「原則は、借換えによる新しい住宅ローン等は住宅ローン控除の対象にはなりません。」

リエ「どうして対象にならないのですか。」

黒田「本来住宅ローン控除の対象は、住宅の新築、取得又は増改築等のために直接必要な借入金又は債務であることとされています。そして、従前の住宅ローンを消滅させるための新たな住宅ローンは、これには該当しないという考え方です。しかし、一定の要件を全て満たすと、借換え後の借入金について引続き住宅ローン控除を受けることができます。」

リエ「それは、どんな要件ですか。」

黒田「その要件は『新しい住宅ローンが当初の住宅ローンの返済のためのものであることが明らかであること』と『新しい住宅ローンが10年以上の償還期間であることなど住宅ローン控除の対象となる要件に当てはまること』です。
この取扱いは、住宅取得の際に償還期間が10年未満のいわゆるつなぎ融資を受け、その後に償還期間が10年以上となる住宅ローン等に借換えた場合も同じ扱いになります。なお、住宅ローン控除を受けることができる年数は、居住の用に供した時から一定期間であり、住宅ローン等の借換えによって延長されることはありませんので注意して下さい。」

リエ「なるほど、目的や要件を満たせば引き続き適用が可能になるのですね。ところで、要件の一つである当初の住宅ローンの返済に充てることを証明できるものって何がありますか。」

黒田「そうですね。例えば、住宅ローン控除の対象となる住宅の登記簿謄本(登記事項証明書)等があります。一般的に住宅の取得等に当たって借り入れた住宅ローンの担保として、その住宅に抵当権を設定します。その後借換えを行うと、従前の住宅ローンに係る抵当権が抹消され、新たな住宅ローンに係る抵当権が設定されたことが記録されますので、このような記録が従前の住宅ローンの返済のためのものであったことを示すものの一つになります。」

リエ「住宅と住宅ローンの流れが、証明できるのですね。あともう一つ教えてほしいのですが、借換え後の控除対象となる住宅ローンの年末残高の金額はどのようになりますか。」

黒田「新しい住宅ローンの借入金額と比べて、借換え直前の残高のほうが多い又は等しいときは『借換えた新しい住宅ローンの年末残高』が住宅ローン控除の対象となります。一方で借換え直前の残高よりも新しい住宅ローンの借入金額のほうが多い場合は、『借換えた新しい住宅ローンの年末残高×借換え直前の借入残高/借換えた新しい住宅ローンの借入金額』で計算して求めた金額が住宅ローン控除の対象となります。」

リエ「借換え前の残高と新たに借り入れた住宅ローンの借入金額によって異なるんですね。ところで、借換え後の住宅ローン控除の手続きは、給与所得者の場合、年末調整で対応することになりますか。」

黒田「そういうことになりますね。新しい借入先から発行される『住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書』を勤務先に提出して年末調整を受けてください。年末調整までに書類が間に合わない場合は、確定申告が必要になります。」

リエ「よくわかりました。有難うございます。」

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「住宅ローンを返済期間中に利息軽減などの効果を得るため、別の住宅ローンに借り直し等をした場合、引続き住宅ローン控除の適用を受けることができますか。」黒田「原則は、借換えによる新しい住宅ローン等は住宅ローン控除の対象にはなりません。」リエ「どうして対象にならないのですか。」黒田「本来住宅ローン控除の対象は、住宅の新築、取得又は増改築等のために直接必要な借入金又は債務であることとされています。そして、従前の住宅ローンを消滅させるための新たな住宅ローンは、これには該当しないという考え方です。しかし、一定の要件を全て満たすと、借換え後の借入金について引続き住宅ローン控除を受けることができます。」リエ「それは、どんな要件ですか。」黒田「その要件は『新しい住宅ローンが当初の住宅ローンの返済のためのものであることが明らかであること』と『新しい住宅ローンが10年以上の償還期間であることなど住宅ローン控除の対象となる要件に当てはまること』です。この取扱いは、住宅取得の際に償還期間が10年未満のいわゆるつなぎ融資を受け、その後に償還期間が10年以上となる住宅ローン等に借換えた場合も同じ扱いになります。なお、住宅ローン控除を受けることができる年数は、居住の用に供した時から一定期間であり、住宅ローン等の借換えによって延長されることはありませんので注意して下さい。」リエ「なるほど、目的や要件を満たせば引き続き適用が可能になるのですね。ところで、要件の一つである当初の住宅ローンの返済に充てることを証明できるものって何がありますか。」黒田「そうですね。例えば、住宅ローン控除の対象となる住宅の登記簿謄本(登記事項証明書)等があります。一般的に住宅の取得等に当たって借り入れた住宅ローンの担保として、その住宅に抵当権を設定します。その後借換えを行うと、従前の住宅ローンに係る抵当権が抹消され、新たな住宅ローンに係る抵当権が設定されたことが記録されますので、このような記録が従前の住宅ローンの返済のためのものであったことを示すものの一つになります。」リエ「住宅と住宅ローンの流れが、証明できるのですね。あともう一つ教えてほしいのですが、借換え後の控除対象となる住宅ローンの年末残高の金額はどのようになりますか。」黒田「新しい住宅ローンの借入金額と比べて、借換え直前の残高のほうが多い又は等しいときは『借換えた新しい住宅ローンの年末残高』が住宅ローン控除の対象となります。一方で借換え直前の残高よりも新しい住宅ローンの借入金額のほうが多い場合は、『借換えた新しい住宅ローンの年末残高×借換え直前の借入残高/借換えた新しい住宅ローンの借入金額』で計算して求めた金額が住宅ローン控除の対象となります。」リエ「借換え前の残高と新たに借り入れた住宅ローンの借入金額によって異なるんですね。ところで、借換え後の住宅ローン控除の手続きは、給与所得者の場合、年末調整で対応することになりますか。」黒田「そういうことになりますね。新しい借入先から発行される『住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書』を勤務先に提出して年末調整を受けてください。年末調整までに書類が間に合わない場合は、確定申告が必要になります。」リエ「よくわかりました。有難うございます。」
2021.09.13 16:42:40