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電子帳簿等保存制度の見直し

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リエ「令和3年度の税制改正で電子帳簿等保存制度が見直されたと聞きましたが、その内容について教えてください。」

黒田「わかりました。電子帳簿等保存制度は、税法上、紙での保存を原則とする帳簿・書類について、一定の要件の下、電子データにより保存することや電子取引データの保存義務等を定めた制度ですが、昨今のテレワークの推進やクラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上のため、帳簿書類を電子的に保存する際の手続き等が抜本的に見直されています。総勘定元帳や仕訳帳などを国税関係帳簿、貸借対照表・損益計算書などの決算関係書類及び注文書や納品書、請求書などの取引関係書類などを国税関係書類といいますが、このような国税関係帳簿・書類に関する電子データ保存について、税務署による事前承認が廃止されました。また、電子データ保存の要件も大幅に緩和され、システムの概要書・事務処理マニュアルなどのシステム関係書類とパソコン・ディスプレイモニター・プリンターなどの機器とこれらの操作マニュアルを備え付けの上、税務職員による国税関係帳簿・書類の電子データのダウンロードの求めに応じることが要件とされました。」

リエ「要件の緩和に伴って、優良電子帳簿制度が創設されたと聞きましたがどのような制度でしょうか。」

黒田「国税関係帳簿の電子データ保存について、緩和された後の要件を満たす電子帳簿を一般電子帳簿として、さらに従来要件とされていた記録事項の訂正・削除履歴や帳簿と他の帳簿との相互関連性が確認できること、年月日・金額・取引先による検索が可能であること等の要件を満たす電子帳簿については、優良電子帳簿として、届出書を提出することにより、過少申告加算税が5%軽減などのインセンティブが設けられています。」

リエ「従来から電子帳簿保存の申請をされているところは、優良電子帳簿保存の届出をされたほうが良いかもしれませんね。」

黒田「それが望ましいと思います。次に、紙で受け取った請求書や領収書等のスキャナ保存についてですが、こちらも税務署による事前承認が廃止されました。スキャナ保存の要件についても緩和され、領収証等の受領者本人がスキャンする場合、タイムスタンプの付与期間は領収証等の受領日から3営業日以内でしたが、最長約2ヵ月以内として業務処理サイクル方式に応じた期間まで認められるようになり、また、そもそもスキャナ保存について訂正削除ができない又は訂正削除の履歴を確認できる等のシステムで保存されている場合には、タイムスタンプの付与が不要になります。そのほか、スキャナ保存データの検索要件については年月日・金額・取引先の3要素に限定され、スキャナ保存に関して相互けん制が機能する事務処理や定期検査の体制などを求める適正事務処理要件は廃止されました。」

リエ「スキャナ保存はタイムスタンプのシステム的な要件や定期検査などの適正事務処理の要件などをクリアすることがなかなか難しかったので、今回の改正によって、今後導入される企業は増えそうですね。」

黒田「そうなるかと思います。なお、今回の改正での注意点として、WEB上のダウンロード、メールやEDI取引などにより領収書・請求書等を電子データでやり取りする場合、従来は、電子データで受け取った請求書等を紙に出力して保存することも認められていましたが、このような電子取引データに関しては電子データとして保存しなければならなくなりました。」

リエ「電子取引データの保存に関しては、どのような要件を満たす必要がありますでしょうか。」

黒田「電子取引データの保存は、真実性と可視性を確保する必要があります。真実性の要件は、(1)請求書等の送信者側がタイムスタンプを付与すること、(2)請求書等の受信者側がタイムスタンプを付与すること、(3)訂正削除が不可若しくは訂正削除の履歴を確認できること、(4)正当な理由がない訂正削除の防止に関する事務処理規程が定め、備え付け・運用されていることのうち、いずれか1つを満たすことが必要です。可視性の要件では、パソコン・プリンター等の設備やシステムの概要書等の備え付けのほか、検索機能を確保することが求められており、年月日・金額・取引先の3要素により検索可能であることが必要とされます。例えば、請求書等をメールでやり取りする場合、メールソフト上で閲覧できるだけでは検索機能を確保しているとはいえないと考えられています。」

リエ「なるほど。検索機能をどのように確保するかについては対策が必要ですね。ありがとうございました。」

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「令和3年度の税制改正で電子帳簿等保存制度が見直されたと聞きましたが、その内容について教えてください。」黒田「わかりました。電子帳簿等保存制度は、税法上、紙での保存を原則とする帳簿・書類について、一定の要件の下、電子データにより保存することや電子取引データの保存義務等を定めた制度ですが、昨今のテレワークの推進やクラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上のため、帳簿書類を電子的に保存する際の手続き等が抜本的に見直されています。総勘定元帳や仕訳帳などを国税関係帳簿、貸借対照表・損益計算書などの決算関係書類及び注文書や納品書、請求書などの取引関係書類などを国税関係書類といいますが、このような国税関係帳簿・書類に関する電子データ保存について、税務署による事前承認が廃止されました。また、電子データ保存の要件も大幅に緩和され、システムの概要書・事務処理マニュアルなどのシステム関係書類とパソコン・ディスプレイモニター・プリンターなどの機器とこれらの操作マニュアルを備え付けの上、税務職員による国税関係帳簿・書類の電子データのダウンロードの求めに応じることが要件とされました。」リエ「要件の緩和に伴って、優良電子帳簿制度が創設されたと聞きましたがどのような制度でしょうか。」黒田「国税関係帳簿の電子データ保存について、緩和された後の要件を満たす電子帳簿を一般電子帳簿として、さらに従来要件とされていた記録事項の訂正・削除履歴や帳簿と他の帳簿との相互関連性が確認できること、年月日・金額・取引先による検索が可能であること等の要件を満たす電子帳簿については、優良電子帳簿として、届出書を提出することにより、過少申告加算税が5%軽減などのインセンティブが設けられています。」リエ「従来から電子帳簿保存の申請をされているところは、優良電子帳簿保存の届出をされたほうが良いかもしれませんね。」黒田「それが望ましいと思います。次に、紙で受け取った請求書や領収書等のスキャナ保存についてですが、こちらも税務署による事前承認が廃止されました。スキャナ保存の要件についても緩和され、領収証等の受領者本人がスキャンする場合、タイムスタンプの付与期間は領収証等の受領日から3営業日以内でしたが、最長約2ヵ月以内として業務処理サイクル方式に応じた期間まで認められるようになり、また、そもそもスキャナ保存について訂正削除ができない又は訂正削除の履歴を確認できる等のシステムで保存されている場合には、タイムスタンプの付与が不要になります。そのほか、スキャナ保存データの検索要件については年月日・金額・取引先の3要素に限定され、スキャナ保存に関して相互けん制が機能する事務処理や定期検査の体制などを求める適正事務処理要件は廃止されました。」リエ「スキャナ保存はタイムスタンプのシステム的な要件や定期検査などの適正事務処理の要件などをクリアすることがなかなか難しかったので、今回の改正によって、今後導入される企業は増えそうですね。」黒田「そうなるかと思います。なお、今回の改正での注意点として、WEB上のダウンロード、メールやEDI取引などにより領収書・請求書等を電子データでやり取りする場合、従来は、電子データで受け取った請求書等を紙に出力して保存することも認められていましたが、このような電子取引データに関しては電子データとして保存しなければならなくなりました。」リエ「電子取引データの保存に関しては、どのような要件を満たす必要がありますでしょうか。」黒田「電子取引データの保存は、真実性と可視性を確保する必要があります。真実性の要件は、(1)請求書等の送信者側がタイムスタンプを付与すること、(2)請求書等の受信者側がタイムスタンプを付与すること、(3)訂正削除が不可若しくは訂正削除の履歴を確認できること、(4)正当な理由がない訂正削除の防止に関する事務処理規程が定め、備え付け・運用されていることのうち、いずれか1つを満たすことが必要です。可視性の要件では、パソコン・プリンター等の設備やシステムの概要書等の備え付けのほか、検索機能を確保することが求められており、年月日・金額・取引先の3要素により検索可能であることが必要とされます。例えば、請求書等をメールでやり取りする場合、メールソフト上で閲覧できるだけでは検索機能を確保しているとはいえないと考えられています。」リエ「なるほど。検索機能をどのように確保するかについては対策が必要ですね。ありがとうございました。」
2021.06.28 16:25:58