相続があった場合の消費税納税義務の判定
亀井工場長が黒田さんに相談にやってきました。
亀井工場長「黒田さん。ちょっと相談したいことがあるんですが・・・。」
黒田「はい。なんでしょう?」
亀井工場長「私の父は貸店舗の不動産を所有していて所得税と消費税を申告していたんですが、その父が2020年9月に亡くなりました。相続人は私と兄貴の2人でして、2021年5月に遺産分割協議が成立し、その不動産は兄貴が相続することになりました。兄貴は元々、自営業を営んでいたのですが、消費税の免税事業者でした。でも今回の相続を含めると2020年は消費税の納税義務があったんじゃないかって心配しているのですよ。」
黒田「お父様の不動産収入はいくらでしたか?」
亀井工場長「月々100万円でしたので年間1200万円です。」
黒田「お兄様の事業収入はわかりますか?」
亀井工場長「毎年800万円くらいだと言っていました。」
リエ「お兄様の基準期間(2018年)の課税売上高は1000万円以下なので2020年は消費税の免税事業者でいいのではないですか?」
黒田「通常の場合は、リエちゃんの言う通り2年前の課税売上高が1000万円以下なら免税事業者になるのですが、相続があった場合は少し違ってきます。」
リエ「えっ!そうなんですか。」
黒田「被相続人の基準期間の課税売上高が1000万円超の場合、相続があった年の相続があった日の翌日から12月31日までの間、被相続人の事業を承継した相続人の消費税納税義務は免除されません。相続があった年の翌年または翌々年というのは、被相続人と相続人の基準期間の課税売上高を合計して1000万円を超えているかどうかで判定します。」
亀井工場長「父は2020年9月30日になくなったので、兄貴は2020年10月1日から12月31日の期間は消費税の納税義務があったということですか。」
黒田「ただ、2人以上の相続人がいるときには、相続財産の分割が実行されるまでの間は被相続人の事業承継する相続人が確定していないことから、各相続人が共同で事業を承継したものとして取り扱うこととされています。この場合、各相続人の基準期間における課税売上高というのは被相続人の基準期間における課税売上高に法定相続割合を乗じた金額とされています。」
リエ「お兄様の法定相続割合は1/2なので、被相続人の基準期間における課税売上高1200万円×1/2=600万円で、1000万円以下だから納税義務は免除されるということですか?」
黒田「それに、お兄様自身の基準期間の課税売上高も800万円ですので、1000万円以下だから2020年は免税事業者です。」
亀井工場長「そうなんですか! よかった。」
黒田「ただし、相続があった年の翌年または翌々年は、被相続人と相続人の基準期間の課税売上高を合計するので、お父様の1200万円×1/2=600万円とお兄様自身の800万円を合計した1400万円が基準期間における課税売上高になります。1000万円超となるため2021年は消費税の課税事業者となります。」
亀井工場長「そうでしたか。兄貴に伝えておきます。ありがとうございました。」