雇用調整助成金の収益計上時期の取扱い
黒田「リエちゃん、以前『新型コロナウイルス感染症に伴う給付金・助成金にかかる税金』の話をしたのを覚えていますか?」
リエ「はい、覚えています。確か、持続化給付金や雇用調整助成金が課税対象になるという話でしたよね。」
黒田「はい、それはその通りですが、令和3年2月26日に国税庁が『国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ』を更新しました。その中で、法人が国や地方公共団体から交付された助成金等の収益計上時期が示されました。」
リエ「確か、持続化給付金は交付決定があった日の属する事業年度に収益を計上するんですよね。一方、雇用調整助成金は、その給付の原因となった休業等の事実があった日の属する事業年度において収益を計上すると理解しています。」
黒田「助成金等の収益計上時期は、原則として、交付決定日の属する事業年度となります。ただし、その助成金等が経費の補填を目的に法令の規定等に基づき交付されるもので、あらかじめその交付を受けるために必要な手続きをしている場合には、『その経費が発生する日の属する事業年度』に収益計上となります。例えば、雇用調整助成金は事前に管轄の労働局に『休業等実施計画届』を提出し、その計画届に基づき休業の実施や休業手当を支給し、休業の実績に基づいて助成金の受給申請を行います。つまり助成金による補填を前提に休業手当が支給されるため、収益と費用の対応を図る観点で、休業を実施した事業年度に助成金の受給額が確定していなくても、受給額を見積もって休業を実施した事業年度に収益を計上することとされています。ただ、雇用調整助成金は新型コロナウイルス感染症に伴う特例措置で、事前の『休業等実施計画届』の提出が不要となりました。通常の手続きとは異なり、休業の実施や休業手当を支給した後に、その実績に基づき雇用調整助成金の支給申請を行うため、休業手当の支給は助成金の補填を前提としていないと考えられることから、この特例措置による雇用調整助成金の収益計上時期は、交付決定日の属する事業年度となります。」
リエ「雇用調整助成金は、通常の受給と特例措置の受給で収益の計上時期が異なるのですね。」
黒田「そうですね。ただ、事前の『休業等実施計画届』の提出が不要であっても、交付申請を行っていて、交付を受けることの確実性が認められる場合には経費が発生した日の属する事業年度に収益計上しても、税務上認められます。」
リエ「わかりました。雇用調整助成金を受給したときはどちらで処理をするか確認しますね。」