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RPAを用いた自動取込・自動仕訳の超実践法!

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こんにちは!会計事務所RPA研究会株式会社です。
 「RPAツールを用いた経理・バックオフィス業務の自動化・効率化」をテーマに連載しているこちらのコラムシリーズ。これまでに「RPAの基本中の基本」・「RPAによるソフト操作の3大パターン」という2つのテーマをお届けしてまいりました。
 そして、第3回目となる今回は、「RPAを用いた自動取込・自動仕訳の超実践法!」というテーマで、クライアントから提供されたデータや金融機関等のデータに関し、RPAを用いた自動取込・自動仕訳について解説してまいります。

▼ なぜ今、記帳業務の効率化が求められるのか

 RPAを用いた自動取込・自動仕訳(記帳の自動化)の具体的な解説に入る前に、なぜ今、記帳業務の効率化が必要なのか、まずその点からお伝えしたいと思います。
 記帳業務は、会計事務所の日常的な業務です。アウトソーシングの進展に伴い、記帳業務を外注する企業も増えていますので、市場としても拡大しています。おそらく、顧問先の依頼に応じるために、主力業務ではないものの、一定程度の記帳代行業務を引き受けている会計事務所も多いのではないでしょうか。
 一方で、記帳代行サービスを提供する会計事務所や専門業者も増え、競争は激化しており、記帳業務にかけられるコストは減少しています。つまり、いかに業務を効率化・自動化できるかが記帳代行業務を手掛けるに当たり重要となっているのです。

▼ スピードにも精度にも限界?! 記帳業務の現状

ではここで、会計事務所が記帳代行業務に当たる際の一般的な流れを確認してみましょう。

1. 証憑の受領(領収書、預金通帳など)

2. 証憑の整理

  紙証憑を日付や種類ごとに並べ替えて整理する作業

3. 記帳(会計ソフトへの入力)

  紙証憑を確認しながら、会計ソフトへ手入力する作業

4. 記帳担当者によるセルフチェック

  誤りや漏れがないか、目視などで入力内容を見直す作業

5. 顧問先担当者による確認・修正

  顧問先より確認や修正が入った場合、紙の束から該当の証憑を探し出す必要有

6. 決算申告

 いかがでしょう。細かな違いはあれども、基本的に上記の流れをたどるのではないでしょうか。そして、おそらく多くの方がお感じの通り、全体として非効率な作業も多く、スピードや精度を高めるにも限界があり、何度も手戻りがあるなど、担当者の負担になる業務でもありました。

▼ 記帳業務はこうして効率化する!

 では、どうすれば記帳業務を効率化できるのでしょうか。その手法として、大きく2つの方法が考えられます。

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 1. AI-OCRの活用
 2. RPAの活用
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 まず1は、AI-OCRなどを活用してレシートや領収書などの原始証憑をデータ化することにより効率化を図るやり方です。

 AI-OCRとは、OCRにAI技術を加えたものですが、そもそもOCRとは、画像データのテキスト部分を認識し、文字データに変換する光学文字認識機能のことを言います。例えば、紙文書をスキャナで読み込み、書かれている文字を認識してデジタル化するような技術です。そこにAI技術を組み合わせることで、機械学習による文字認識率の向上など、より高レベルな機能が加わったものがAI-OCRなのです。
 よって、精度の高いAI-OCRを記帳業務に活用できれば、記帳担当者が紙証憑から目視でデータを手入力していくより、ミスや時間を削減して効率化することが可能となります。

 続いて2の「RPAの活用」は、RPAに指示を出し、記帳に関する各種データを会計ソフトに自動で入力させるやり方です。RPAで取り扱いやすいデータは、これまでのコラムで解説してきた通り定型化されたデータですので、クライアントが作成した各種帳票や、金融機関等のデータベースから出力されたデータ、クラウドサービスから出力されたデータなどが主な対象となります。さらに、1のAI-OCRを活用できれば、領収書のような紙証憑もデータ化されますので、もちろんそれもRPAによる処理に活用でき、一層の効率化を図ることが可能となるのです。
 RPAは、人手による作業の何倍ものスピードで、ミスなく記帳業務を進めていくことができます。そして、RPAによる作業成果を人が確認することで、Wチェックまで済んでしまうのです。これらを踏まえますと、記帳業務におけるRPA活用により、様々な場面で効率化が図れることがお分りいただけるかと存じます。

▼ RPAを記帳業務に活用する具体的方法

 それでは、実際どのようにRPAを記帳業務に活用するか、その流れをお伝えしてまいります。各種会計ソフトにはExcel®(CSV)データを仕訳として取り込む機能が設定されているケースが多く、その機能を使いこなすことが記帳業務におけるRPA活用のポイントです。

 記帳業務におけるRPAの活用を、ひとまず大枠でお伝えすると以下のフローになります。

1. 原データをExcelにて作成の加工用シートに貼り付ける

2. 加工用シートに組み込まれた各種関数等により、

  使用している会計ソフト固有の取込用フォーマットに転記

3. 作成された取込用フォーマットを会計ソフトに取り込ませる

 上記フローの中でRPAによって自動化できるのは1と3のフローです。(※作成されたデータの保存作業などは省略)

 ただ、これだけではまだイメージしづらいかと思いますので、より具体的な事例をもとに、RPAを活用した自動仕訳について解説してまいりましょう。

▼ 金融機関取引データ入出金明細の自動仕訳

 金融機関取引のデータの自動取込を行うには入出金明細データの活用が有効です。
 入出金明細データはクライアントにCSV等で取得・提出してもらい、そのデータを会計ソフトに取込可能な形式に置換して取り込むという手法になります。この手法であればAPI連携の不備や手間による問題などもありません(注1)。さらに、クライアントから入出金明細を提供してもらうこと自体は、会計事務所にとっては頻繁にあることですので、現在の業務からスムーズに移行が可能です。
 また、これまでお伝えしてきたようにRPAの利用にはデータの形式が安定していることが重要ですが、金融機関ごとにデータ形式の違いはあるものの、それぞれの金融機関におけるデータ形式は比較的長期にわたり安定しているので、ロボットを安定して稼働させることが可能となります。

(注1

会計ソフトには金融機関とのAPI連携機能が用意されているパターンがありますが、このAPI利用に必要なアクセストークンには有効期限があり、有効期限が切れる度に利用者(クライアント)に取得してもらう必要があります。この際、会計事務所が利用する場合は、都度顧問先にID等を確認せねばならず、そこが手間でもあり、また、クライアントからアクセス権限を付与してもらう必要もあるため、そもそものハードルが高い場合があります。

▼ 入出金明細の加工法

 上記のように銀行の入出金明細データは自動仕訳との相性が良いのですが、そのままでは使用できない場合がほとんどです。それは、記帳する側の会計ソフトにおいて、取り込めるデータのフォーマットが決まっており、そのフォーマットに沿うデータでないと取り込めないためです。
 財務顧問R4をサンプルにしますと以下のようなフォーマットに変換する必要があります。

【財務顧問R4 取込フォーマット】

 財務顧問R4の取込フォーマットの場合は、1列目に日付、2列目にキーワードが必須項目として設定されており、3列目または4列目に入金額また出金額のいずれか一方の記載が必須、5列目の摘要欄は省略可能となっています。また、1列目の日付については連続したYYYYMMDD形式である必要があります。
 上記のフォーマットに適切にデータを落とし込めば、2列目のキーワード欄に記入された言葉と入金・出金のどちらに金額があるかを元に、会計ソフト(財務顧問R4)内の自動仕訳辞書(注2)と照合して仕訳が自動的に記帳される仕組みです。今回の例ですと、「セイコーエプソン」と入っていたら売掛金(回収)、「トウキヨウデンリヨク」と入っていたら水道光熱費の引落に自動で仕訳・記帳されるのです。

(注2)

初めて取り込んだキーワードの場合、自動仕訳辞書が存在しないため、借方・貸方ともに「不明勘定」となりますが、これを正しい勘定科目に修正するだけで、自動仕訳辞書が自動的に作成されます。

 一方で、金融機関の入出金明細は以下のようになっています。

【三菱UFJ銀行明細サンプル】

【みずほ銀行明細サンプル】

 上記サンプルでも分かるように、必要項目の並び方も日付の記載方法も、財務顧問R4の取込用フォーマットと異なっています。
 このため、入出金明細データを会計ソフトに取り込むためには、金融機関ごとに異なるフォーマットから必要項目を抽出し、会計ソフトごとに決まった記載方法へと加工する必要があるのです。この工程を効率化する手法というのが、先述しました「1. 原データをExcelにて作成の加工用シートに貼り付ける」となります。
 例えば、上記の三菱UFJ銀行の入出金明細を例にすると以下の通りです。

① 2列目の日付データを抽出する
② 抽出した日付データをYYYYMMDD方式に変更し、「日付」欄にプロットする
③ 3列目及び4列目にあるデータを結合して「キーワード」欄にプロットする
④ 5列目に金額が入っている場合は取込フォーマットの「出金額」に、

  6列目に入っている場合は「入金額」にプロットする(いずれか一方)
⑤ 3列目と4列目のデータを組み合わせてデータベースと照合して

  「摘要」欄にプロットする

 一見複雑なように見えますが上記は全てExcelの関数(LOOKUP関数やIF関数等)だけで実行可能です。弊社が実務で使っているExcelファイルを例にとると、以下のようなシートの組み合わせになります。

【Excelシートサンプル】

 まず、左端の「原データ」のシートに金融機関の入出金明細を貼り付けると、「変換シート」で日付などを取込用形式に適合するように整形され、「取込CSV」にプロットされるという流れになります。なお、右端の「DB(データベース)」は金融機関の入出金明細の摘要欄に記載された単語(例:トウキヨウデンリヨク)を実際に使用する「東京電力」に変換するためのリストが格納されたシートです。

▼ VBAではダメ?なぜRPAが効率的なの?

 もしかすると、プログラミング等に詳しい方であれば、上記のような作業は一気にVBAで解決できると思われるかもしれません。実際にVBAの方が速いのですが、敢えて上記のようなステップを踏んでいるのは、VBAなどに習熟していないスタッフでもDBに格納するリストをメンテナンスさえすれば、安定的に自動化を推進させることができるからです。

 RPAとの組み合わせを考えた場合、「予め用意されたデータをコピーして原データシートに貼り付け、取込CSVシートを別途CSV形式で保存して、会計ソフトの取込機能によって取り込む」という動きは、一度ロボットを作っておけば変わらず、その後はExcelファイルのDBシートに格納されたリストのみをメンテナンスすれば良くなります。
 VBAのような属人的なスキルに頼るのではなく、一人でも多くのスタッフが共通して効率化・自動化を進め、先々も維持していくことを考えると、DBシートをメンテナンスするだけ、という手軽さと安定感は、非常に魅力的ではないでしょうか。

 また、ロボットの量産という側面でも上記の手法は効率的です。なぜなら、「予め用意されたデータをコピーして原データシートに貼り付け、取込CSVシートを別途CSV形式で保存して、会計ソフトの取込機能によって取り込む」というのは、どの金融機関でも、さらにはその他のクライアント提供データでも変わらないため、ロボット自体には変更を加えずとも多くのロボットで共通して使えるためです。例えば、売上日計表や仕入管理表、経費精算書のように、フォーマットが固定化された様々なクライアント提供データが自動仕訳の対象となります。

 そして、各種データごとに、日付や必要なデータなどを取込用の指定形式に加工するExcelフォーマットさえ最初に設定しておけば、その後は上述のように新たな取引項目が出てくる度にDBシートに格納されたリストを更新・追加するだけでロボットを稼働させることができるのです。弊社やEzRobotをご契約の会計事務所では、上記のような自動化の考えに基づきロボットを量産して効率化を進めています。

 では最後に、財務顧問R4による銀行取引のロボットのサンプル動画をご覧ください。
【エプソンR4 銀行取引取り込み】
https://youtu.be/Bd4P5Blhj3Y
(サンプルですので、実際に使用しているものよりも簡易化してあります)


 以上ここまで、クライアントから提供されたデータや金融機関等のデータに関し、RPAを用いた自動取込・自動仕訳について解説してまいりました。RPA活用の具体的なイメージにつながりましたでしょうか。次回は、ロボットの大量生産を目指す際のポイントや安定的にロボットを稼働させる際のポイントを解説していきます。

執筆者情報

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●氏名・所属
谷口 健 氏 / 会計事務所RPA研究会株式会社 事業推進部長

●経歴
神戸大学工学部卒

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社後、公認会計士試験挑戦のために退職。
公認会計士試験合格後、BIG4の一つであるあずさ監査法人に入所。外資系金融機関等の監査に従事
あずさ監査法人退所後、世界最大の評価会社であるアメリカン・アプレーザル(現ダフアンドフェルプス)にて、株式・金融商品等の評価業務及びM&A業務に従事。その後、会計系コンサルティング会社にて、M&A、事業再生、業務改善コンサルティング等に従事。
現在は会計事務所RPA研究会株式会社に事業推進部長として全国のRPA導入を推進中。

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2021.03.26 17:53:12