HOME コラム一覧 寄附金の所得控除、税額控除について教えて!

寄附金の所得控除、税額控除について教えて!

post_visual

黒田さんとリエちゃんが確定申告に関連して、寄附金控除等の話をしています。

リエ「寄附を行った際に、所得控除、税額控除とよく耳にしますが、どのような違いがあるか教えてもらえますか。」

黒田「良いですよ。まず、前提のお話として、寄附金控除(所得控除)の対象になるのは、特定寄附金に該当するものになります。特定寄附金とは、国・地方公共団体に対する寄附、指定寄附金、特定公益増進法人に対する寄附金、一定の要件を満たす特定公益信託に対する金銭、認定NPO法人等に対する寄附金(特定非営利活動に係る事業に関するもの)、政治活動に関する寄附金、特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額等を指します。」

リエ「少し難しい文言が並びましたけど、寄附をしたからといって全てが寄附金控除の対象になるわけではなく、特定寄附金に該当したときに控除することができるんですね。」

黒田「そうですね。そして、この特定寄附金の中で、公益社団法人等、認定NPO法人等又は政党等に対する一定の寄附金については、所得控除に代えて税額控除を選択することもできます。」

リエ「なるほど。つまり、特定寄付金の中には、所得控除しか適用できないものと、所得控除か税額控除のどちらかを選択して適用できるものがあるわけですね。」

黒田「はい。それでは、所得控除と税額控除についてそれぞれご説明しますね。所得控除は、所得から一定の金額(生命保険料控除、扶養控除等)を差し引く制度で、課税所得を圧縮することで税負担を減らすことができます。一方、税額控除は文字通り、課税所得に税率を掛けて算出した税額から直接差し引くもので、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)や配当控除などがあり、こちらも税額を抑える効果があります。」

リエ「住宅ローン控除はよく聞きますよね。」

黒田「所得控除、税額控除ともに納税者の税負担を減らすという点は同じですが、節税の効果が異なってきます。」

リエ「所得控除と税額控除はどちらが有利になるんですか。」

黒田「所得税率の高い方等、所得控除が有利になるケースもありますが、一般的には税額控除のほうが有利になることが多いです。税額控除は、税額から直接差し引けますからね。具体的な控除額の計算はそれぞれ次のようになっています。」

1.所得控除(寄附金控除)
   特定寄附金の額の合計額-2千円
 ※特定寄附金の額の合計額は所得金額の40%相当額が限度です。

2.税額控除(寄附金特別控除)
(1)政党等寄附金特別控除額
  (政党等に対する寄附金の額の合計額-2千円)×30%
(2)認定NPO法人等寄附金特別控除額
  (認定NPO法人等に対する寄附金の額の合計額-2千円)×40%
(3)公益社団法人等寄附金特別控除額
  (公益社団法人等に対する寄附金(一定の要件を満たすもの)の額の合計額-2千円)×40%
 ※1(1)~(3)全て、100円未満の端数切捨て
 ※2(1)~(3)の寄附金の額の合計額は原則、所得金額の40%相当額が限度です。
 ※3(1)の特別控除額はその年分の所得税額の25%相当額が限度です。また、(2)及び(3)の特別控除額の合計額はその年分の所得税額の25%相当額が限度です。
 ※4 上記1及び2の算式中の2千円は、所得控除と税額控除とを合わせた金額です。

黒田「所得控除、税額控除の適用にあたっては、書類等でよく確認をする必要がありますね。」

リエ「そうですよね。ちなみに、ふるさと納税はどのような扱いになっていますか。周りの人がよくやっているので。」

黒田「ふるさと納税は地方公共団体への寄附となり、所得税では所得控除になります。しかし、住民税に関しては、特例で2千円を引いた金額を住民税から直接控除することができます。」

リエ「住民税では、税額控除のような効果があるんですね。」

黒田「確定申告の際の添付書類としては、寄附金領収証、税額控除に該当する旨の証明書等を用意する必要があります。」

リエ「勉強になりました。ありがとうございます。」

監修

profile_photo

税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

この記事のカテゴリ

この記事のシリーズ

OLリエちゃんの経理奮闘記

記事の一覧を見る

関連リンク

火災保険の契約者と建物の所有者(被保険者)が違う場合の課税

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


コラム
/column/2021/img/thumbnail/img_07_s.jpg
黒田さんとリエちゃんが確定申告に関連して、寄附金控除等の話をしています。リエ「寄附を行った際に、所得控除、税額控除とよく耳にしますが、どのような違いがあるか教えてもらえますか。」黒田「良いですよ。まず、前提のお話として、寄附金控除(所得控除)の対象になるのは、特定寄附金に該当するものになります。特定寄附金とは、国・地方公共団体に対する寄附、指定寄附金、特定公益増進法人に対する寄附金、一定の要件を満たす特定公益信託に対する金銭、認定NPO法人等に対する寄附金(特定非営利活動に係る事業に関するもの)、政治活動に関する寄附金、特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額等を指します。」リエ「少し難しい文言が並びましたけど、寄附をしたからといって全てが寄附金控除の対象になるわけではなく、特定寄附金に該当したときに控除することができるんですね。」黒田「そうですね。そして、この特定寄附金の中で、公益社団法人等、認定NPO法人等又は政党等に対する一定の寄附金については、所得控除に代えて税額控除を選択することもできます。」リエ「なるほど。つまり、特定寄付金の中には、所得控除しか適用できないものと、所得控除か税額控除のどちらかを選択して適用できるものがあるわけですね。」黒田「はい。それでは、所得控除と税額控除についてそれぞれご説明しますね。所得控除は、所得から一定の金額(生命保険料控除、扶養控除等)を差し引く制度で、課税所得を圧縮することで税負担を減らすことができます。一方、税額控除は文字通り、課税所得に税率を掛けて算出した税額から直接差し引くもので、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)や配当控除などがあり、こちらも税額を抑える効果があります。」リエ「住宅ローン控除はよく聞きますよね。」黒田「所得控除、税額控除ともに納税者の税負担を減らすという点は同じですが、節税の効果が異なってきます。」リエ「所得控除と税額控除はどちらが有利になるんですか。」黒田「所得税率の高い方等、所得控除が有利になるケースもありますが、一般的には税額控除のほうが有利になることが多いです。税額控除は、税額から直接差し引けますからね。具体的な控除額の計算はそれぞれ次のようになっています。」1.所得控除(寄附金控除)   特定寄附金の額の合計額-2千円 ※特定寄附金の額の合計額は所得金額の40%相当額が限度です。2.税額控除(寄附金特別控除)(1)政党等寄附金特別控除額   (政党等に対する寄附金の額の合計額-2千円)×30%(2)認定NPO法人等寄附金特別控除額   (認定NPO法人等に対する寄附金の額の合計額-2千円)×40%(3)公益社団法人等寄附金特別控除額  (公益社団法人等に対する寄附金(一定の要件を満たすもの)の額の合計額-2千円)×40% ※1(1)~(3)全て、100円未満の端数切捨て ※2(1)~(3)の寄附金の額の合計額は原則、所得金額の40%相当額が限度です。 ※3(1)の特別控除額はその年分の所得税額の25%相当額が限度です。また、(2)及び(3)の特別控除額の合計額はその年分の所得税額の25%相当額が限度です。 ※4 上記1及び2の算式中の2千円は、所得控除と税額控除とを合わせた金額です。黒田「所得控除、税額控除の適用にあたっては、書類等でよく確認をする必要がありますね。」リエ「そうですよね。ちなみに、ふるさと納税はどのような扱いになっていますか。周りの人がよくやっているので。」黒田「ふるさと納税は地方公共団体への寄附となり、所得税では所得控除になります。しかし、住民税に関しては、特例で2千円を引いた金額を住民税から直接控除することができます。」リエ「住民税では、税額控除のような効果があるんですね。」黒田「確定申告の際の添付書類としては、寄附金領収証、税額控除に該当する旨の証明書等を用意する必要があります。」リエ「勉強になりました。ありがとうございます。」
2021.03.01 15:12:44