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シリーズ 減価償却のチェックポイントQandA その2 耐用年数短縮の承認申請

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<チェックポイント>

① 自社の減価償却資産に適用される法定耐用年数が実情に合わない場合にこれを短縮することが認められるか
② 認められるとした場合の手続はどのようになっているか
③ 短縮が認められるとしてどのような場合に認められることになるか。具体的用件はどのようになっているか。例えば減価償却資産の使途が「レンタル用」で取扱いが雑になったりして損耗が著しいなどというような場合は認められることになるかどうか

1 耐用年数の短縮制度のあらまし

 税務上の法定耐用年数は、標準的な資産を対象とし、通常の維持補修を加えながら通常の使用条件で使用した場合の使用可能期間を基礎として定められています。しかしながら、資産によっては、一定の特別な事由があり法定耐用年数により減価償却限度額の計算を行ったのでは実情にあわない結果になる場合もあります。

 耐用年数の短縮制度とは、そのような一定の特別な事由がある場合に、資産の使用可能期間が法定耐用年数に比して著しく短くなるようなときには、納税地の所轄国税局長の承認を受けてその資産の未経過使用期間を耐用年数として償却することができるという制度です。この規定の適用を受けるためには、次の(1)から(5)までの要件を満たす必要があります。(令57)

(1)法人の所有している減価償却資産であること。
(2)使用している減価償却資産について「特別の事由」が生じていること。
(3)見積もられる使用可能期間が、法定耐用年数よりも10%以上短いこと。
(4)納税地の税務署長を経由して「耐用年数の短縮の承認申請書」を所轄の国税局長に提出すること。
(5)国税局長の承認を受けていること。

 このような要件を満たすことにより、国税局長の承認を受けた事業年度から、承認を受けた短い耐用年数によって減価償却費を計算することができることになります。

2 短縮申請ができる「特別の事由」

 耐用年数の短縮申請ができる「特別な事由」については、法人税法施行令57条、同規則16条に掲げられた次の8事由とされています。

① その材質または製作方法がこれと種類及び構造を同じくする他の減価償却資産の通常の材質または製作方法と異なること。

② その資産の存する地盤が隆起し、または沈下したこと。
  例えば、地下水を大量採取したことにより地盤沈下したため、建物、構築物等に特別な減損が生じたこと。

③ その資産が陳腐化したこと。
  例えば、従来の製造設備が旧式化し、その設備ではコスト高、生産性の低下等により経済的に採算が悪化した場合等。

④ その資産が使用される場所の状況に起因して著しく腐食したこと。
  例えば、汚濁された水域を常時運行する専用の船舶について、船体の腐食が著しい場合など。

⑤ その資産が通常の修理または手入れをしなかったことに起因して著しく損耗すること。
例えば、レンタル用建設軽機等で、多数の建設業者の需要に応じることから、著しく損耗する場合など。

⑥ 減価償却資産の構成が、その耐用年数を用いて償却限度額を計算すべきこととなる同一種類の他の減価償却資産の通常の構成と著しく異なること。
  例えば、新しい生産技術の導入等によりその設備の構成内容が従来の同一種類の設備の構成割合と異なることとなったためにその使用可能期間が法定耐用年数よりも著しく短くなる場合など。

⑦ その資産が機械および装置である場合に、その資産の属する設備が旧耐用年数省令別表第2に特掲されていないこと。

⑧ その他上記①から⑦までに準ずる事由。
  たとえば、機械及び装置以外の減価償却資産についても種類、構造若しくは用途又は細目が特掲されているもの以外のものである場合には、⑦と同様に耐用年数の短縮をして実態に即した耐用年数を適用することができるものとされています。

3 具体的ケースについての検討

(1)使途が「レンタル用」であることは短縮が認められる特別な事由に該当するかどうか

 一般的に言って自社保有機械については十分なメンテナンスを行いなるべく長期にわたって使用できる様に整備等も十分に行って使用するのに対し、レンタル機器の場合は、多数のユーザーの需要に応じることから、その稼働率が高くなることが統計資料により確認されていること及びレンタル用機械はその貸付先において借り物であるという意識で比較的粗雑に使用されることから、その取扱いが杜撰になりがちであると言われています。

 したがって、質問のケースについても、建設機械のうち軽機に属するもので、比較的短期の日又は月単位の賃貸で、オペレーターはつけず、機械の保守管理は賃貸先で行うようなものであれば、耐用年数の短縮が認められるものと思われます。

(2)申請に当たっての留意事項

 耐用年数の短縮申請を行うに当たっては、対象となる減価償却資産について、申請の根拠となる事由の有無及びそれらの事実を客観的に証明することが必要になりますので、過去の使用実績、技術者等の見解などを用意する必要があります。

 また、短縮後の耐用年数を適用できるのは承認を受けた日を含む事業年度以後の各事業年度ですので、申請した事業年度内に承認を得るためには審査に相当の日数がかかることを考慮して、少なくとも事業年度終了の日のおおむね3ヵ月前までに提出することが望ましいと思われます。

執筆者情報

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税理士 小畑 孝雄

昭和41年東京国税局入局、国税庁法人税課、国税不服審判所勤務等を経て平成16年東京国税局法人課税課長、18年同調査第2部長を歴任し19年退官、税理士登録(日本橋支部所属)

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2021.02.25 13:42:20