火災保険の契約者と建物の所有者(被保険者)が違う場合の課税
リエ「火災保険の契約者と建物の所有者(被保険者)が違う場合、火災が発生した際、保険金は誰に支払われるのですか。」
黒田「通常は、建物や家財などの所有者(被保険者)に保険金を受け取る権利がありますので、保険金は契約者ではなく所有者に支払われます。ただし、質権設定された契約など被保険者へ支払いできない場合もあります。」
リエ「それって、住宅ローンの借入をする際に金融機関等に対して火災保険の保険金の権利を担保として提供しているからですよね。」
黒田「そうです。そのため被保険者ではなく質権者(金融機関等)に保険金の請求権が移るので、保険金は質権者に支払われることになります。」
リエ「火災保険の契約者と被保険者の違いについて教えてほしいのですが。」
黒田「契約者は、保険会社に契約の申込みをして保険料を支払う人で、契約の当事者です。一方、被保険者は、保険の補償を受ける人、保険の対象となる建物の所有者です。契約者と同一の人であることもあり、別人であることもあります。
別人であるケースとして、親所有の建物に子供が保険料を負担して火災保険に加入している場合などがあります。」
リエ「この場合、保険料を支払う人と保険金を受け取る人が異なるので、火災保険金を受け取った人に所得税や贈与税の心配はないのですか。」
黒田「火災保険で受け取った保険金は基本的に非課税です。火災保険は火災や自然災害などで受けた損害を穴埋めするのが役割なので、保険金の受取りによって、利益は生じないことから非課税となりますので所得税はかかりません。
また、損害保険契約について、保険料を負担した人と保険金の受取人が異なる場合に、贈与により取得したものとみなされる保険金は、偶然な事故に基因する保険事故で死亡を伴うものに限ると限定されていますので、死亡を伴う保険金に該当しないのであれば、贈与により取得したものとみなされませんので贈与税も課税されません。」
リエ「心配しなくてもいいわけですね。ところで、火災保険は掛け捨てが一般的ですが、積立型の火災保険もありますよね。満期になれば満期返戻金が支払われますが、この満期返戻金は課税の対象になるのですか。」
黒田「満期返戻金の受取人が契約者と同一である場合は、原則として一時所得として扱われ、他の一時所得と合算して課税を受けます。また、受取人と契約者が異なる場合は、受取人に贈与税が課税されます。」
リエ「契約者と受取人が同一であるかどうかで課せられる税金が違うのですね。」
黒田「そういうことになります。また、注意事項として、契約者(保険料の負担者)が保険期間中に死亡した場合、掛け捨てタイプで保険料を一時払いで払う火災保険や積立式の火災保険を相続した時は、その契約に関する権利が相続税の課税対象となり、権利の評価額は相続開始時の解約返戻金相当額となります。」
リエ「そうか、保険期間中に相続が発生した場合には、未経過分の保険料等を相続財産にカウントするのですね。」
黒田「うっかり忘れがちな相続財産ですが。」
リエ「生命保険と損害保険とでは、受け取る保険金の性質等に違いあるような気がしました。お話を聞いていただきありがとうございます。」