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RPAによるソフト操作の3大パターン

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こんにちは!会計事務所RPA研究会株式会社です。
 「RPAツールを用いた経理・バックオフィス業務の自動化・効率化」をテーマに連載しているこちらのコラムシリーズですが、前回は、「RPAの基本中の基本」というタイトルで、RPAとExcelマクロの違いや、RPAでできること、RPA活用3大パターンなどをお届けいたしました。
 そして、第2回目となる今回は、「RPAによるソフト操作の3大パターン」というテーマで、「実際に何をRPAに任せれば良いか」「RPAにどうやって操作をさせるのか」という点をお届けしてまいります。

▼ RPAに任せる仕事は何から?

 さて、日々の経理・バックオフィス業務を進める上で、様々なクラウドサービスやSAPや勘定奉行などの基幹システム(ERP)を使用されていますよね。これらのサービスやシステムから必要なデータを取り、別ソフト(会計ソフト等)で使用するという作業は、業務の中でも非常にメジャーな作業ではないかと思います。
 
 だとすれば、これからRPAを活用しようと考えられている皆様には、そうした作業の一つをRPAに任せることから着手するのがオススメです!

▼ システム等から出力したデータは、RPAとの相性抜群!

 前回の復習も兼ねて、その理由を解説いたしましょう。
 今あなたは、「顧客情報をまとめたシステムから企業名と住所を出力し、年賀状ソフトに登録する作業」を行うシーンだとします。

 ご存知の通り、各種システムやクラウドサービスから取り出すデータは、ExcelやCSVの形式で出力できるケースがほとんどです。しかも、その出力されるデータですが、同じ種類のデータを出力した場合に、「タイミングによって住所の列がB列からC列に変わっている」だとか、「前回出力した時は数字が半角だったのに今回は全角」ということが起こるでしょうか?基本的に、ありませんよね。システムやサービスの大幅な更新などが起こらない限り、毎回同じ形式で出力されてくるはずです。
 それであれば、最終的にロボットには、出力したデータをもとに、「A列にある企業名とB列にある住所を読み込み、年賀状ソフトにそのデータを入力する」といった指示を出せば済みます。もしその翌年に、追加の新規顧客に対して再度この作業をするとしても、ほぼ同じロボットが使えるはずです。

 一方、もしシステムからの出力データではなく、人が手作業で打ち込んだExcelファイルをベースにRPAロボットを動かすとしたらどうでしょうか。例えば今ここに、複数名の手で更新されてきたExcelの顧客情報録があるとします。開いて見ると、スタッフのAさんは都道府県を一つの列として独立させて作成、Bさんは都道府県も含む全ての住所を一つの列にまとめて作成、Cさんは都道府県を省略して入力・・・等。様々なパターンが考えられます。もしそのようなExcelファイルを元に、ロボットに作業をさせるとなると、ロボットへの指示も複数パターン必要です。例えば、Aさんのファイルに対しては、B列とC列から住所を読むようなロボットを作り、Bさんのファイルに対しては、B列を読むように作り、Cさんのファイルに対してはB列を読むが、その前に都道府県を補足する必要がある・・・等。手間は数倍ですね。しかも、複雑になればなるほど、ロボットにエラーも起こりやすいですし、「複数パターンのロボットを作る手間」と、「手作業で企業名&住所をコピペする作業」と、どちらが速いかわかりません。「形式が揃っていないデータ」の場合、ロボットには向かない理由がここにあります。

 つまり、裏を返せば、システムやクラウドサービスから出力したデータのように、いつ出力しても形式が揃っているデータは、ロボット作りに活用しやすい上、そのロボットは長く使いやすく、RPAの導入時には非常にオススメ、というわけです。

 いかがでしょうか。この年賀状ソフトの事例は、あくまでも解説するための簡略化した例ではありますが、これと同じような考え方で、

・セールスフォースから売上金額を取得して、会計ソフトに入力する
・キングオブタイムから従業員の勤怠データを取得して、給与計算ソフトに入力する

 といった作業をRPAロボットに任せることができ、RPA導入時にはそのような分野から着手すれば、RPAが戦力になりやすいはずです。

▼ 「RPAに指示を出す」ってどうやって?

 では、ここからは、「実際どのようにRPAに操作をさせていくのか」という点に移りたいと思います。RPAに行わせる操作は、弊社EzRobotを例にした場合、大きく3パターンです。

1. ショートカットキーによる操作
2. 画像認識による操作
3. XPathによる操作

それぞれ簡単に解説していきましょう。

1.ショートカットキーによる操作

 ショートカットキーというと、「Ctl+C(コピー)」「Ctl+V(貼り付け)」などが有名ですよね。実は、そのような有名なキー以外にも、マウスで行う操作のほとんどは、ショートカットキーにより代替可能であることをご存知でしょうか?「Ctl+P(印刷)」「Ctl+F(検索)」など、例を挙げればキリがないのですが、RPAに対して、こうしたショートカットキーによる指示を出し、操作をさせるやり方です。

 例えば、あるExcelファイルに対して、「B列をコピーしてC列に貼り付け、上書き保存をして、Excelを閉じる」という操作をしたいとするならば、RPAへの指示としては、
・B列を選択
・Ctl+C(コピー)
・C列を選択
・Ctl+V(貼り付け)
・Ctl+S(上書き保存)
・Alt+F4(アプリケーションを閉じる)
といった指示になります。

 Excelはもちろん、Wordや、インターネットブラウザ、各種ソフトにも、予め決まったショートカットキーがあることが多いので、それらを駆使すれば、多様な操作をRPAに行わせることが可能なのです。

2.画像認識による操作

 次に、RPAに操作をさせる方法の2番目として「画像認識」による操作をご紹介します。これは、人が見ている画像をRPAに認識させ、クリックさせる等の指示を出していく操作です。
 例えば、「パソコンのデスクトップ上にある会計ソフトのアイコンをクリックし、開いたウィンドウのメニューバーからAというカテゴリをクリックする」という作業を、画像認識によってロボットにさせるとしましょう。その場合、

・デスクトップにあるアイコンマークを、背景含め選択し、RPAに記憶させる
・「この画像と同一の部分をダブルクリックする」という指示を組む
・開いたウィンドウ内の「Aカテゴリ」が表示されているエリアを選択して記憶させる
・先ほどと同様、その画像と一致する部分をクリックする指示を組む

 このやり方は、最も直感的にわかりやすい指示の出し方で、IT知識に自信のない方でもロボットを作成しやすい点が大きなメリットと言えます。一方で、画像そのものを記憶させるため、デスクトップの背景が変更されたり、各種ソフトのデザインが変更されたりと、記憶させた画像と最新の環境が変わってしまうと、ロボットが機能しなくなり、変更箇所に対応する画像を再設定する必要がある、といった手間も発生します。

 ちなみに、先ほど1番にて、コピーや貼り付けのショートカットキーに触れましたが、この画像認識でも、「コピー」や「貼り付け」という文字部分を画像として記憶させることで、指示を出すことは可能です。しかし、もしもExcelのバージョンがアップデートされ、「コピー」や「貼り付け」の文字体がわずかでも変更になってしまったら、そのロボットは動きません。一方で、ショートカットキーを使うやり方で同じ指示を出していれば、たとえバージョンがアップデートされようとも「Ctl+C」や「Ctl+V」は変わりませんので、ロボットに支障はない、というわけです。

 つきましては、この2番のやり方については、直感的で簡単な反面、外部要因による変更などに弱く、時に手間がかかりやすいことを覚えておくと良いでしょう。

3.XPathによる操作

 「XPath」という単語を初めて目にされる方もいらっしゃるかと思います。XPathを詳しく解説すると、冗長になってしまいコラムの趣旨から離れますので、ここでは簡単に「WEBページ上の様々なパーツに紐づけられたWEB上の要素」と考えてみてください。
 例えば、サイトにアクセスし、ログインをしたい時、「ログイン」と書かれたボタンをクリックするという操作でログインすることが殆どかと思います。そのボタンは、見た目上は「ボタン」というパーツですが、実際には「ID・パスワードを入力するためのページに遷移する」という要素が紐づけられています。この「ID・パスワードを入力するためのページに遷移する」という、本来必要な情報の部分がXPathです。そして、WEBページごとのXPathは、誰でも簡単な操作で表示させることができます。

 EPSONの会計ソフトのマイページログインボタンにも画像のようなXPathが指定されています。(ハイライトされた箇所がXPathです)

 では、このXPathをどうRPAに活用するか、という点ですが、先ほどのログインボタンの事例を使って、具体的にお伝えしていきましょう。

 例えば今、「経理関連クラウドサービスのサイトにアクセス、ログインする」という作業をロボットにさせたいとします。この作業自体は先ほど解説した「2.画像認識による操作」でも、ロボットへの指示が可能です。サイトにアクセスするところまで来たら、そのサイト内の「ログインボタン」のエリアを選択し、画像として記憶させ、その画像と同一の部分をクリックするように指示を出せばOKです。しかし、このサイトのデザインが変わったとしたらどうでしょう?そのロボットは、画像を更新しない限り使えなくなってしまいます。

 皆様もご経験があるかと思いますが、企業サイトのデザインが変わることは珍しくありません。例えば、検索最大手のGoogleも、あの「Google」というロゴが季節によって装飾されますよね。画像認識の場合、その程度の変化であってもロボットの動作に支障をきたします。会社のPCであれば、「背景や色・デザインの設定を絶対に変更してはならない」というルールを設け、変化を起こさぬようにすることもできますが、外部サイトをコントロールすることはできないのです。

 そこで役立つのが、XPathです。先ほどの「経理関連クラウドサービスのサイトにアクセスし、ログインする」という作業にXPathを活用する場合、該当のサイトにアクセスするところまで来たら、

・そのサイトで該当のXPathを表示させる
・その中で「ID・パスワードを入力するためのページに遷移する」という要素を選択する
・その言語を直接RPAに認識させ、その操作をするよう指示を出す

 というイメージです。そうすれば、たとえその要素に紐づいているログインボタンの「デザイン」が変更になろうとも、「ID・パスワードを入力するためのページに遷移する」という操作そのものをRPAが認識できるため、その操作が可能になる、というわけです。

 いかがでしょうか。細かいところまでは理解せずとも、大まかなイメージがわかれば、特に問題ありません。おそらく、皆様の日々の作業の中には、「WEBサイトやクラウドサービスにアクセスした上で、何か情報を取ってくる」という作業も多いかと思います。そういった作業を自動化したい場合に、このXPathを活用すれば、外部サイトのデザインや仕様の変更等に左右されず、長く安定してロボットを運用できる、というわけです。



 以上、「実際どのようにRPAに操作をさせていくのか」について、大きく3パターンをご紹介しました。「RPAを動かす」というのが具体的にどういうことなのか、イメージが湧いてきたでしょうか。

▼ 専門家やエンジニアでなくとも、様々な業務を自動化できる時代!

 ひと昔前であれば、各種システムやクラウドサービスを含めた自動化を図る場合、Java、C#、Pythonなどプログラミング言語の理解や制御が必須でした。そして、それらを習得するには時間がかかり、通常業務と並行して習得するのは困難であったため、外注せざるを得ず、高コスト・大規模プロジェクトとなってしまい、自動化そのものを断念する事務所や部署も多かったものです。

 しかし、今は違います。高度な基幹システムに関する業務の自動化については、依然プログラミング言語による制御が必要なケースもありますが、パソコンにインストールして使用されている各種ソフトやクラウドサービスによる業務については、本日ご紹介した3パターンの操作を使えば、非常に多くの業務で自動化が可能です。

 なお、弊社のクライアント様の中には、RPAを導入したことで、4〜7割の作業工数を削減できた、という事例も出ております。人手による業務改善や効率化の動きとは比べ物にならないほど、RPAによる各種自動化は強力なのです。ぜひ皆さまも、まずは着手しやすいところから、RPAによる自動化を進めてみてください。長期的に見れば、その生産性の差はどんどん大きくなっていくでしょう。

 さて、次回は今回のコラムの発展系である「顧客から提供されたデータや金融機関等のデータのRPAを用いた自動取込・自動仕訳」について解説いたします。

執筆者情報

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●氏名・所属
谷口 健 氏 / 会計事務所RPA研究会株式会社 事業推進部長

●経歴
神戸大学工学部卒

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社後、公認会計士試験挑戦のために退職。
公認会計士試験合格後、BIG4の一つであるあずさ監査法人に入所。外資系金融機関等の監査に従事
あずさ監査法人退所後、世界最大の評価会社であるアメリカン・アプレーザル(現ダフアンドフェルプス)にて、株式・金融商品等の評価業務及びM&A業務に従事。その後、会計系コンサルティング会社にて、M&A、事業再生、業務改善コンサルティング等に従事。
現在は会計事務所RPA研究会株式会社に事業推進部長として全国のRPA導入を推進中。

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2021.03.26 18:07:41