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シリーズ 減価償却のチェックポイントQandA その1 減価償却方法の変更

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<チェックポイント>

① 現在適用されている減価償却の方法を他の償却方法に変更できるか
② 変更できるとした場合の手続はどのようになっているか
③ 変更できるとしてその際の要件や制限はあるか
④ 変更の前後における具体的な計算方法はどのように定められているか

1 減価償却方法の選択等

 税務上の減価償却費の損金算入限度額については「定額法」や「定率法」そして「生産高比例法」などのいくつかの税法所定の償却方法により計算する必要があります。法人税法上、平成19年4月1日以降に取得された減価償却資産のうち「機械及び装置、船舶、航空機、車輛及び運搬具並びに工具、器具及び備品」については、「定額法」又は「定率法」のいずれかを選択することができることとされています。

 法人が減価償却資産につき、選定することができる償却方法が2以上ある場合には、それらのいずれかの方法を選択して、あらかじめ所轄税務署長に届けでなければならないこととされています。この届出がない場合には、上記の「機械及び装置、船舶、航空機、車輛及び運搬具並びに工具、器具及び備品」については「定率法」で償却限度額の計算をするものと規定されています。

2 償却方法の変更手続き等

(1)変更の手続き

 法人がいったん選定して届け出た償却方法又は届出しなかったことにより適用されることとなった償却方法(法定償却方法)について、償却方法の変更の承認を受けようとする場合には、新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の前日までに、減価償却資産の償却方法の変更承認申請書を所轄税務署長に提出しなければならないこととされています(法令52)。

 税務署長は、その申請書の提出があった場合において、次に掲げる事由があるときは、その申請を却下するものとされています(法令52③)。

① 現によっている償却方法を採用してから相当期間を経過していないこと。
② 変更しようとする償却方法によっては、その法人の所得金額の計算が適正に行われ難いと認められること。

(2)「相当期間」の判定

 法人から償却方法の変更の承認申請があっても、現によっている償却方法を採用してから相当期間を経過していない場合には、その申請は却下されることになります。この場合の相当期間は、おおむね3年とされています(法基通7-2-4)。したがって、現によっている償却方法を採用してから3年経過していないときは、原則としてその変更は認められないことになります。

 しかし、上記(1)の②の要件にもあるとおり、3年経過要件を満たしたとしても、形式的に無条件でその変更が認められるわけではありません。利益調整のために償却方法を変更するような場合には、当然、その変更申請は却下されることになります。

 なお、採用しようとする事業年度終了の日までに、その申請について承認又は却下の処分がなかったときは、其日に変更の承認があったものとみなす、いわゆる「みなし承認」の適用があることとされています。

3 償却方法を変更した場合の償却限度額の計算

(1)償却方法を定額法から定率法に変更した場合の償却限度の計算

 減価償却資産の償却方法を定額法から定率法に変更した場合には、変更後の償却限度額は、その変更をした事業年度開始の日における帳簿価額を基礎とし、その減価償却資産の法定耐用年数に応ずる償却率により計算します。

(2)償却方法を定率法から定額法に変更した場合の償却限度額

 減価償却資産の償却方法について、定率法から定額法に変更した場合には、その後の償却限度額は、次のイに定める取得価額又は残存価格を基礎とし、次のロに定める年数に応ずる償却率により計算します。

イ 取得価額 
 その変更した事業年度開始の日における帳簿価額を取得価額とみなします。

ロ 耐用年数
 原価償却資産の種類の異なるごとに、法人の選択により、次の(イ)又は(ロ)に定める年数によります。

(イ) 当該減価償却資産について定められている耐用年数
(ロ) 当該減価償却資産について定められている耐用年数から採用していた償却方法に応じた経過年数(その変更した事業年度開始の日における帳簿価額を実際の取得価額をもって除して得た割合に応ずるその耐用年数に係る未償却残額割合に対応する経過年数)を控除した年数(その年数が2年に満たない場合は、2年)

(3)具体例

 質問の場合、変更した事業年度開始の日における帳簿価額を取得価額とみなし、その減価償却資産の法定耐用年数に応ずる償却率により計算することもできますが、上記ロの(ロ)により残存耐用年数を再計算する方法によることも認められます。この方法を選択した場合の償却費の計算は次のようになります。

 [定率法を定額法に変更した場合の計算例(平成24年4月1日以後の取得]
  法定耐用年数       15年
  取得価額     1,000,000円
  変更時の帳簿価額   221,500円

① 変更時の帳簿価額221,500円÷取得価額1,000,000円=0.222(小数点4位四捨五入)
② 「0.222」は、定率法未償却残額表(平成24年4月1日以後取得分)によれば、「耐用年数15年」の欄の「0.228」と「0.182」の中間に位しますから、下位の「0.182」に応ずる「経過年数11年」を経過年数とします。
③ 15年―11年=4年……残存耐用年数
221,500円×(4年の償却率)0.250=55.375円……変更年分の償却限度額

執筆者情報

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税理士 小畑 孝雄

昭和41年東京国税局入局、国税庁法人税課、国税不服審判所勤務等を経て平成16年東京国税局法人課税課長、18年同調査第2部長を歴任し19年退官、税理士登録(日本橋支部所属)

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2021.02.19 16:20:10