営業方法や価格について考えよう3
報酬設定の自由化以降、過当競争が繰り広げられる戦場と化している税理士業界。そして、AIの開発が進む中、近い将来、消えてなくなる職業として税理士も挙げられています。それが今、税理士の開業を取り巻く環境だと言っても過言ではありません。ただ、開業を実行に移した場合、失敗するわけにはいきません。
起業コンサルタント®として活動しつつ、税理士事務所、税理士法人を開業、経営してきた経験をもとに、税理士として失敗しない開業のコツについてコラムを連載しています。前々回から3回にわたって、営業方法や価格など、将来の事務所経営のキモとなる部分について解説しています。では、続きを一緒に見ていきましょう。
■ストックビジネスの要素を取り入れる
「ストックビジネス」や「サブスクリプション」という言葉を聞いたことがあるかと思います。ビジネスモデルを考える際、もうひとつ意識しておくべきこと。フロー型かストック型かということです。売上のタイプにはこの2種類があり、売上の安定にも影響します。
・フロー型 流動的な売上。スポットで購入されるような商品・サービスです。 ・ストック型 月々安定して上がる売上。毎月購入型の定期通販商品、顧問料や会費のような売上です。 |
ストック型売上の割合を増やすことができれば、売上は安定します。逆に、フロー型売上の割合が多い場合、月によって売上が安定せず、また常に集客や広告宣伝に多大なるお金や労力を費やし続けなければならない可能性があります。
この2つについて、税理士業を想定して、具体的に見てみましょう。
A フロー型売上のみ
毎月1件程度、30~50万円のスポットの仕事を依頼されるケース
B ストック型売上のみ
毎月1件、新規の顧問先(毎月の顧問料5万円)を獲得できるケース
として5年間の売上をシミュレーションしてみます。
(解約は1件もないものとします)
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A)フロー型売上のみ |
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B)ストック型売上のみ |
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1年目 |
482万円 |
|
390万円 |
2年目 |
582万円 |
|
1110万円 |
3年目 |
380万円 |
|
1830万円 |
4年目 |
602万円 |
|
2550万円 |
5年目 |
625万円 |
|
3270万円 |
(ストック型 毎月の売上)
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
5 |
10 |
15 |
20 |
25 |
30 |
35 |
40 |
45 |
50 |
55 |
60 |
390 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
計 |
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65 |
70 |
75 |
80 |
85 |
90 |
95 |
100 |
105 |
110 |
115 |
120 |
1110 |
Aの場合、毎月の30~50万円程度の売上を上げるために、営業に関わる多大なるコストと労力をかける必要があるでしょう。売上も先が読めず不安定な状況が続きます。Bの場合は、解約さえなければ、先が読める安定した売上が積み上がっていきます。
このようにシミュレーションをしてみると、ストック型売上を取り入れることができれば、売上の安定には理想的だということがわかります。いや、逆にストックビジネスを取り入れないと、事務所経営が安定しないということがよくわかります。業界的にも顧問契約を獲得することが最善策となっているのもこうした理由が大きいでしょう。
これから提供するサービスの内容を検討する考える際には、ストック型のものを入れることができないかも検討してみることをオススメします。
■フロー型だとしたら、どうリピートにつなげるか
同じような視点で、フロー型の売上だとしても、継続的にリピートしていただくお客様を増やすことによってストック化できる可能性もあります。
例えば、飲食店であれば、3回通っていただくことに成功すれば、リピーターとして定着したと見ていいと言われています。問題は、どうやって、2回目、3回目の来店をしていただけるように経営するかです。飲食店ではじめての来店時に、会員登録やポイントカードの施策を行ったりしますが、リピーター化を狙っての施策だということがよくわかりますね。
■まとめ
いかがだったでしょうか?3回にわたり、営業方法や価格についての解説をしてきました。マーケティングでいえば、基本のキのような部分です。大事なことばかりなので、ぜひマスターしてくださいね。開業してからも常に勉強だといえます。では、次回もお楽しみに!