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確定申告期限の延長と医療費控除

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リエ「黒田さん、確定申告期限が延長されましたね。」

黒田「そうですね、コロナウイルスの影響で作業効率が下がってしまっているので安心はしましたが、それでも本来の申告期限までに終了できるように作業を進めてはいますよ。」

リエ「納付期限も当然延長されていますよね。」

黒田「はい、所得税・消費税・贈与税の申告期限と納付期限が、本来の3月15日から4月15日に延長されています。また振替納税といって所得税や消費税を指定の銀行口座から引き落とす方法で納付される方については、その引落日が所得税は5月31日で消費税は5月24日になりました。」

リエ「ほかに何か変更されたことはありますか。」

黒田「最も多くの方に関係することとして医療費控除の改正事項を申し上げます。医療費控除を適用する場合に、今までは申告書に控除額を記載したうえで、領収書を添付すれば適用を受けられましたが、令和2年分からは領収書の添付が不要となり、医療費控除の明細書の添付が必要となっています。」

リエ「その件は以前も聞いたことがあるような気がしますが。」

黒田「この改正は平成29年分から適用されていて、令和1年分までは経過措置として従来の方法も認められていましたが、令和2年分以降は従来の方法が認められなくなります。」

リエ「そうなんですね、では医療費の領収書はどうすればいいんですか。」

黒田「医療費控除に使用した領収書は5年間保管が必要で、税務署から求められた時に提示又は提出しなければなりません。」

リエ「ごく普通の個人が領収書を5年間保管しておくというのは、なかなかハードルが高いですね。」

黒田「そうかもしれませんが、決まりなので申告書の控と一緒に保管して頂くしかありませんね。」

リエ「医療費控除といえば漢方薬って医療費控除の対象になるのでしょうか。」

黒田「服用している漢方薬が治療又は療養のための医薬品であれば対象となります。」

リエ「治療又は療養以外の目的で服用したものや、医薬品に該当しないものは対象外ということですか。どうやって判断したらいいのでしょう。」

黒田「まず服用の目的として健康維持や疲労回復といったものは対象外になります。そして治療又は療養というからにはそれが必要な症状があって、その症状を改善する効能があることが明らかになっている医薬品でなければ医療費控除の対象にはなりません。」

リエ「結構難しいですね。ちなみに医薬品というのはどういうものですか?」

黒田「薬機法2条1項の医薬品とされていますが、パッケージに『医薬品』とあれば医薬品と判断して問題ないと思います。さらにいえば、そういった医薬品には用法・用量が定められていますので、その用法・用量に見合った量の購入であることもポイントになりますね。」

リエ「う~ん、そこまで注意しないといけないものですか。」

黒田「実は2019年の5月に国税不服審判所で、漢方薬でも医薬品に該当しない健康補助食品や、医薬品ではあっても虚弱体質や肉体疲労を改善するといった効能のもので、医師等の処方でないものが医療費控除の対象にならないと判断されてしまいました。またその判断の中で通常の用法・用量を大きく上回る購入量があったことも指摘されていましたので、その判断内容に則して申し上げました。」

リエ「なるほど、そういうことですか。確かに漢方薬ってかなり高価なものもありますからね、漢方薬だからって全て認めるわけではありませんよってことか。わかりました、有難うございます。」

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「黒田さん、確定申告期限が延長されましたね。」黒田「そうですね、コロナウイルスの影響で作業効率が下がってしまっているので安心はしましたが、それでも本来の申告期限までに終了できるように作業を進めてはいますよ。」リエ「納付期限も当然延長されていますよね。」黒田「はい、所得税・消費税・贈与税の申告期限と納付期限が、本来の3月15日から4月15日に延長されています。また振替納税といって所得税や消費税を指定の銀行口座から引き落とす方法で納付される方については、その引落日が所得税は5月31日で消費税は5月24日になりました。」リエ「ほかに何か変更されたことはありますか。」黒田「最も多くの方に関係することとして医療費控除の改正事項を申し上げます。医療費控除を適用する場合に、今までは申告書に控除額を記載したうえで、領収書を添付すれば適用を受けられましたが、令和2年分からは領収書の添付が不要となり、医療費控除の明細書の添付が必要となっています。」リエ「その件は以前も聞いたことがあるような気がしますが。」黒田「この改正は平成29年分から適用されていて、令和1年分までは経過措置として従来の方法も認められていましたが、令和2年分以降は従来の方法が認められなくなります。」リエ「そうなんですね、では医療費の領収書はどうすればいいんですか。」黒田「医療費控除に使用した領収書は5年間保管が必要で、税務署から求められた時に提示又は提出しなければなりません。」リエ「ごく普通の個人が領収書を5年間保管しておくというのは、なかなかハードルが高いですね。」黒田「そうかもしれませんが、決まりなので申告書の控と一緒に保管して頂くしかありませんね。」リエ「医療費控除といえば漢方薬って医療費控除の対象になるのでしょうか。」黒田「服用している漢方薬が治療又は療養のための医薬品であれば対象となります。」リエ「治療又は療養以外の目的で服用したものや、医薬品に該当しないものは対象外ということですか。どうやって判断したらいいのでしょう。」黒田「まず服用の目的として健康維持や疲労回復といったものは対象外になります。そして治療又は療養というからにはそれが必要な症状があって、その症状を改善する効能があることが明らかになっている医薬品でなければ医療費控除の対象にはなりません。」リエ「結構難しいですね。ちなみに医薬品というのはどういうものですか?」黒田「薬機法2条1項の医薬品とされていますが、パッケージに『医薬品』とあれば医薬品と判断して問題ないと思います。さらにいえば、そういった医薬品には用法・用量が定められていますので、その用法・用量に見合った量の購入であることもポイントになりますね。」リエ「う~ん、そこまで注意しないといけないものですか。」黒田「実は2019年の5月に国税不服審判所で、漢方薬でも医薬品に該当しない健康補助食品や、医薬品ではあっても虚弱体質や肉体疲労を改善するといった効能のもので、医師等の処方でないものが医療費控除の対象にならないと判断されてしまいました。またその判断の中で通常の用法・用量を大きく上回る購入量があったことも指摘されていましたので、その判断内容に則して申し上げました。」リエ「なるほど、そういうことですか。確かに漢方薬ってかなり高価なものもありますからね、漢方薬だからって全て認めるわけではありませんよってことか。わかりました、有難うございます。」
2021.02.15 16:19:32