営業・マーケティングツールについて考えよう1
報酬設定の自由化以降、過当競争が繰り広げられる戦場と化している税理士業界。AIの開発が進む中、近い将来、消えてなくなる職業としても挙げられています。夢と希望、そして、将来に対する不安が入り乱れた状況。それが今、税理士の開業を取り巻く環境だと言っても過言ではありません。ただ、開業を実行に移した場合、失敗するわけにはいきません。家族の生活もあるし、老後のこともある。夢だけを見ているわけにはいかないのです。
そこで、起業コンサルタント®として活動しつつ、税理士事務所、税理士法人を開業、経営してきた経験をもとに、税理士として失敗しない開業のコツについてコラムを連載していくことにしました。このコラムが少しでも役に立ち、安定した事務所経営ができるようになる礎となれば、うれしいです。今回から2回にわたって、営業、マーケティングツールの準備について見ていきましょう!
■営業、マーケティングツールの準備をしよう
開業時期が決まり、その2ヶ月前~1ヶ月前くらいになれば、さらに準備を具体的にかつ迅速に進める必要があります。重要なひとつの要素が営業・マーケティングツールの準備です。
例えば、事務所名を決め、ロゴをつくり、名刺やパンフレットといった営業ツールをつくる流れです。ホームページを開設するのであればその準備が必要です。というより、もうこの時代、ホームページがないのは表札がないのと同じです。必ず作りましょう。FacebookなどのSNSをはじめるのであれば、トップページを作成しておくことも大事なことです。
■名刺
税理士というお堅い職業だから極力簡素でお堅い名刺を。そんな風に考える方も多いかもしれません。ただ、冒頭で申し上げたようにすでに税理士のマーケットは供給過剰の熾烈なマーケット。互いに競いながらサービス競争を繰り広げている世界です。通常のビジネス環境と変わらず、他社としっかり比較をされる世界なのです。
お客様の立場に立って考えましょう。会社の税務顧問を探していると3人の候補が現れました。一人は知り合いの紹介、あとの2人はWebで探して見つけた税理士です。それぞれと会ったあと、名刺を並べて検討します。誰にしようかと。
開業後、お客様側では常にそんなことが行われているということを意識してください。つまり、名刺の印象や書いてあることは非常に重要なのです。
筆者の場合は2種類の名刺をつくっています。ひとつは税務調査や税理士会の公式行事などオフィシャルな場面で出すための簡素でお堅い名刺。白黒印刷で最低限の無難なことしか書いていません。もうひとつは営業用の名刺。こちらはオールカラー印刷の2つ折り。表面にはプロフィール写真を載せ、内側の面には実績、業績や書籍の情報、イチオシのサービスなど、小さなパンフレットのような作りになっています。パンフレットは渡しにくくても、名刺だったら必ず受け取ってもらえるという狙いもあります。
恥ずかしいという方もいるかもしれませんが、写真は必ず入れましょう。例えば、交流会や飲み会などで一瞬だけあいさつした人でも、写真さえ載っていれば、あとで思い出してもらえる可能性も上がります。写真については次回に詳しく解説するのでお見逃しなく!
■パンフレット
もちろん、きちんとしたパンフレットをつくっておくという選択肢もあります。A4サイズの硬い紙で7~8ページというような本格的な会社案内のようなものを最初からつくろうと考える人もいるでしょう。ただ、実際に取り組んでみるとわかるのですが、開業もしていないのに、それだけのページ数を埋めるというのは実績などのコンテンツ不足でなかなか大変なものです。
そこでおすすめするのが、A4サイズ三つ折りのタイプです。A4サイズの両面に印刷して、それを3つ折りなので、全部で小さな面が6つできることになります。これでしたら、コストも安く、無理なく制作できるでしょう。著者も開業時にはお世話になっていました。
もうひとつの考え方として、サービス内容などがきちんと定まるまで、パンフレットはつくらないという選択肢もあるでしょう。例えばPowerPointで作っておいて、必要数を印刷する、メールで送るときのためにPDF化しておくなどです。しばらくはそれでも全然構いません。
■まとめ
いかがでしたか?単なる名刺やパンフレットといっても、奥が深いものですよね。営業やマーケティングについては、ずっと続けていく必要があるし、一生が勉強だと言っても過言ではありません。次回からは続きとして、宣材写真やロゴ、キャッチコピーなどについて論じていきます。一緒にがんばっていきましょう!