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年金制度改正法~年金受給開始時期の繰上げ・繰下げ~

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今日は守田社労士の訪問日です。

リエ「守田先生、こんにちは。個人的なことなんですが、もうすぐ60歳になる伯母が、年金の繰上げ受給を考えているようなんですけど、気をつけることはありますか。」

守田「ちょうど、昨年6月に公布された年金制度改正法で、年金の繰上げ・繰下げも改正されることになったので、それを確認してから決めたほうがいいと思いますよ。」

リエ「どんな改正ですか。」

守田「では、ご相談の繰上げの方から説明しますね。ご存知とは思いますが、繰り上げる期間に応じて受給額が減額されてしまいますよね。現在は1月当たりの減額率が0.5%ですが、令和4年4月以降は0.4%になるので、最大の5年60月を繰り上げる場合の減額率は、30%から24%に変更となります。」

リエ「例えば、年金月額の満額が10万円の場合に5年繰り上げると、今だったら月額7万円ですけど、来年4月以降に繰上げをすると月額7万6千円もらえるということですね。」

守田「そうです。年間にすると7万2千円も違ってきますよ。もちろん、繰り上げる期間が短くなれば減額もさらに少なくなりますので、どうしようか迷っている人は、とりあえず来年4月まで待ってからでもいいかもしれません。」

リエ「では、来年4月になったら繰り上げていいのですね。」

守田「そこは、またいろいろな問題があります。繰上げ受給は一度手続きを行うと、取消しや訂正ができないので、最後まで減額された年金額となってしまいます。これが一番大きなポイントです。ちょうどその時期に収入が途絶えたからといって、慌てて手続きをしてしまうと、その後に例えば再就職などで収入が増えても、繰上げ受給をストップして満額の年金をもらうことはできません。」

リエ「取消しできないんですか、軽々しく手続きできませんね。」

守田「それと、繰上げ受給をすると、基金や共済等の年金が減額されたり、障害年金を受給できなくなるなどいくつかの注意点があります。」

リエ「そうすると、やっぱり繰上げ受給はやめた方がいいんですか。」

守田「人それぞれの考え方や生活があるので、これが正解というのはないのですが、制度のメリット、デメリットを確認したうえで、ご本人が納得して決めることが大事かと思います。年金制度は複雑で、加入状況等に応じて一人ひとり違うので、実際に繰上げを考えるのであれば、事前に年金事務所で具体的な数字を確認することも大切です。」

リエ「わかりました、一応私が説明してみて、それでも繰り上げたいと言ったら、年金事務所へ相談に行くよう話してみます。」

守田「それでいいと思います。自分の年金ですからぜひご自分で。」

リエ「はい。」

守田「そして、繰下げのほうですが、こちらは1月当たり0.7%の増額率の変更はありません。」

リエ「では何が変わるんですか。」

守田「現在は、70歳までの繰下げが認められていますが、令和4年4月以降は75歳までの繰下げができるようになります。」

リエ「ということは……」

守田「65歳から75歳まで、最大10年120月繰り下げた場合は84%の増額となります。」

リエ「月額10万円の場合では18万4千円です。大きいですね。」

守田「そうですね。このケースでは年額にすると100万円程度増える計算になります。ただし、75歳まで待たなければいけませんから、そこまでの生活とそこから何年もらえるのかなってことも考えてくださいね。」

リエ「確かに、数字だけ見ると魅力的ですけどね。」

守田「そうですね。金額だけみれば、75歳まで繰り下げて高額の年金をもらえばいいという話になりますが、体力や体調、仕事や環境等によっては早くもらったほうがいい場合も多くありますので、無理に我慢はしないでほしいですね。」

リエ「繰り下げる場合は、いつからもらうのが一番いいのでしょうか。」

守田「それが一番答えにくい質問なんですけどね。年金を受給しなくても生活に余裕があって、長生きできる自信がある人は、繰り下げてもいいのではないでしょうか、といつも答えています。繰上げと同じことですが、ご自分が納得する形で受給することが一番大事です。そして、いつからもらい始めたとしても、長生きをすることが一番お得なのではないでしょうか。」

リエ「そうですね。ありがとうございました。」

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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今日は守田社労士の訪問日です。リエ「守田先生、こんにちは。個人的なことなんですが、もうすぐ60歳になる伯母が、年金の繰上げ受給を考えているようなんですけど、気をつけることはありますか。」守田「ちょうど、昨年6月に公布された年金制度改正法で、年金の繰上げ・繰下げも改正されることになったので、それを確認してから決めたほうがいいと思いますよ。」リエ「どんな改正ですか。」守田「では、ご相談の繰上げの方から説明しますね。ご存知とは思いますが、繰り上げる期間に応じて受給額が減額されてしまいますよね。現在は1月当たりの減額率が0.5%ですが、令和4年4月以降は0.4%になるので、最大の5年60月を繰り上げる場合の減額率は、30%から24%に変更となります。」リエ「例えば、年金月額の満額が10万円の場合に5年繰り上げると、今だったら月額7万円ですけど、来年4月以降に繰上げをすると月額7万6千円もらえるということですね。」守田「そうです。年間にすると7万2千円も違ってきますよ。もちろん、繰り上げる期間が短くなれば減額もさらに少なくなりますので、どうしようか迷っている人は、とりあえず来年4月まで待ってからでもいいかもしれません。」リエ「では、来年4月になったら繰り上げていいのですね。」守田「そこは、またいろいろな問題があります。繰上げ受給は一度手続きを行うと、取消しや訂正ができないので、最後まで減額された年金額となってしまいます。これが一番大きなポイントです。ちょうどその時期に収入が途絶えたからといって、慌てて手続きをしてしまうと、その後に例えば再就職などで収入が増えても、繰上げ受給をストップして満額の年金をもらうことはできません。」リエ「取消しできないんですか、軽々しく手続きできませんね。」守田「それと、繰上げ受給をすると、基金や共済等の年金が減額されたり、障害年金を受給できなくなるなどいくつかの注意点があります。」リエ「そうすると、やっぱり繰上げ受給はやめた方がいいんですか。」守田「人それぞれの考え方や生活があるので、これが正解というのはないのですが、制度のメリット、デメリットを確認したうえで、ご本人が納得して決めることが大事かと思います。年金制度は複雑で、加入状況等に応じて一人ひとり違うので、実際に繰上げを考えるのであれば、事前に年金事務所で具体的な数字を確認することも大切です。」リエ「わかりました、一応私が説明してみて、それでも繰り上げたいと言ったら、年金事務所へ相談に行くよう話してみます。」守田「それでいいと思います。自分の年金ですからぜひご自分で。」リエ「はい。」守田「そして、繰下げのほうですが、こちらは1月当たり0.7%の増額率の変更はありません。」リエ「では何が変わるんですか。」守田「現在は、70歳までの繰下げが認められていますが、令和4年4月以降は75歳までの繰下げができるようになります。」リエ「ということは……」守田「65歳から75歳まで、最大10年120月繰り下げた場合は84%の増額となります。」リエ「月額10万円の場合では18万4千円です。大きいですね。」守田「そうですね。このケースでは年額にすると100万円程度増える計算になります。ただし、75歳まで待たなければいけませんから、そこまでの生活とそこから何年もらえるのかなってことも考えてくださいね。」リエ「確かに、数字だけ見ると魅力的ですけどね。」守田「そうですね。金額だけみれば、75歳まで繰り下げて高額の年金をもらえばいいという話になりますが、体力や体調、仕事や環境等によっては早くもらったほうがいい場合も多くありますので、無理に我慢はしないでほしいですね。」リエ「繰り下げる場合は、いつからもらうのが一番いいのでしょうか。」守田「それが一番答えにくい質問なんですけどね。年金を受給しなくても生活に余裕があって、長生きできる自信がある人は、繰り下げてもいいのではないでしょうか、といつも答えています。繰上げと同じことですが、ご自分が納得する形で受給することが一番大事です。そして、いつからもらい始めたとしても、長生きをすることが一番お得なのではないでしょうか。」リエ「そうですね。ありがとうございました。」
2021.01.18 16:32:13