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令和2年度の年末調整は変更点が多い!?

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令和2年度年末調整

あゆみ:そろそろ年末調整の時期ね。今年は去年と何か変わったことある?

ケン:実は今年の年末調整は例年と比べて変更点が多く、少し面倒になるところもあります。

あゆみ:どういうところが変わって、どういうところが面倒なの?

ケン:変更点は以下の4点です。
   1.給与所得控除の改正
   2.基礎控除の改正とそれに伴う扶養親族等の合計所得金額の要件の改正
   3.所得金額調整控除の創設
   4.ひとり親控除の創設とそれに伴う寡婦控除の改正

あゆみ:4点というか、「それに伴う」をいると6つもあるじゃない?

ケン:ま、そうなんですが、私が決めたことじゃないので・・・。

給与所得控除の改正

あゆみ:1つめの「給与云々」ってどういう風に変わったの?

ケン:給与所得控除の改正ですね。
   一言でいうと、給与所得控除の金額が10万円下がりました。
   これは基礎控除が10万円上がることで差し引きゼロになりますので、ほとんどの方は税金の増減はありません。
   ただし、給与収入が850万円以上の方は、給与所得控除が10万円以上最大25万円まで下がります。家族に23歳未満の扶養親族や特別障害者がいない方は基礎控除10万円上がる分を考慮しても増税となります。

あゆみ:税金増えちゃうのね・・・。

基礎控除の改正とそれに伴う扶養親族等の合計所得金額の要件の改正

あゆみ:2つ目は「基礎控除の改正」ね。基礎控除は10万円上がるの?

ケン:先ほど申し上げましたが、その通りです。
   ほとんどの方は基礎控除が10万円上がります。
   ただし、合計所得金額が2,500万円を超える方の基礎控除はゼロとなります。
   
あゆみ:「合計所得金額が2,500万円」って、給与が2,500万円ってこと?

ケン:給与所得者の場合、給与所得控除後の金額のことを言います。
   したがって、収入が給与のみの方であれば給与収入が2,695万円を超える方の基礎控除はゼロとなります。
   また、合計所得金額が2,400万円から2,500万円の方については、基礎控除が段階的に下げられます。

あゆみ:収入なのか所得なのか、ややこしいわね。

ケン:基礎控除が10万円上がることにより、次の扶養親族等に該当するための所得要件についても、10万円ずつ上がっています。
   ・同一生計配偶者・・・・・・・・・・48万円以下
   ・扶養親族・・・・・・・・・・・・・48万円以下
   ・源泉控除対象配偶者・・・・・・・・95万円以下
   ・配偶者特別控除の対象の配偶者・・・48万円超133万円以下
   ・勤労学生・・・・・・・・・・・・・75万円以下

あゆみ:何かよく分からなくなってきた・・・。

ケン:分かりにくくて申し訳ございません。(私が規定を作ったのではないですが・・・。)

所得金額調整控除の創設

あゆみ:「所得なんとか」って新しいものができたの?

ケン:その通りです。所得金額調整控除といいます。
   先ほど、「850万円以上給与収入がある方の給与所得控除が10万円以上最大25万円下がります」と申しました。
   これで増税になるわけですが、家族に23歳未満の扶養親族や特別障害者がいる場合には、増税にならないように創設されたのがこの所得金額調整控除です。

あゆみ:じゃ、私は増税にならない?

ケン:はい、対象は給与収入が850万円以上で23歳未満の扶養親族や特別障害者がいる方です。
   所得金額調整控除の計算式は、
   (給与収入の金額-850万円)✕10%=所得金額調整控除の金額
   です。最高15万円となります。
   これにより、給与所得控除が10万円以上下がっても、その分をこの所得金額調整控除が補ってくれる形になりますので、増税にはなりません。

あゆみ:あー、よかった。

ケン:また、この所得金額調整控除の規定が導入されたことにより、注意しなければならない点があります。

あゆみ:何?

ケン:給与所得者が配偶者控除を受けるときの要件です。
   実は、所得金額調整控除の適用を受けるかどうかで給与収入の要件が変わります。
   所得金額調整控除の適用がない方は給与収入が1,195万円以下、所得金額調整控除の適用がある方は給与収入が1,210万円以下であれば配偶者控除が受けられます。

あゆみ:ということは、毎月100万円の給料で年収1,200万円の人は、所得金額調整控除の適用がある場合は、配偶者控除が受けられて、所得金額調整控除の適用がなければ配偶者控除が受けられないってこと?

ケン:その通りです。
    所得金額調整控除は、対象は給与所得者のみですから給与所得控除の補完として規定されているものと思われます。

あゆみ:ややこしやー、ややこしやー(by野村萬斎)、だね。

ひとり親控除の創設とそれに伴う寡婦控除の改正

ケン:続きましてひとり親控除の創設です。

あゆみ:まだあるの?もうおなか一杯・・・。

ケン:そう言わず、最後までお聞きください。
   今までは結婚をしてからじゃないと控除できなかった寡婦控除が改正され、未婚のひとり親でも要件を満たすと35万円の控除ができるようになります。これをひとり親控除といいます。
   ひとり親控除の要件は以下の3つです。
   1.生計を一にする子がいる
   2.合計所得金額が500万円以下
   3.事実婚状態の人がいない
   
あゆみ:うちの従業員には該当する人はいないね。

ケン:この関係で離婚や死別した場合の寡婦(夫)控除も改正されています。
   「特別の寡婦」が廃止されたほか、寡婦控除27万円を控除できる要件に
   ・合計所得金額が500万円以下
   ・事実婚状態の人がいない
   という2つの要件が追加されました。
   これにより、合計所得金額が500万円(給与収入のみの場合約689万円)を超える方は寡婦控除が受けられなくなりました。

あゆみ:もう終わり?

ケン:本当は細かい部分がいろいろとありますが、今回はこのくらいで・・・。

あゆみ:はー、おなか一杯!

執筆者情報

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清水 透

清水透税理士事務所 所長 税理士(登録番号104689)

平成18年2月税理士登録
大手税理士事務所に勤務しつつ、平成25年4月~平成28年1月の間みずほ銀行に出向。
平成28年2月独立開業
法人税・消費税・所得税・相続税の申告業務の中でも、法人オーナーに対する相続税約1億円を節税する株式承継の提案や個人の不動産オーナーに対する相続税約5,000万円を節税する提案などの経験。
また税制改正や事業承継の全国でのセミナー、全国のお客様に対し法人の株式承継対策や個人の方々の相続税対策の提案に毎日奔走中。
「気がつけばあなたも相続税?」2011.9(共著)出版
協力:株式会社実務経営サービス
https://www.jkeiei.co.jp/

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あゆみ:そろそろ年末調整の時期ね。今年は去年と何か変わったことある?ケン:実は今年の年末調整は例年と比べて変更点が多く、少し面倒になるところもあります。あゆみ:どういうところが変わって、どういうところが面倒なの?ケン:変更点は以下の4点です。   1.給与所得控除の改正   2.基礎控除の改正とそれに伴う扶養親族等の合計所得金額の要件の改正   3.所得金額調整控除の創設   4.ひとり親控除の創設とそれに伴う寡婦控除の改正あゆみ:4点というか、「それに伴う」をいると6つもあるじゃない?ケン:ま、そうなんですが、私が決めたことじゃないので・・・。
2020.11.19 16:16:24