注目を集める事業再生救済士研究協会の取り組み コロナ禍で業績悪化した顧問先の「事業」と「経営者の自宅」を救う 知っているだけで顧問先を救済できる「目利き力」とは
大手監査法人の会計士から中小企業のための税理士へ コロナに負けない新しい価値を追求する足立直之先生
足立税理士・公認会計士事務所の足立直之先生(写真)は、大手監査法人に17年勤めた後、約60社からなるグループ会社の内部監査を6年にわたり実施。このときの経験から昨年、税理士事務所を開設し、中小企業のサポートに奮闘しています。
国内外60社の監査をきっかけに独立開業
―― 足立先生のご経歴を伺います。
足立 平成2年に大学を卒業して、銀行に2年勤めたのですが、公認会計士になるために退職して試験勉強を始めました。3年後に合格し、平成8年から朝日監査法人(現あずさ監査法人)、中央青山監査法人、EY新日本有限責任監査法人において監査業務に従事しました。
―― 税理士事務所を設立されたのはいつでしょうか。
足立 平成31年4月に税理士登録を行い、翌月に現在の事務所を設立しました。
―― 開業のきっかけを教えてください。
足立 平成25年にEY新日本から事業会社に転籍し、中小企業に関わる仕事がしたいと思ったことがきっかけです。当時、クライアントの孫会社にあたる海外の会社で不正が発覚し、その会社に入って内部監査をするという話が浮上しました。そして、私が出向することになったのです。後に私はこの会社に転籍し、約6年かけてグループ会社である国内外の60社の監査を内部から行いました。このとき、グループ内の中小企業の監査も実施したのですが、それが大変やりがいのあるものでした。
―― どのような点にやりがいがあったのでしょうか。
足立 既にルールが出来上がっている大企業と違って、中小企業は内部統制もない状態です。企業と同じ目線に立って、一緒にルールを作り上げていくことにやりがいを感じました。そのとき、中小企業の成長を支援できる仕事がしたいと思い、60社の監査が一巡したところで退職して、今の事務所を設立しました。
会計士としての実績を生かし付加価値を提供
―― 事務所の強みや力を入れていることを教えてください。
足立 記帳代行や確定申告は定型部分が多いため、なかなか他との差別化が難しいと感じます。長年やってきた会計士の仕事は業績を把握したところからのスタートでしたから、やはり私も、そこからできるサポートを強みにしていきたいと思っています。例えば経営計画の作成支援や、資金繰りの改善といった部分です。経営計画がない会社も結構ありますので、最初は短期の計画を作ってもらい、その後は中長期の計画に挑戦していただくといったことを一緒にやっています。資金繰りは、キャッシュコンバージョンサイクルなどを使いながら、いつ頃どのくらい資金が必要になるかを見て、キャッシュフローの指導をしています。このような部分で、今後も私なりの付加価値をお客様に提供していきたいと思っています。
差別化が今後の課題
―― 定型業務では厳しい時代になってきたということは、業界全体でいわれていますね。
足立 定型業務についても、月次決算の早期化には力を入れています。早期に業績を把握するという目的もありますが、月次決算資料を毎月銀行などに早く提出することも、お客様の資金繰り支援のひとつになると思うからです。ただし今回のコロナ禍でテレワークの導入が進みましたが、このまま定型業務に対面の必要性がなくなれば、差をつけることは本当に難しくなります。今きっと多くの方が考えていることだと思うのですが、いかに自分なりの差別化をしていくかが今後の課題になると思います。
―― 今後のビジョンをお聞かせください。
足立 法人を中心に顧客を拡大したいですね。現在、有資格者2名で行っていますが、今後は相続や事業承継なども視野に入れて、事務所を拡大していきたいと思っています。
―― 本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。
足立直之(あだち・なおゆき)
足立税理士・公認会計士事務所代表。平成2年に神戸大学経済学部卒業。三和銀行(現三菱UFJ銀行)に2年勤務した後、公認会計士に転身。平成8年から朝日監査法人(現あずさ監査法人)、中央青山監査法人、EY新日本有限責任監査法人に勤務後、平成25年に事業会社に転籍し、グループ会社である60社の内部監査を実施する。令和元年5月に現在の事務所を設立し、代表を務める。