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年金制度改正法~在職定時改定・在職老齢年金~

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今日は守田社労士の訪問日です。

リエ「守田先生、こんにちは。最近、年金制度改正法が成立したというニュースを見たのですが、何が変わったのですか。」

守田「年金手帳から基礎年金番号通知書への切替えとか、いろいろと変更はあるのですが、今回『在職定時改定』という制度が導入されることになりましたね。」

リエ「どういう制度なんですか。」

守田「厚生年金に加入している人は、毎月の給与から保険料を控除されていますが、若い人は年金がもらえるときまで積み立てているというイメージがあると思います。では、年金を受給しながら働いている人は、毎月の保険料がいつ年金に反映されているか知っていますか。」

リエ「いえ、考えたこともなかったです。」

守田「そうですよね。自分のことじゃないと気にしないものですよね。現在は、簡単に言うと、厚生年金の資格を喪失する度に反映されることになります。」

リエ「えっ、では働き続けていたら保険料ばかり控除されて年金額は増えないってことですか。」

守田「そうなんです。同じ職場で継続して厚生年金に加入している場合は、65歳時の年金の受給手続きで反映されてから、70歳の厚生年金喪失までの5年間は反映されないことになります。これは私も少し気になっていたのですが、今回導入された『在職定時改定』によって、毎年1回10月に、保険料を反映して年金額を改定することになりました。令和4年4月施行なので、少し先の話にはなりますが……。」

リエ「毎年、少しずつでも年金が増えれば、頑張って働こうかなって思えますね。」

守田「そうなるといいですよね。それと、在職老齢年金は知ってますよね。」

リエ「はい。厚生年金の被保険者が厚生年金を受給している場合に、その報酬と年金額によって、年金額が調整されてしまうってことですよね。」

守田「そうです。60~64歳の支給停止の基準額が28万円と低めだったため、支給停止となるケースが多かったのですが、今回の改正で、65歳以上と同じ基準額47万円に変更になります。こちらも令和4年4月施行です。」

リエ「こちらも、働く人には嬉しい変更ですね。」

守田「本当にそうですね。いくつになっても働きたいと思える環境を整えることも大切ですよね。ついでに、今回の改正ではないのですが、知識としてひとつだけ、国民年金第3号被保険者についてお教えしましょう。」

リエ「国民年金第3号は厚生年金加入者の被扶養配偶者ですよね。」

守田「一般的にはそう言われていますが、実は少し違うのです。厚生年金は昔から会社員の年金でしたが、公務員や私学等の年金として以前は共済年金があり、平成27年10月に年金制度の一元化により厚生年金に統一されたのです。」

リエ「記憶にあります。大きなニュースでしたよね。」

守田「はい。やはり年金は老後の生活の支えになるものなので、制度が変わるときは、世論も賑やかになりますね。そして以前から、厚生年金や共済年金の加入者を国民年金第2号被保険者と定めていて、その第2号の被扶養配偶者を国民年金第3号被保険者というのです。」

リエ「あれ、違いがよくわからないのですが……。」

守田「ここからです、よく聞いてくださいね。まず、第3号の年齢要件は20歳以上60歳未満です。18歳で第2号の方と結婚しても20歳になるまでは第3号にはなれません。同様に、第2号の方がずっと働き続けていても配偶者が60歳になれば第3号ではなくなります。ここまではわかりますね。」

リエ「はい。」

守田「少子高齢化によって高齢者の就業環境が大きく変わり始めていますので、最近では70歳を超えても働いている方が増えてきました。そして先ほどお話ししたように厚生年金は70歳まで加入できます。でも国民年金第2号は原則65歳(※注)までしか加入できないのです。」

リエ「え……。」

守田「つまり、10歳年下の専業主婦の妻を持つ会社員が70歳まで働いた場合、本人は70歳まで厚生年金に加入できますが、第2号は65歳までなので、10歳年下の妻は55歳で第3号ではなくなり、国民年金第1号として60歳までご自身で年金保険料を負担しなければならなくなるということです。」

リエ「厚生年金と国民年金第2号の期間が一致していないということですか……、マジックみたいですね。」

守田「65歳退職であれば気づかないことなので、あまり知られていないのですが、70歳までの雇用延長が進みつつある今、このようなケースもこれから増えてくると思いますので頭の隅にでも入れておいてください。」

リエ「はい、勉強になりました。ありがとうございました。」

(※注) 65歳以上70歳未満で老齢基礎年金の受給資格期間に満たない厚生年金の被保険者は、受給権を有するまでの期間は国民年金第2号被保険者となります。

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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今日は守田社労士の訪問日です。リエ「守田先生、こんにちは。最近、年金制度改正法が成立したというニュースを見たのですが、何が変わったのですか。」守田「年金手帳から基礎年金番号通知書への切替えとか、いろいろと変更はあるのですが、今回『在職定時改定』という制度が導入されることになりましたね。」リエ「どういう制度なんですか。」守田「厚生年金に加入している人は、毎月の給与から保険料を控除されていますが、若い人は年金がもらえるときまで積み立てているというイメージがあると思います。では、年金を受給しながら働いている人は、毎月の保険料がいつ年金に反映されているか知っていますか。」リエ「いえ、考えたこともなかったです。」守田「そうですよね。自分のことじゃないと気にしないものですよね。現在は、簡単に言うと、厚生年金の資格を喪失する度に反映されることになります。」リエ「えっ、では働き続けていたら保険料ばかり控除されて年金額は増えないってことですか。」守田「そうなんです。同じ職場で継続して厚生年金に加入している場合は、65歳時の年金の受給手続きで反映されてから、70歳の厚生年金喪失までの5年間は反映されないことになります。これは私も少し気になっていたのですが、今回導入された『在職定時改定』によって、毎年1回10月に、保険料を反映して年金額を改定することになりました。令和4年4月施行なので、少し先の話にはなりますが……。」リエ「毎年、少しずつでも年金が増えれば、頑張って働こうかなって思えますね。」守田「そうなるといいですよね。それと、在職老齢年金は知ってますよね。」リエ「はい。厚生年金の被保険者が厚生年金を受給している場合に、その報酬と年金額によって、年金額が調整されてしまうってことですよね。」守田「そうです。60~64歳の支給停止の基準額が28万円と低めだったため、支給停止となるケースが多かったのですが、今回の改正で、65歳以上と同じ基準額47万円に変更になります。こちらも令和4年4月施行です。」リエ「こちらも、働く人には嬉しい変更ですね。」守田「本当にそうですね。いくつになっても働きたいと思える環境を整えることも大切ですよね。ついでに、今回の改正ではないのですが、知識としてひとつだけ、国民年金第3号被保険者についてお教えしましょう。」リエ「国民年金第3号は厚生年金加入者の被扶養配偶者ですよね。」守田「一般的にはそう言われていますが、実は少し違うのです。厚生年金は昔から会社員の年金でしたが、公務員や私学等の年金として以前は共済年金があり、平成27年10月に年金制度の一元化により厚生年金に統一されたのです。」リエ「記憶にあります。大きなニュースでしたよね。」守田「はい。やはり年金は老後の生活の支えになるものなので、制度が変わるときは、世論も賑やかになりますね。そして以前から、厚生年金や共済年金の加入者を国民年金第2号被保険者と定めていて、その第2号の被扶養配偶者を国民年金第3号被保険者というのです。」リエ「あれ、違いがよくわからないのですが……。」守田「ここからです、よく聞いてくださいね。まず、第3号の年齢要件は20歳以上60歳未満です。18歳で第2号の方と結婚しても20歳になるまでは第3号にはなれません。同様に、第2号の方がずっと働き続けていても配偶者が60歳になれば第3号ではなくなります。ここまではわかりますね。」リエ「はい。」守田「少子高齢化によって高齢者の就業環境が大きく変わり始めていますので、最近では70歳を超えても働いている方が増えてきました。そして先ほどお話ししたように厚生年金は70歳まで加入できます。でも国民年金第2号は原則65歳(※注)までしか加入できないのです。」リエ「え……。」守田「つまり、10歳年下の専業主婦の妻を持つ会社員が70歳まで働いた場合、本人は70歳まで厚生年金に加入できますが、第2号は65歳までなので、10歳年下の妻は55歳で第3号ではなくなり、国民年金第1号として60歳までご自身で年金保険料を負担しなければならなくなるということです。」リエ「厚生年金と国民年金第2号の期間が一致していないということですか……、マジックみたいですね。」守田「65歳退職であれば気づかないことなので、あまり知られていないのですが、70歳までの雇用延長が進みつつある今、このようなケースもこれから増えてくると思いますので頭の隅にでも入れておいてください。」リエ「はい、勉強になりました。ありがとうございました。」(※注) 65歳以上70歳未満で老齢基礎年金の受給資格期間に満たない厚生年金の被保険者は、受給権を有するまでの期間は国民年金第2号被保険者となります。
2020.10.19 16:20:01