「大規模不正」トップ記事の不正事例を分析する:東芝の不祥事で武士道に責任を負わせる(その2 全4回)
(その1の続き)
2017 年危機 (2017 crisis)
社内の整理は度を越していたのだろうか? 2 月 14 日に時間を進めてみよう。東芝は、バレンタインデーのカードを発送していたのではない。ロイターの記事“Delays, confusion as Toshiba reports $6 billion nuclear hit and slides to loss”(遅延と混乱、東芝が原子力事業による打撃による損失を発表), Makiko Yamazaki, February 14, https://tinyurl.com/jaqz2gs) によると、当初は「準備ができていない」という理由で四半期決算の公表を遅らせたが、後に、内部報告書が会計の問題の可能性を明らかにした後で、ある子会社―ウェスチングハウスの原子力事業―の調査にもっと時間が必要だと発表した。
ロイターの記事によると、これらの東芝の内部報告書は、ウェスチングハウスの統制は「不十分」であり、会社はウェスチングハウスの上級経営者が、債務超過の核心である会社の買収に係る取引を巡る議論で「不当なプレッシャー」を行使したかどうかを検討する必要があったと示唆している。
「外部弁護士による追加的な徹底調査と外部監査人がその結果を精査するのに約一ヵ月を要すると我々は判断した」と東芝は言った。東芝は、この新たな不祥事の発覚―株主資本を帳消しにする減損額によりグループ全体が通年で赤字になる―により合計で 65 億ドルの損失を公表した。
ロイターの記事によると、「ここに至ってやっと人々は内部統制の問題、会計の問題、ガバナンスの問題は非常に現実的でもはや抽象的ではないと認識し始めた。これらの問題は会社の存続に影響する」と、ジェフリーズ (Jefferies) のアナリストである Zuhair Khan は述べた。
長期的な存続に不正が及ぼす影響 (Fraud’s impact on long-term survival)
2 月 22 日付ウォールストリートジャーナルの社説“Lessons of the Toshiba Meltdown”(東芝崩壊の教訓)(https://tinyurl.com/zepvo9m) で、その筆者は、これらの損失は、2015 年の会計不祥事が明らかになった後、東芝が上級経営幹部を辞職させたことに起因すると信じている。東芝は自社のコーポレートガバナンスの構造を改革するための取組みを称賛したが、経営幹部の辞職による望ましくない副作用は、経験の乏しい新たに昇進した中堅管理職が複数のお粗末な経営判断をした結果、東芝の現在の苦境をもたらした。
ウォールストリートジャーナルの社説は次のように述べている。残念なことに、不正会計を何年も行ってきた組織の DNA を埋め込まれた幹部社員の多くは、同時に戦略的に重要な判断を下すのに欠かせない専門家でもあったということだ。これらの主要幹部を失ったことで、現経営者が、経営者、投資家、その他のステークホルダーと共に、コーポレートガバナンスではなく、会社の存続について議論するというところまで経営は弱体化した。会社が負債超過の状態にあるなら、優れたコーポレートガバナンスの恩恵は一体何なのだろうか?
悪いニュースを公表せず、意見を述べることを恐れ、プレッシャーに適時に対処する能力を欠いている。これらが東芝の最近の危機に関するマスコミによる報告から読み取れる主要なテーマである。これらの新たな疑惑により上級経営者の中に回復していた自信は失われた。ウォールストリートジャーナルの社説によると、投資家は大挙して立ち去り、株価は下落し、東芝は上場廃止寸前である。
(その3に続く)
(初出:ACFE JAPAN 会報誌「FRAUD マガジン」57 号, 2017/8, https://www.acfe.jp/books/fraud-magazine/)