創業融資は斯業経験を重視する傾向にある?
元公庫職員VTuberのみつきです。
最近のTwitterでもらうDMを見ていると、新型コロナの影響が落ち着き始めたころを狙って創業融資の検討を始めている方が増えているように感じます。
もしかすると、会計事務所にやってくる相談も創業融資に関するものが増えているかもしれません。
本記事では、日本政策金融公庫の創業融資審査の傾向についてご紹介していきます。
斯業経験を重視?
結論を紹介すると、日本政策金融公庫の創業融資では“斯業経験”を重視する傾向にあるのです。
斯業経験とは「これから創業する事業に関連する業種に関する経験」のことを指します。
日本政策金融公庫ではよく用いられる言葉ですので、知らなかったという方はここで覚えておくようにしましょう。
斯業経験を重視する傾向にあると言える根拠は、日本政策金融公庫が公表した「2019年度新規開業実態調査」にあります。
これは日本政策金融公庫が実際に創業融資支援をした事業者を対象にアンケート調査を行ったもので、中身を見れば創業環境がどのように推移しているのかが分かります。
中身を見てみると、経営者の開業時の年齢は、40代が36.0%で最も多く、次いで30代が33.4%となっています。開業時の平均年齢は43.5歳と調査依頼最も高くなっていることが分かります。
(引用元:2019年度新規開業実態調査)
日本政策金融公庫の創業融資先のおよそ70%を30代・40代で占めています。
「30代・40代で創業される事業の経験を全く積んでいない」ことは考えにくいため、ここから日本政策金融公庫の創業融資審査において斯業経験を重視する傾向にあると言えるのです。
また「斯業経験あり」の割合は83.9%、斯業経験年数の平均は14.7年ということからも、斯業経験を重視する傾向にあることが窺えます。
(引用元:2019年度新規開業実態調査)
35歳未満は金利の優遇を受けられる「女性、若者/シニア起業家資金」という融資商品が公庫にあります。これが適応されない40代の割合が最も大きくなっていることから、日本政策金融公庫の融資姿勢に変化があることが分かります。
傾向を受けてすべきこと
斯業経験を重視する傾向にあると分かったところで、何を気をつけていくべきなのかについてご紹介していきます。
第一は「これから開業しようと考えている業種で経験を積む」です。
創業する事業に関連する勤務経験を積むことで、
・スキルや知識
・人脈
・マネジメント能力
など事業を軌道に乗せるために必要なものを習得できる、と日本政策金融公庫は考えています。
斯業経験が十分ではないなかでの創業融資は通過が難しくなると思っておき、相談が来た際には案内するのが良いでしょう。
最後に
今回は経営者の開業時の年代や管理職の経験を取り上げましたが、このほかにも現在の創業環境を把握するうえで知っておくべき内容が盛り込まれています。
創業支援をされている会計事務所にとっては「新規開業実態調査」の内容は貴重な情報だと思います。
毎年1回の頻度で公表されていますので、ぜひチェックしてみてください。