消費税の申告期限の延長の特例の創設
リエ「令和2年度税制改正で、消費税の申告期限の延長が認められるようになったと聞きましたが、それについて教えてください。」
黒田「わかりました。従来は法人税や法人事業税は、申請により、確定申告書の提出期限を延長することができる一方、消費税の確定申告書の提出期限の延長は認められていませんでした。したがって、法人税の申告期限の延長の特例の適用を受けていても、消費税の申告期限に合わせたスケジュールによらなければならなくなり、仮に消費税の申告後に決算が確定し、消費税額の変動が生じたときには修正申告や更正の請求を行う必要がありましたので、事務負担が生じていました。しかし、近年、時間外労働の上限規制の導入など働き方改革が進められる中、企業の事務負担を軽減することやビジネス環境を改善し、企業の生産性の向上・働き方改革の推進を図る観点から、法人税の申告期限の延長の特例の適用を受ける法人について、申請により、消費税の確定申告書の提出期限を1月延長する特例が創設されました。この特例は、令和3年3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間から適用されます。」
リエ「今回の消費税の申告期限の延長の特例によって、事務負担は軽減されそうですね。どのようにしたら適用を受けることができるのでしょうか。」
黒田「適用を受けることができる法人は、法人税の申告期限の延長の特例の適用を受けている法人です。その法人が消費税申告期限延長届出書を所轄税務署長に提出することにより適用を受けることができます。当該届出書を提出した場合、その提出日の属する事業年度以後の各事業年度の末日の属する課税期間から適用されます。したがって、消費税の課税期間が1年である3月決算法人の場合、3月31日までに当該届出書を提出することで、その課税期間から消費税の確定申告書の提出期限を延長することができます。」
リエ「なるほど。消費税の申告期限の延長の特例の適用を受ける場合に、注意すべきことはありますか。」
黒田「消費税の確定申告書の提出期限が延長された場合でも、課税期間の特例により課税期間を短縮している場合の事業年度末日の属する課税期間以外の課税期間については、消費税の申告書の提出期限は延長されません。また、消費税の納付ですが、申告期限が延長されても納付期限は延長されないことから、申告期限が延長された期間については利子税が発生しますので、法人税と同様に、見込み納付を行うことが必要となりそうです。」
リエ「わかりました。ありがとうございました。」