HOME コラム一覧 優秀な若手確保にインターンシップが人気 税理士からの引き合い急増 求人サイト、ベスト3職種に「会計」

優秀な若手確保にインターンシップが人気 税理士からの引き合い急増 求人サイト、ベスト3職種に「会計」

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 会計事務所での困りごとと言えば、何と言っても「人材確保」だろう。売り手市場が続く中で、人材採用コストが増加の一途をたどり、 雇用側は新たな採用チャネルの確保に必至だ。そうした中、将来を見据えた有能な人材確保の手法として、税理士の間で注目されているのが長期インターンシップ制度。長期インターンシップの求人サイトには、会計事務所からの引き合いが急増しているところもあり、運営企業も、「予想していなかった業種から人気が集まってきたのは意外」と言う。最新の人材採用をめぐる動きを追ってみた。

 一般の事業会社ではメジャーとなったインターンシップという手法が、会計業界内でも注目されはじめたのは最近の話。「日本の就活市場に変革をもたらす。長期インターンシップの普及を進め、入社後ミスマッチのない社会を創出する」を企業ミッションに、2015年に長期インターン求人サイト「ゼロワンインターン」を立ち上げたベンチャーの(株)そると(東京・品川区、代表取締役=大塚祐輔氏)では、120件を超す会計事務所関係の採用成功事例が集まっているという。
 世界的規模の外資系税理士法人をはじめ、少人数の会計事務所や開業したての税理士からの引き合いもあり、最近は利用税理士からの口コミも加わって、事務所規模を問わず幅広い層から人気を集めている。このほか、大手簿記学校からも会計業界志望者数の底上げの一環として熱い視線が注がれているという。
 「大卒の新卒社員の約3割が3年以内に離職」といわれる現状は、企業と人材のミスマッチにその要因があることが多いため、「大学生に長期インターンシップを通じて社会経験を積んでもらい、仕事のやりがいや企業を見極める目を就活前に養って欲しいと思った」(大塚氏)。そこで「長期に実務経験を積んでもらう」ために長期インターン情報サイト「ゼロワンインターン」を立ち上げ、入社後のミスマッチ防止を目標に事業化した。
 サイトは、飲食系などを除くホワイトカラー層に職種を絞っており、登録学生は長期インターン希望者のみで、全体で5万6千人を超え、首都圏では7割が「MARCH以上」の学力上位の大学が中心。将来のキャリアを決める前に、まず実務体験を積みたいという学生が、興味がある分野の一つとして会計分野を選ぶ傾向が強く、コンサルティング系やIT系に次ぐ人気の職種となっている。
 フィンテックの進展で、先進的な事務所はITを活用したコンサルティングなどに注力しはじめており、大学生サイドからは「お金回りのコンサルティング業務への興味と税理士のイメージが結び付き、人気を集めている」(同氏)という。
 その反面、就職先としての会計事務所となると、税理士の受験者数は年々減少し、不人気分野となっている現状は否めない。同社では、「税理士は、学生認知度が高いわりに、職業イメージが漠然としている。就活時には資格難易度が目についてしまい、仕事の魅力を知る前に、キャリアの最終選択肢から外れてしまうことが多い。こういった潜在的に興味を持たれている士業は、長期インターンとの相性が非常にいい。実際、簿記資格を持っている学生や、コンサルや金融志望の学生中心に会計事務所のインターンは人気を博している。インターン参加を通じて税理士を本格的に目指す学生も珍しくない」(大塚氏)。
 現在、インターンシップ市場はその9割が1dayなどの短期インターン。長期インターンシップは受け入れ企業がまだ少なく、局地的な「買い手市場」とされる。同社の場合、最低3ヶ月以上の受け入れを基本としているが、ほとんどの採用企業は受け入れ期限を設けていない。情報サイトへの掲載については、採用ニーズに合わせて「広告掲載型」と「成果報酬型」の2パターンがある。ちなみに、「成果報酬型」だと一人採用で9万8千円~。その後インターン生が新卒採用に繋がっても追加費用は一切発生しないという。一般的な採用サイトと同様に、同社が取材・作成した募集求人ページを見た応募学生との間でメッセージのやり取りなどでマッチングを図り、面接後、決まれば直接雇用となる。また、個別面談にも応じてくれる。
 採用側の事務所としても、通常のパート採用と長期インターシップとでは、「時給バランス」が逆転している点もメリット。首都圏でのパート採用時の時給相場は1,500円以上とされているが、インターン時給は1,100円程度で、コストパフォーマンスも悪くない。さらに採用率は極めて高く、中にはそのまま事務所での新卒採用となる例もあり、利用税理士からの口コミ紹介も後を絶たないという。ある小規模の税理士事務所では大学2年生・3年生を週3日ペースで雇い、事務業務を任せている。うち1名はそのまま新卒入社が決まった。「人材採用コストの安さも魅力だが、それ以上に優秀な若手人材が採用できたことが何より嬉しい。事務所で働く価値や魅力を感じてもらって、その結果、今後も将来有能な若手人材の確保に繋がればありがたい」(同氏)という。
 在学中に憧れの業界や業種の仕事を体験する「インターンシップ研修」は、将来の仕事選びに有効な「教育実習」。仕事内容が分からなければ、将来そこで働こうという気にもならないわけで、まずは会計事務所の仕事を知ってもらうことが先決となる。
 多くの会計事務所では、有能な職員確保に前向きだが、新卒よりも即戦力となるキャリアを積んだ人材が採用されやすい傾向にある。しかしながら、将来を見据え、中・長期ビジョンで人材戦略を考えていく事務所にとっては、このインターンシップは有用な手法と言えそうだ。

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 会計事務所での困りごとと言えば、何と言っても「人材確保」だろう。売り手市場が続く中で、人材採用コストが増加の一途をたどり、 雇用側は新たな採用チャネルの確保に必至だ。そうした中、将来を見据えた有能な人材確保の手法として、税理士の間で注目されているのが長期インターンシップ制度。長期インターンシップの求人サイトには、会計事務所からの引き合いが急増しているところもあり、運営企業も、「予想していなかった業種から人気が集まってきたのは意外」と言う。最新の人材採用をめぐる動きを追ってみた。 一般の事業会社ではメジャーとなったインターンシップという手法が、会計業界内でも注目されはじめたのは最近の話。「日本の就活市場に変革をもたらす。長期インターンシップの普及を進め、入社後ミスマッチのない社会を創出する」を企業ミッションに、2015年に長期インターン求人サイト「ゼロワンインターン」を立ち上げたベンチャーの(株)そると(東京・品川区、代表取締役=大塚祐輔氏)では、120件を超す会計事務所関係の採用成功事例が集まっているという。 世界的規模の外資系税理士法人をはじめ、少人数の会計事務所や開業したての税理士からの引き合いもあり、最近は利用税理士からの口コミも加わって、事務所規模を問わず幅広い層から人気を集めている。このほか、大手簿記学校からも会計業界志望者数の底上げの一環として熱い視線が注がれているという。 「大卒の新卒社員の約3割が3年以内に離職」といわれる現状は、企業と人材のミスマッチにその要因があることが多いため、「大学生に長期インターンシップを通じて社会経験を積んでもらい、仕事のやりがいや企業を見極める目を就活前に養って欲しいと思った」(大塚氏)。そこで「長期に実務経験を積んでもらう」ために長期インターン情報サイト「ゼロワンインターン」を立ち上げ、入社後のミスマッチ防止を目標に事業化した。 サイトは、飲食系などを除くホワイトカラー層に職種を絞っており、登録学生は長期インターン希望者のみで、全体で5万6千人を超え、首都圏では7割が「MARCH以上」の学力上位の大学が中心。将来のキャリアを決める前に、まず実務体験を積みたいという学生が、興味がある分野の一つとして会計分野を選ぶ傾向が強く、コンサルティング系やIT系に次ぐ人気の職種となっている。 フィンテックの進展で、先進的な事務所はITを活用したコンサルティングなどに注力しはじめており、大学生サイドからは「お金回りのコンサルティング業務への興味と税理士のイメージが結び付き、人気を集めている」(同氏)という。 その反面、就職先としての会計事務所となると、税理士の受験者数は年々減少し、不人気分野となっている現状は否めない。同社では、「税理士は、学生認知度が高いわりに、職業イメージが漠然としている。就活時には資格難易度が目についてしまい、仕事の魅力を知る前に、キャリアの最終選択肢から外れてしまうことが多い。こういった潜在的に興味を持たれている士業は、長期インターンとの相性が非常にいい。実際、簿記資格を持っている学生や、コンサルや金融志望の学生中心に会計事務所のインターンは人気を博している。インターン参加を通じて税理士を本格的に目指す学生も珍しくない」(大塚氏)。 現在、インターンシップ市場はその9割が1dayなどの短期インターン。長期インターンシップは受け入れ企業がまだ少なく、局地的な「買い手市場」とされる。同社の場合、最低3ヶ月以上の受け入れを基本としているが、ほとんどの採用企業は受け入れ期限を設けていない。情報サイトへの掲載については、採用ニーズに合わせて「広告掲載型」と「成果報酬型」の2パターンがある。ちなみに、「成果報酬型」だと一人採用で9万8千円~。その後インターン生が新卒採用に繋がっても追加費用は一切発生しないという。一般的な採用サイトと同様に、同社が取材・作成した募集求人ページを見た応募学生との間でメッセージのやり取りなどでマッチングを図り、面接後、決まれば直接雇用となる。また、個別面談にも応じてくれる。 採用側の事務所としても、通常のパート採用と長期インターシップとでは、「時給バランス」が逆転している点もメリット。首都圏でのパート採用時の時給相場は1,500円以上とされているが、インターン時給は1,100円程度で、コストパフォーマンスも悪くない。さらに採用率は極めて高く、中にはそのまま事務所での新卒採用となる例もあり、利用税理士からの口コミ紹介も後を絶たないという。ある小規模の税理士事務所では大学2年生・3年生を週3日ペースで雇い、事務業務を任せている。うち1名はそのまま新卒入社が決まった。「人材採用コストの安さも魅力だが、それ以上に優秀な若手人材が採用できたことが何より嬉しい。事務所で働く価値や魅力を感じてもらって、その結果、今後も将来有能な若手人材の確保に繋がればありがたい」(同氏)という。 在学中に憧れの業界や業種の仕事を体験する「インターンシップ研修」は、将来の仕事選びに有効な「教育実習」。仕事内容が分からなければ、将来そこで働こうという気にもならないわけで、まずは会計事務所の仕事を知ってもらうことが先決となる。 多くの会計事務所では、有能な職員確保に前向きだが、新卒よりも即戦力となるキャリアを積んだ人材が採用されやすい傾向にある。しかしながら、将来を見据え、中・長期ビジョンで人材戦略を考えていく事務所にとっては、このインターンシップは有用な手法と言えそうだ。
2020.03.24 15:00:32