退職時の手続き
今度従業員が退職するんだけど。
あゆみ:この前、従業員が家庭の事情で退職したいって言ってきて、一応認めたんだけど。従業員が退職するのが初めてだからどうするのかわからなくて。
ケン:あゆみ社長が独立前にお勤めのところを退職するときのことを思い出していただければスムーズに事が進むと思います。
退職金を支払う場合の税務手続き
あゆみ:退職するときの手続きとかある?
ケン:退職金は支払いますか?
あゆみ:退職金規定を作ってあるから、ちょっとだけど支払います。
ケン:「退職所得の受給に関する申告書」を退職する従業員に書いてもらい、退職金を支払う時までに会社に提出してもらってください。
あゆみ:提出されたものはどこかに提出するの?
ケン:会社で保管します。保管することにより税務署に提出されたものとみなされます。
その申告書の提出があった場合には、退職金から差し引かれる所得税と住民税を計算します。
あゆみ:所得税と住民税の計算方法ってお給料のそれとは違うの?
ケン:税率を掛けるまでの計算が違います。
課税退職所得金額=(退職給与の額-退職所得控除額)×1/2
この課税退職所得金額に退職所得の源泉徴収税額の速算表に当てはめて算出した額が所得税です。
あゆみ:退職所得控除はどうやって計算するの?
ケン:勤続年数により計算します。
勤続年数2年以内の場合には80万円、
勤続年数2年超20年まで1年あたり40万円
勤続年数20年超の場合には20年までの満額に1年あたり70万円の金額を加算します。
1年未満の端数がある場合には1年として換算します。
今回退職される方は勤続年数2年未満の方ですから、退職所得控除は80万円になります。
あゆみ:退職金はそれよりは少ないわ。
ケン:それでは所得税も住民税もかかりません。
もし、所得税と住民税が発生した場合には、退職金を支払った月の翌月10日までにお給料の所得税、住民税と同じ納付書で納付します。
「退職所得の源泉徴収票」を作成し、本人に交付してください。
住民税を特別徴収していた場合の手続き
あゆみ:退職する人の住民税を特別徴収して給料から差し引いているけど、その点はどうなるの?
ケン:住民税を特別徴収により納付している場合には、「給与支払報告特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」をその退職する方が居住する市区町村に送付します。
特別徴収していた住民税は、その方が再就職する場合にはその再就職先に送付すれば引き続き再就職先で特別徴収での納付ができますが、そうでない場合の取り扱いは退職した時期により異なります。
1月から4月までに退職した場合には、残りの住民税を一括徴収します。
5月に退職した場合には5月の給料から差し引きます。
6月から12月までに退職した場合には、原則一括徴収ですが、残りの分を普通徴収にすることも可能です。その旨を「給与支払報告特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」に記載してください。
社会保険の資格喪失手続き
あゆみ:それと、退職する人には健康保険証を渡してるわ。
ケン:年金事務所に「健康保険厚生年金保険被保険者資格喪失届」を退職した日の翌日から5日以内に提出します。
その際は本人から預かった健康保険証を添付します。なくした場合には「健康保険被保険者証回収不能・滅失届」を提出しなければなりません。
また、その方の今後の健康保険、年金については、ご自身で手続きしていただくことになりますので、
ご本人にお伝えください。
雇用保険の資格喪失手続き
あゆみ:退職する人が失業保険もらいたいって言ってるの。
ケン:ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を離職した日の翌々日から10日以内に提出します。
窓口に提出する際は、出勤簿、賃金台帳、雇用契約書、退職願を添付します。
失業保険は離職理由により、受給開始までの期間と支給日数が変わってきますので、離職理由でもめないように必ず本人と確認してください。
機密事項漏洩防止
あゆみ:そのほかに注意することある?
ケン:退職する人が社員である間に知りえた会社の機密事項が絶対に漏れないように注意してください。誓約書を書いてもらうことも一つの方法です。
あゆみ:わかったわ。雇うときも大変だけど、退職の時はもっと大変ね。