寡婦(寡夫)控除の改正
リエ「黒田さん、令和2年度の税制改正で寡婦(寡夫)控除が改正されるって聞きましたけど、どういった改正内容になるんでしょうか。」
黒田「まだ国会で審議中なので確定ではありませんが改正の背景を申しますと、従来の制度では(1)事実婚状態の配偶者がいても所得控除が適用されること、(2)一人でお子さんを育てている人でも婚姻歴がないと所得控除が適用されないこと、(3)寡婦については扶養親族や所得が一定金額以下の生計を一にしている子供等がいれば、どれだけ所得が高くても所得控除が適用されること、(4)寡夫については所得が少なくても所得控除の上限が27万円までとされていて、寡婦との公平性に欠けることといったことが問題視されていましたので、これを解消するために改正が行われました。これにより控除の名称も、所得控除額が27万円の『寡婦控除』と35万円の『ひとり親控除』というものになる予定です。」
リエ「なるほど、確かに従来制度については問題があるように感じますね。」
黒田「ということでこの改正が実現すると、令和2年分から控除を受けられなくなる人、控除が受けられるようになる人、控除額が増える人がでてきます。」
リエ「え、今年からですか。控除を受けられなくなる人にとっては迷惑な話ですね。」
黒田「そうですね。所得が500万円を超える人はどのような状況でも控除の適用が受けられなくなりますが、給与収入でいえば年収678万円位が分かれ目になります。それなりの高収入ではありますが、お子さんがいる場合は負担感が大きいかもしれませんね。」
リエ「所得の金額以外で控除の適用が受けられなくなるような人もいるのでしょうか。」
黒田「事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいる場合も控除の適用が受けられなくなりますね。」
リエ「事実上婚姻関係と同様の事情って、具体的にはどういう事情ですか。」
黒田「そのあたりの詳細はまだ確認できていません。審議中の法案では『事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者として財務省令で定めるものがいないこと』となっていますが、この財務省令はまだ公表されていないようです。」
リエ「従業員の年末調整計算を行う立場から言わせてもらうと、そういった事情をどうやって確認したらいいのかは悩んでしまいますね。」
黒田「それはわかりますが、そういった事情を会社側から聴取するというのは問題がありそうなので、やはりみなさんに制度の仕組みをきちんと理解してもらったうえで、あとは扶養控除申告書等による自己申告に基づいて年末調整計算を行うしかないと思います。詳細が明らかになれば、そのあたりの確認方法も何かしら提示される可能性もありますが。」
リエ「そうですよね。改正が確定したら、従業員に寡婦控除やひとり親控除の説明文を配付するか、説明会の場を設けるかして周知するようにします。」