国税関係手続の簡素化及び利便性の向上
リエ「個人の確定申告の時期になりましたね。今年は何か変わった点はありますか。」
黒田「そうですね~、以前にもお話したかと思いますが、平成31年度の税制改正にて国税関係手続きの簡素化が図られました。所得税の申告については、平成31年4月1日以後に提出するものから給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票や上場株式等の配当通知書、特定口座年間取引報告書など一定の書類の添付が不要とされました。また、贈与税の申告では、令和2年1月1日以後に提出する相続時精算課税の贈与税申告について、住民票の写しの添付が不要とされました。」
リエ「添付書類を準備する手間が軽減されれば、確定申告書の提出にあたって負担は減りますね。」
黒田「そうですね。その他にも平成30年分より開始されたスマートフォンでの所得税の確定申告について、対象者の範囲が拡大されました。平成30年分の所得税の確定申告では、会社員など年末調整済の給与所得者が医療費控除又は寄附金控除などの適用を受ける場合に限られていましたが、令和1年分からは2ヵ所以上の勤務先から給与収入がある人、年金収入や副業などの雑所得がある人及び生命保険の一時金など一時所得がある人も対象となり、所得控除についても社会保険料控除や生命保険料控除など全ての所得控除の適用を受けることができるようになりました。」
リエ「利用対象者の範囲が大きく広がりましたね。」
黒田「はい。また、スマートフォンでe-Taxを利用した電子申告を行う場合、マイナンバーカード方式又はID・パスワード方式のいずれかの方法により行います。ID・パスワード方式の場合には事前に税務署でIDとパスワードの登録手続きを行う必要がありますが、マイナンバーカード方式の場合にはマイナンバーカードとスマートフォンに専用アプリをダウンロードすればe-Taxにより電子申告を行うことができます。マイナンバーカード対応のスマートフォンについても、平成30年分の所得税の確定申告ではAndroid端末のみマイナンバーカードの電子認証を行うことができましたが、現在ではiPhoneでもマイナンバーカードの電子認証を行うことができるようになりました。」
リエ「なるほど。それならより多くの人がスマートフォンで電子申告を行うことができますね。」
黒田「近年、税務行政の効率化や納税者の利便性の向上を目的としてデジタル化が進められています。大法人については、令和2年4月1日以後開始事業年度から法人税・消費税の電子申告が義務化され、個人でも令和2年分の所得税の確定申告からe-Taxによる電子申告又は電子帳簿保存のいずれかを行わなければ青色申告特別控除額が65万円ではなく55万円とされるなど税制上のデメリットが生じます。したがって、今後はe-Taxによる電子申告や電子帳簿保存をする方がより増加すると思われます。」
リエ「そうですね。昨年ふるさと納税をしているので、今回の所得税の確定申告はスマートフォンでの電子申告にチャレンジしてみます。ありがとうございました。」