ソフトウエアの改修費用の取扱い
リエ「黒田さん、こんにちは。ちょっと質問してもいいですか?」
黒田「はい、りえちゃん。何かありましたか?」
リエ「今、会社で使用しているパソコンの中にOSがWindows7のパソコンが3台あったんです。2020年1月14日にWindows7のサポートが終了するので、先日Windows10にアップグレードしたんですけど、その時にかかった費用は修繕費として損金処理できますか? それとも資産計上になりますか?」
黒田「税務上のソフトウエアのバージョンアップ費用の処理方法は、法人税基本通達7-8-6の2で『法人が、その有するソフトウエアにつきプログラムの修正等を行った場合において、当該修正等が、プログラムの機能上の障害の除去、現状の効用の維持等に該当するときはその修正等に要した費用は修繕費に該当し、新たな機能の追加、機能の向上等に該当するときはその修正等に要した費用は資本的支出に該当することに留意する。(注)既に有しているソフトウエア、購入したパッケージソフトウエア等の仕様を大幅に変更して、新たなソフトウエアを製作するための費用は、原則として取得価額となることに留意する。』と示されています。」
リエ「Windows7のサポートが終了すると、セキュリティ更新プログラムの提供が停止してしまうので、今回のWindows10へのアップグレードは機能の向上等に該当するということになりますか?」
黒田「厳密に言えば、Windows7と比べたらWindows10の方が機能的には向上しているのでしょう。しかし、今回のアップグレードはWindows7のサポート終了に伴うもので、アップグレードをしなかった場合に何らかの障害が予想されるために行ったものですから、『機能上の障害の除去』ともいえます。それに実際の実用レベルで機能向上があったとはいえないため、『現状の効用の維持等』にも該当すると考えます。したがって今回のアップグレード費用は、全額修繕費として損金処理しても問題ないと判断します。」
リエ「では今回のアップグレード費用は修繕費で処理しますね。ソフトウエアの扱いは判断が難しいですね~。」
黒田「そうですね。ちなみに令和元年10月の消費税法改正により消費税及び地方消費税の税率が8%から10%へ引き上げられ、この税率引上げと同時に消費税の軽減税率制度が実施されたことにより、経理システムのプログラムの修正が必要となったケースがありましたが、このプログラム修正は、現在使用しているソフトウエアの効用を維持するために行われるものであるため、新たな機能の追加や機能の向上等には該当しないので、修正に要する費用は修繕費に該当する、と国税庁のHPで解説がでています。このように国税庁等から処理方法が公表されていれば判断は容易ですが、通常ソフトウエアの改修を行った場合は、その目的や改修内容等を明確にしたうえで、修繕費か資本的支出かを慎重に判断する必要があります。」
リエ「わかりました。またソフトウエアの修正があったら黒田さんに報告しますね。」