貸倒損失計上時の消費税の取扱い
リエ「黒田さん、こんにちは。貸倒れについて確認してもよろしいでしょうか。」
黒田「リエちゃん、こんにちは、大丈夫ですよ。」
リエ「先日、取引先から廃業の通知がありました。弁護士さんの名前で、公租公課や労働債務を優先するので一般債権者への配当は見込めない、と書いてありました。弊社は数ヵ月前から売掛金を持っている状態なのですが、これは貸倒処理することになりますよね。」
黒田「そうですね。債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかであると判断できるので、貸倒れとして損金経理をすることになります。担保物などがないことは確認していますか。」
リエ「はい、確認しました。それから、消費税の扱いについても教えてください。」
黒田「売掛金が貸倒れとなった時は、貸倒れとなった金額に対応する消費税額を、貸倒れの発生した課税期間の売上に対応する消費税から控除します。」
リエ「実は長いお付き合いがあったので、売掛金の回収がしばらくできていない状態でも取引を続けていたんです。回収できていない一番古い債権は半年くらい前のものなのですが、貸倒処理は一括で大丈夫ですか、それとも月ごと等に分けたほうがいいのでしょうか。」
黒田「令和元年9月以前に発生した売上債権があるならば、消費税率の改定前なので、分けて処理しましょう。」
リエ「なるほど、消費税が改定される前後では分けないといけないんですね。」
黒田「そうなります。もし、長年取引が停止したまま放置していたなどの場合で、平成26年3月以前の売掛金がある場合なども注意が必要ですね。」
リエ「通知には備品などの売却はこれからと書いてあったんですが、予期せぬ骨董品などが見つかって、一般債権者にも支払いができる、ということはないのでしょうか。」
黒田「可能性はあります。その場合、回収した貸倒債権に含まれる消費税額を、回収した課税期間の課税標準額に対応する消費税に加算することになります。この時、回収した金額を消費税込みであるものとして計算します。」
リエ「その場合はいつの消費税率で計算するんですか。」
黒田「貸倒れの時と同様、課税資産の譲渡等を行った時点、つまり売上債権等が発生した時の税率を用いることになります。」
リエ「そうなんですね。単純に納税額が増えるのが大変だな、と思っていましたが、こういった過去に遡った処理をする時は、コロコロと税率が変わっていると混乱しますね。」