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第3回「成果が上がる順番と体制」

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税理士事務所の生産性が低い最大の要因は、お客様ごと、担当者ごとに異なる業務のやり方が許されていることにあります。よって、生産性向上の最大の要諦は、

業務そのものを“事務所標準”に革新させる

ことにあるといっても過言ではありません。今回は、「標準化の順番」「お客様区分」の2つの観点から、好ましい事務所標準の作り方のポイントについて解説したいと思います。

(1)業務標準化の順番
 業務標準化にあたり、まず「どの業務から標準化を進めていくか」の判断が必要となります。その判断の一番のポイントは、

  標準化しやすい業務から進めていく

ことにあります。
 業務ごとの標準化の難易度を、
  □資料の同一性
  □資料のボリューム
  □資料の処理負担
などの観点から比較して、インプット・アウトプットごとに難しいものから「高」「中」「低」で区分しますと、おおむね次のように判定できるのではないでしょうか。

【標準化の難易度】
インプット 業務 アウトプット
月次業務
決算業務
確定申告業務
年末調整業務

この観点に立って標準化しやすい業務の順番を考えますと、

①年末調整業務 
②確定申告業務
③決算業務
④月次業務

となります。残念ながら、最も標準化したいと思われることが多い月次業務が、最も標準化することが難しく、最も“後回し”にすべき業務ということになります。
ここでいう“後回し”とは、「標準化に着手する順番を最後にする」ということではありません。月次業務は、最も多くの工数を要する業務ですから、できるだけ早く着手しなければならないのは確かです。しかし、その成果を得るのには多大な手間と時間が掛かるものです。職員の皆さんが成果を実感することができるようにまでには、2~3年はかかるものと思っておいてよいでしょう。そこで、

着手は急ぐが、成果実現のスピードには、少し余裕をもつことが望ましい

という意味を、“後回し”という言葉で表現しているのです。
標準化に多くの手間や時間を要する以上、急げば急ぐほど負担は増えます。その上、なかなか成果が見えてこなければ、現場はどんどん疲弊していきます。さらに、「自分たちには標準化は無理なのではないか」などと自信をなくしてしまっては、取り組みそのものが頓挫してしまうことになりかねません。「急がば回れ」の格言のごとく、「成果の実現は少し後回しにする」といった姿勢が必要なのです。
 一方、年末調整や確定申告などのいわゆる『季節業務』は比較的標準化しやすく、また成果も実感しやすいことから、

「成果を上げることができた!」結果から得られる「自分たちならできる!」という自信が、
標準化に向けた更なるチャレンジングな行動を生み出す

可能性が高いものです。よって標準化においては季節業務を優先しつつ、負荷を考慮しながら決算業務や月次業務の標準化も並行して進めていくことが好ましい取り組み姿勢であるといえます。

(2)お客様区分を見直す
お客様においても、最も重要なポイントは、

  標準化しやすいお客様から進めていく

ことはもちろんのこと、

  標準化の対象から外すお客様を明確にする

ことにあります。「無理なものは無理」との諦観が必要なのです。
これは経験則ですが、「標準化のしやすさ」からお客様を区分すると、おおむね次のような割合で、そのブレは±5%程度と考えておいてよいでしょう。

区分 内容 割合

「こんなお客様ばかりだったらいいのに」と感じられるような先で、事務所からのお願い事も受け入れてくださり、早ければ半年、遅くても1年あれば事務所標準を実現できると思える先。

30%
Aほどではないけれども、少し手間をかければ、概ね2年以内には事務所標準を実現できると思える先。 40%
標準化できないとはいわないけれども、かなりの手間がかかることを覚悟しなければならない先であり、最低でも3年程度はかかると思える先。 20%
標準化することは困難だと思える先 10%

「S」は、Specialの頭文字で、事務所標準の対象としない“特別な存在”であることを意味します。この「S」先については、「今の状態でも採算が取れているか」を検証する必要があります。業務を改善することが難しいのですから、時間単価が低いようであれば、単価交渉をするなり、契約をお断りするなりの対策を打つ必要があるでしょう。もちろん、それを承知で引き受けさせていただくという選択肢もあります。
ぜひ一度、この基準を参考にお客様の区分をしてみてください。そして、まずは「A」に区分されたお客様から改善を進めていってください。
「A」先であれば、早ければ半年、遅くとも1年以内には成果が出ます。「B」先を含めれば、2年で70%前後のお客様が標準化できるのです。それだけでも十分な成果と言えるのではないでしょうか。
「すべてのお客様を」と欲張らず、まずは全員が成果と達成感を得ながら標準化を進めていける順番を考えていただければと思います。

この記事の執筆者

株式会社名南経営コンサルティング

1966年開業の佐藤澄男税理士事務所(現・税理士法人名南経営)を祖業としたコンサルティングファーム「名南コンサルティングネットワーク」の中核企業。ネットワークでは、経営に関わるあらゆる専門家を抱え、中堅・中小企業を対象に、企業経営をワンストップでサポートして信用・実績を積み重ね、多くのクライアントをもつ。総スタッフ数569名(2019年7月1日現在)。同社は生産性向上を目的に開発したクラウドシステムMyKomonを使った会計事務所支援のほか、戦略的経営計画策定支援などの経営コンサルティング、経営者・後継者・経営幹部の育成指導、人事労務コンサルティングを得意分野とする。本コラムは全国の会計事務所向けコンサルティングに実績のある同社取締役の亀井英孝が執筆。

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2020.01.16 18:00:09