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交通事故の損害賠償金の取扱い

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リエ「黒田さん。ちょっといいですか?」

黒田「はい。何でしょう?」

リエ「実は私の知り合いの方が交通事故に遭ってしまいまして……。」

黒田「本当ですか!? お体は大丈夫でしたか?」

リエ「はい。幸いにも軽傷で済んだようです。それで加害者側から損害賠償金を受け取ったのですが、これは申告しなければならないのですか?」

黒田「交通事故などの被害者が治療費、慰謝料、損害賠償金などを受け取った場合、原則的には非課税となるので申告の必要はありません。ただし一部の場合は注意が必要です。」

リエ「どういった場合ですか?」

黒田「例えば、心身に加えられた損害について支払を受ける治療費等は医療費を補填する目的ですので、医療費控除の金額から差し引くことになります。しかし、その医療費を補填し、なお余りがあっても他の医療費から差し引く必要はありません。」

リエ「なるほど。保険金等を受け取った時と同じような取扱いになるのですね。ほかには何かありますか?」

黒田「事業所得を生ずる人が交通事故により損害賠償金を受け取った場合は注意が必要です。例えば、商品の配送中に事故で使い物にならなくなった商品について損害賠償金を受け取った場合は、棚卸資産の損害に対する賠償金ですので事業所得の収入になります。また、店舗に車両が飛び込んできて、その店舗の補修期間中に仮店舗を賃借する費用を補填する目的で受け取る損害賠償金なども事業所得の収入になります。」

リエ「たしかに、事業所得の計算上、必要経費に対応するような賠償金は収入に計上する必要がありそうですね。」

黒田「心身又は資産に加えられた損害につき受け取った見舞金というのは原則非課税なのですが、社会通念上ふさわしい金額のものに限られます。収入金額に代わる性質を持つものや役務の対価となる性質を持つものも非課税とはなりません。」

リエ「黒田さん。逆に個人事業主が交通事故の加害者となり、損害賠償金を支払った場合は必要経費になるのですか?」

黒田「まず、その事故が業務に関連のないものは必要経費になりません。そして業務には関連しているが事故原因に故意又は重大な過失があった場合も必要経費になりません。ですので、無免許運転、高速度運転、酒気帯び運転、信号無視等の事故による損害賠償金は特別な事情がない限りは必要経費になりません。」

リエ「使用人が起こした事故について事業主が賠償金を支払った場合はどうですか?」

黒田「使用人の行為に関し、事業主に故意又は重大な過失がない場合は、使用人に故意又は重大な過失があったかどうかは問わず、業務に関連するものは事業主の必要経費になります。また、業務に関連しないものでも、家族従業員以外の使用人で雇用主の立場上やむを得ず負担したものも必要経費になります。」

リエ「いずれにしても、事故には十分気を付けなければいけませんね。ありがとうございました。」

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「黒田さん。ちょっといいですか?」黒田「はい。何でしょう?」リエ「実は私の知り合いの方が交通事故に遭ってしまいまして……。」黒田「本当ですか!? お体は大丈夫でしたか?」リエ「はい。幸いにも軽傷で済んだようです。それで加害者側から損害賠償金を受け取ったのですが、これは申告しなければならないのですか?」黒田「交通事故などの被害者が治療費、慰謝料、損害賠償金などを受け取った場合、原則的には非課税となるので申告の必要はありません。ただし一部の場合は注意が必要です。」リエ「どういった場合ですか?」黒田「例えば、心身に加えられた損害について支払を受ける治療費等は医療費を補填する目的ですので、医療費控除の金額から差し引くことになります。しかし、その医療費を補填し、なお余りがあっても他の医療費から差し引く必要はありません。」リエ「なるほど。保険金等を受け取った時と同じような取扱いになるのですね。ほかには何かありますか?」黒田「事業所得を生ずる人が交通事故により損害賠償金を受け取った場合は注意が必要です。例えば、商品の配送中に事故で使い物にならなくなった商品について損害賠償金を受け取った場合は、棚卸資産の損害に対する賠償金ですので事業所得の収入になります。また、店舗に車両が飛び込んできて、その店舗の補修期間中に仮店舗を賃借する費用を補填する目的で受け取る損害賠償金なども事業所得の収入になります。」リエ「たしかに、事業所得の計算上、必要経費に対応するような賠償金は収入に計上する必要がありそうですね。」黒田「心身又は資産に加えられた損害につき受け取った見舞金というのは原則非課税なのですが、社会通念上ふさわしい金額のものに限られます。収入金額に代わる性質を持つものや役務の対価となる性質を持つものも非課税とはなりません。」リエ「黒田さん。逆に個人事業主が交通事故の加害者となり、損害賠償金を支払った場合は必要経費になるのですか?」黒田「まず、その事故が業務に関連のないものは必要経費になりません。そして業務には関連しているが事故原因に故意又は重大な過失があった場合も必要経費になりません。ですので、無免許運転、高速度運転、酒気帯び運転、信号無視等の事故による損害賠償金は特別な事情がない限りは必要経費になりません。」リエ「使用人が起こした事故について事業主が賠償金を支払った場合はどうですか?」黒田「使用人の行為に関し、事業主に故意又は重大な過失がない場合は、使用人に故意又は重大な過失があったかどうかは問わず、業務に関連するものは事業主の必要経費になります。また、業務に関連しないものでも、家族従業員以外の使用人で雇用主の立場上やむを得ず負担したものも必要経費になります。」リエ「いずれにしても、事故には十分気を付けなければいけませんね。ありがとうございました。」
2020.01.10 13:53:36