HOME コラム一覧 居住用賃貸建物の消費税還付スキーム封じ

居住用賃貸建物の消費税還付スキーム封じ

post_visual

リエ「黒田さん、令和2年度税制改正大綱(※1)が発表されましたね。」

黒田「そうですね。毎年どういった改正がされるか気になりますよね。」

リエ「今回の「税制改正大綱をHP等でも見ていたんですけど、その中で、居住用賃貸建物の消費税還付スキーム封じという記事が目に入ったんですが、これはどのような改正内容なんですか。」

黒田「それは、居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の見直しのことですね。」

リエ「あ、それです。」

黒田「そもそも、住宅として貸付けを行う建物を取得した場合には、そこから得る家賃収入(非課税売上)に対応する仕入れになるため、その建物の取得に係る消費税については仕入税額控除の適用を受けることができませんよね。しかし、本業とは関係のない金地金など投資商品の売買(課税売上)を繰り返し行い、課税売上割合を引き上げることにより、現状ではその建物の取得に係る消費税の全部又は一部について仕入税額控除の適用を受けることが可能となっています。」

リエ「なるほど~。意図的に金地金の売買等の課税売上を増やすことで消費税の還付が受けられてしまうんですね。」

黒田「そうですね。それでこれを是正するため、今回の居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の見直しということになりましたが、改正内容について簡単に説明します。この改正により、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産(※2)に該当するもの(以下、「居住用賃貸建物」という)の課税仕入れについては、仕入税額控除の適用を認めないこととされました。なお、居住用賃貸建物のうち、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分については仕入税額控除の対象とすることができます。」

リエ「仕入税額控除が制限されたってことですね。」

黒田「ただ、仕入税額控除の加算調整ということで、仕入税額控除の適用が認められなかった居住用賃貸建物について、その仕入れの日から同日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に住宅の貸付け以外の貸付けや譲渡をした場合には、それまでの居住用賃貸建物の貸付け及び譲渡の対価の額を基礎として計算した額を、3年を経過する日の属する課税期間又は譲渡をした日の属する課税期間の仕入税額控除に加算することができます。」

リエ「店舗として貸付けをしたり、売却などした場合には、3年間の実績に応じた仕入税額控除を受けられるわけですね。」

黒田「そうなりますね。適用時期については令和2年10月1日以後に仕入れを行った居住用賃貸建物からになります。ただし、同日以後の仕入れであっても、令和2年3月31日までに締結した契約に基づく仕入れについては適用しないこととされています。」

リエ「わかりました。黒田さん、ありがとうございます。」

(※1)内容は国会通過で正式決定がされるまでは変更されることがあります。
(※2)高額特定資産とは、一取引単位につき支払対価の額が税抜き1000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。 

監修

profile_photo

税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

この記事のカテゴリ

この記事のシリーズ

OLリエちゃんの経理奮闘記

記事の一覧を見る

関連リンク

飲食店の「容器保証金」の経理処理

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


コラム
/column/2020/img/thumbnail/img_07_s.jpg
リエ「黒田さん、令和2年度税制改正大綱(※1)が発表されましたね。」黒田「そうですね。毎年どういった改正がされるか気になりますよね。」リエ「今回の「税制改正大綱をHP等でも見ていたんですけど、その中で、居住用賃貸建物の消費税還付スキーム封じという記事が目に入ったんですが、これはどのような改正内容なんですか。」黒田「それは、居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の見直しのことですね。」リエ「あ、それです。」黒田「そもそも、住宅として貸付けを行う建物を取得した場合には、そこから得る家賃収入(非課税売上)に対応する仕入れになるため、その建物の取得に係る消費税については仕入税額控除の適用を受けることができませんよね。しかし、本業とは関係のない金地金など投資商品の売買(課税売上)を繰り返し行い、課税売上割合を引き上げることにより、現状ではその建物の取得に係る消費税の全部又は一部について仕入税額控除の適用を受けることが可能となっています。」リエ「なるほど~。意図的に金地金の売買等の課税売上を増やすことで消費税の還付が受けられてしまうんですね。」黒田「そうですね。それでこれを是正するため、今回の居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の見直しということになりましたが、改正内容について簡単に説明します。この改正により、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産(※2)に該当するもの(以下、「居住用賃貸建物」という)の課税仕入れについては、仕入税額控除の適用を認めないこととされました。なお、居住用賃貸建物のうち、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分については仕入税額控除の対象とすることができます。」リエ「仕入税額控除が制限されたってことですね。」黒田「ただ、仕入税額控除の加算調整ということで、仕入税額控除の適用が認められなかった居住用賃貸建物について、その仕入れの日から同日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に住宅の貸付け以外の貸付けや譲渡をした場合には、それまでの居住用賃貸建物の貸付け及び譲渡の対価の額を基礎として計算した額を、3年を経過する日の属する課税期間又は譲渡をした日の属する課税期間の仕入税額控除に加算することができます。」リエ「店舗として貸付けをしたり、売却などした場合には、3年間の実績に応じた仕入税額控除を受けられるわけですね。」黒田「そうなりますね。適用時期については令和2年10月1日以後に仕入れを行った居住用賃貸建物からになります。ただし、同日以後の仕入れであっても、令和2年3月31日までに締結した契約に基づく仕入れについては適用しないこととされています。」リエ「わかりました。黒田さん、ありがとうございます。」(※1)内容は国会通過で正式決定がされるまでは変更されることがあります。(※2)高額特定資産とは、一取引単位につき支払対価の額が税抜き1000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。 
2020.01.14 10:50:54