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第2回 補助金・助成金申請の際の注意点とは?

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補助金・助成金申請にはもちろん注意しなければならない点がいくつかあります。これを守らなければ、採択されない場合、または採択されても後で不正受給と見做される場合があります。そこで今回は補助金・助成金申請の際に注意すべき点について解説します。

(1) 補助金申請で注意すべき点

 補助金の申請で押さえておくべきことは以下7点が挙げられます。(1)切り口に独自性があって目新しいこと、(2)売上や収益の見込みが立っていること、(3)公表されている審査基準に対して網羅的に対応している内容であること、(4)会社の理念、目標が反映された事業計画であること、(5)全社的な課題やマーケティング上の課題、技術の課題が明確であり、それに対する補助事業を行うことで具体的にどう解決できるかを詳細に書かれていること、(6)自社、競合、顧客の視点が明確になっていること、(7)社会的な意義が感じられることです。特に、 (1)独自性と(2)売上の見込みに説得力がないと採択されるのは難しくなります。
 中華料理店がイタリア料理を始めるというのは新規事業ではありますが、誰でもできそうであり、切り口に目新しさがありません。しかし、「地元の特産品であるレモンをパスタに練り込んだ新商品を開発するので、そのための機械を購入したい」という切り口ならば、地元産業の宣伝にもつながり、目新しくなります。補助金の申請ではこうした独自の切り口を探すことがまずは重要になります。
 また、売上や収益の見込みに説得力があることも必要です。現状の財務内容や収益力が問われます。もちろん法人税をしっかり収めており、金融機関からの借入も容易な企業ならば問題ありません。しかし、ずっと債務超過に陥っている企業の場合は新規事業より本業の立て直しが優先だと判断されて申請が通りにくくなります。
 加えて、補助金の支給は補助事業が終わってから数カ月先になるので、その間のつなぎ資金の目途が立っているかについても明確に答えられなくてはなりません。債務超過で金融機関からの借入が難しい場合は、なぜ現業で債務超過に陥っているのか、一時的なものなのかどうか、改善余地があるのかなど、詳細に書いていく必要があります。
 次に、補助金を不正受給した場合の罰則について説明します。
 補助金に関する法律として、補助金適正化法(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)があります。主に違反と見做される行為として、「補助対象期間以外で発注してしまったため、発注日を改ざんする」、「補助対象の物品について、実際より高い金額で領収書を切ってもらい、より多く補助金をせしめようとする」などがあります。
 補助金の不正受給が発覚した場合、受け取る予定または受け取った補助金を全額返還しなければなりません。補助金をすべて返還するまでは、返還していない金額の10.95%(年間)が加算され続けます。補助金の不正受給が発覚したら、すぐにでも全額返還しましょう。
 また、経済産業省のホームページに「補助金交付等停止措置企業」として企業名が公表される場合もあります。その企業の社会的信用は失墜し、会社が倒産するどころか、家族や従業員にも多大な迷惑をかけることになります。
 そして、悪質な場合は詐欺罪で告訴される場合もあります。つまり国に対する詐欺罪です。詐欺罪は重罪であり、実刑となる可能性が高いです。有罪になると10年以下の懲役が科されます。

(2) 助成金申請で注意すべき点

 基本的に助成金は申請さえすれば、ほぼ確実に採択されます。しかし、労働法を守っていない場合、助成金は支給されません。
 「残業しているのに残業代を出していない」「最低賃金を下回っている」などの労働法違反が発覚した場合、たとえ意図的でないにしろ、助成金は支給されません。労働全般を管轄している厚生労働省が、労働に関する最低限のルールも守れない企業に助成金を出さないのは当然のことです。
 また、助成金の不正受給についても注意してください。実際に問題となっているものとしては、「実施しなかった社員研修をあたかも実施したかのように偽る」、「無期雇用の契約書を有期雇用に勝手に書き換える」「実際には雇っていないのに雇っていることにする」、「現在の従業員に一度辞めてもらいハローワーク経由で求職させる」などがあります。
 実際に不正受給が発覚した場合、以下の罰則を受ける可能性があります。第一に、これまで支払われた助成金を全額返還することになります。また、少なくとも5年間は助成金の申請ができなくなります。第二に、各地の労働局のホームページに不正受給の業者名が公表され、社会的信頼が失墜し、本業に影響が出ることになります。そして第三に、補助金と同じく詐欺罪で告訴される恐れもあります。
意図しなくとも、助成金の規定に沿わなかったために不正受給と判断される恐れもあります。申請に際しては、きちんと規定にあっているかを再確認して申請してください。
 しかし、「自社が労働法に適合しているか?」「不正受給に該当しないか?」をチェックするには広範な知識と煩雑な手続きが求められます。日本の労働に関する法律は、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法の労働三法以外にも、労働契約法、労働安全衛生法、最低賃金法など非常に多岐に渡ります。また、賃金台帳や就業規則、対象労働者の雇用契約書など提出する書類も多く、それらに不備がないか余さず確認する必要もあります。
 そのため、労務関係の専門家である社会保険労務士に自社が労働法に違反していないかを
チェックしてもらうことをおすすめします。社会保険労務士は労働法をはじめとした労務関係の知識を持つプロフェッショナルですので、自社のみでチェックするよりは遥かに安全と言えます。

 助成金・補助金はあくまで職場改善や設備投資のために使うものです。その本来の趣旨に沿ってきちんと申請を行えば採択されやすくなります。
 一方、資金繰りや収入増など本来の趣旨から外れた目的で申請すると、採択されないどころか、不正受給する危険性もあります。助成金・補助金の不正受給によって得られる利益と、不正受給が発覚した際のリスクが釣り合わないのは誰の目から見ても明らかです。
正しい法律・正しいルールに則って、助成金・補助金を申請・受給することを心がけましょう。

補助金・助成金申請の注意点

補助金

項目

助成金

事業の独自性と売り上げの見込み
をしっかり説明できること

採択される
ために必要なこと         

労働法に違反しないこと      

・発注日の改ざん
・領収書の偽造

不正受給の例

・未実施の社員研修をあたかも
 実施したかのように偽る
・実際には雇っていないのに
 雇っていることにする

・補助金を全額返還
・経済産業省のHPに公表
・詐欺罪で告訴

不正受給した場合

・助成金を全額返還
・5年間申請できなくなる。
・労働局のHPに公表
・詐欺罪で告訴

執筆者情報

株式会社ナビット

わたしたち株式会社ナビットは補助金・助成金情報検索サイト「助成金なう」を運営しております。
「助成金なう」では官公庁や地方自治体、財団・協会で公示されている全国各地の補助金・助成金を検索できます。また、顧客にとって最適な補助金・助成金のご提案、補助金・助成金に関する疑問をわかりやすく解説するサービスなども行っております。
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2019.12.25 16:50:47