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創業・融資支援に注力し、経営者の味方であり続ける下川・木地税理士法人

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下川・木地税理士法人/木地健介公認会計士事務所 代表 税理士・公認会計士 木地健介

下川・木地税理士法人(東京都中央区)は、日本橋に拠点を構える会計事務所である。代表税理士の木地健介氏(写真)は、大学在学中に公認会計士試験に合格し、監査法人勤務を経て、34歳で個人事務所を開業した。以来、「経営者の味方であり続ける」ことを信念として掲げ、中小企業経営者の支援に取り組んでいる。木地氏は中小企業の創業・融資支援に強く、他の若手会計人と連携して業界全体の発展にも精力的に取り組んでいる。今回の取材では、事務所成長戦略や最新テクノロジーへの対応、会計人としての抱負などについて、同氏にお話を伺った。(写真撮影:市川法子)

大学在学中に公認会計士試験に合格し、34歳で開業

―― 本日は、下川・木地税理士法人/木地健介公認会計士事務所の代表である木地健介先生にお話を伺います。
 木地先生には、弊誌2017年11月号の「若手会計人に訊く」にもご登場いただきました。34歳という若さで独立・開業された木地先生は、「経営者の味方であり続ける」という信念のもと、中小企業の創業支援や創業融資に力を入れています。
 業界全体の活性化を図るべく、他の会計人と積極的に交流し、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といった最新のテクノロジーも率先して活用されています。
 今回の取材では、こうした数々の取り組みについて、詳しく伺いたいと思います。
 まずは、木地先生のこれまでの歩みについて、ご紹介いただけますか。
木地 私が最初に公認会計士を目指そうと思ったのは、大学1年生のときです。高校生のころから経済や経営の分野に興味があり、大学は経済学部に進みました。
 大学が資格取得に力を入れていたこともあり、資格があれば独立して仕事をしていくことができるし、人生が大きく変わるのではないかと考え、在学中から受験勉強を始めました。そして、4年生のときに公認会計士試験に合格しました。
―― 大学卒業後は監査法人トーマツに入所されたそうですね。
木地 はい。10年間勤めました。
 当時の主要な業務は会計監査でした。上場企業の決算内容に間違いがないか、チェックする仕事です。
 投資家保護という観点からは、もちろん重要な役目ではありますが、企業にとって生産性のある仕事とはいえず、お客様に感謝される機会はあまりありませんでした。私自身、お客様の会社の役に立っているという実感はさほど得られませんでした。
 これに対し、監査の仕事とは別に、お客様から依頼されてコンサルティング業務を行うこともありました。会社の売上を増やしたり、経営体質を改善したりするための支援をすると、お客様にとても喜んでいただき、感謝もされました。
 このような、お客様に喜ばれる仕事をしたいという思いは年を追うごとに強くなり、平成27年に、日本橋人形町で木地健介公認会計士事務所を開業しました。
―― 木地先生は、下川芳史先生とともに、下川・木地税理士法人の代表を務めています。こちらの事務所は、どのような経緯で設立されたのですか。
木地 下川・木地税理士法人は、妻の父である下川先生と一緒に、平成29年に設立しました。妻も公認会計士で、トーマツで働いていたときに出会いました。
 義父が経営していた会計事務所と一緒になったのが4年前の7月で、2年前の1月に税理士法人化して現在の名称となっています。
 ちなみに、義父の父も日本橋の税務署OBで、退職後に同じ日本橋で会計事務所を開業したそうです。
―― 長年にわたり、日本橋で会計事務所を営み続けているわけですね。
木地 ええ。義父の独立開業から数えただけでも、30年以上になるそうです。
―― 現在の職員数はどのくらいですか。
木地 義父と私、他のスタッフを加えて、総勢で12名になります。
 ちなみに現在では、公認会計士の業務は、平成29年9月に設立した京浜監査法人で行っています。
 こちらは平成29年4月に施行された改正社会福祉法と改正医療法により、社会福祉法人や医療法人の監査範囲が拡大することに対応するため、義父と私の事務所をはじめ、6つの公認会計士事務所が集まって立ち上げた監査法人です。

会計人としての思いを表した4つのミッションと5つのバリュー

―― 木地先生の事務所経営に対する思いを教えていただけますか。
木地 私はいろいろな思いを持って業務に取り組んでいますが、口で言うだけではお客様やスタッフになかなか伝わらないところがあります。
 そこで、事務所の採用サイトの開設をきっかけに、自分の思いをメッセージという形で表しました。
 具体的には、私たちの存在意義を4つのミッションにまとめ、価値観および行動の判断基準として「信頼」「安心」「夢の実現」「寄り添う」「感謝」の5つのバリューを掲げています。
 あわせて、私がスタッフに求める人物像も5つ(素直、話すことが好き、臨機応変に行動できる、学ぶ意欲と向上心がある、責任感がある)挙げています。これらのメッセージを読んで共感してくれる方が応募し、一緒に働いてくれれば理想的です。
 その一方で、入所を考えてくださる方だけでなく、今働いているスタッフや、お客様にも浸透してほしいという思いでこの文章を書きました。

顧客本位の理念を受け継ぎながら成長を持続

―― 経営者として事務所をマネジメントするなかで、意識していることはありますか。
木地 当事務所を運営していくにあたって、中心に据えている考え方は、冒頭でも触れていただいた「経営者の味方であり続ける」ことです。
 事務所のスタッフがまず考えるべきなのは、経営者のために仕事をすることです。言い換えれば、顧客第一、顧客本位ということですね。
―― それが仕事の軸となるわけですね。
木地 仰るとおりです。
 「経営者の味方であり続ける」ことを常に意識していれば、この業務はどう進めるべきか、会計人としてこの場でなすべきことは何かを考える際に、適切な判断ができるようになります。
―― この考え方は、お義父様の下川先生から受け継がれたものでしょうか。
木地 そうですね。私自身、義父から学んだことがたくさんあります。義父と同じように、私もスタッフの手本となることを心掛けています。
―― 他に、経営者として木地先生が重視していることはありますか。
木地 昨今は人手不足といわれていますが、それは当事務所も無関係ではありません。しかし、人手が足りないからといって新規開拓を控えるのではなく、少しずつでもお客様を増やし、売上を拡大しています。
 その理由は、「顧問先が少しくらい減っても安定を図ろう」などと考えていると、その気持ちが自分たちの仕事ぶりにも表れ、顧問先から「この事務所は拡大する気がないんだな」とみなされてしまうからです。
―― 会計事務所は、顧問先企業に率先して成長を目指すべきだということですね。
木地 はい。経営者の皆さんも、繁盛していない会計事務所に顧問を依頼したくはないでしょう。
 成長と拡大を持続することで、事務所のブランド力も上がっていくはずです。ブランド力が高まれば新規開拓もしやすくなるという好循環につながります。

テクノロジーの進化はチャンスにもなる

―― 記帳代行などの業務は、AIやRPAなどに取って代わられるといわれています。前回の取材で木地先生は、機械でできることは機械に任せ、それで生まれた時間を機械ができないことに使えばよいと仰っていました。
 テクノロジーの進化は脅威ではなくチャンスとお考えでしょうか。
木地 はい。
 AIの発達には目覚ましいものがありますが、今のところ、人の感情を理解して判断することは難しく、当面は人が担う領域となるでしょう。
 その一方で、AIは単純作業を得意としていますから、人間がそのような作業から解放され、人間にしかできない仕事に割く時間が増えるのは歓迎すべきことです。
 メディアは、人間の仕事が奪われるといった負の面を強調しすぎている印象があります。私は、「これから社会はどう変わっていくのだろう」と期待する気持ちのほうが強く、変化が楽しみです。
 会計事務所の業務を見ても、AI機能を備えたクラウド会計ソフトは、操作していて楽しく、「また機能が追加された」「こんなことまでできるのか」といった発見や驚きにあふれています。当事務所でも、積極的に導入を進めているところです。
―― 木地先生はAIやRPAなどの先進技術の導入が楽しみだと仰いましたが、会計業界全体の将来像についてはどのようにお考えですか。
木地 会計業界は、資格で業務が制限されていたり、参入規制があったりして、どちらかというと閉鎖的なイメージがあったと思います。
 しかし、ネットとスマホが普及し、検索すればさまざまな情報が得られる現在、一般の方々との情報格差という観点では、垣根がどんどん低くなっています。
 そう考えると、記帳代行と申告だけで食べていけた従来のビジネスモデルが崩れていくのは必然の流れだと感じます。
 税理士だから税務・会計だけすればよいと、自らの業務を制限していると、事務所の将来性を狭めてしまうのではないでしょうか。
 税務・会計の業務は、AIやRPAでどんどん自動化されていくと思います。基本的に、法律や会計基準に則って処理していくだけなので、AIが普及しやすい分野だといえます。
 会計事務所が経営者に提供できるサービスは、税務・会計だけではないはずです。広い視野を持ち、顧客本位で考える必要があります。さまざまな分野にアンテナを張って、税務・会計以外の情報も収集することが大事だと思います。

創業支援と融資支援に強みを持つ

―― ここからは、貴社の強みや特徴について伺いたいと思います。
木地 「経営者の味方であり続ける」ために、当事務所が最も力を入れているのは、これから会社を創業・開業する経営者の支援です。
 起業直後は経営者としての経験が浅く、情報も不足していることがよくありますが、そのような状態ではスタートから出遅れてしまいます。最初の1~2年でスタートダッシュにつまずくと、遅れを取り戻すのは容易ではありません。
―― 創業・開業ではスタートダッシュが重要になるということですね。
木地 そのとおりです。スタートに失敗したために、結局廃業してしまったケースをいくつも見ています。もっと早く、もしくは会社を設立する前に相談してくれればと思ったこともしばしばです。
 起業したばかりの経営者の一番の悩みは資金繰りですが、当事務所では融資の支援はもちろん、登記や各種の届け出など、会社設立時に必要な手続きについてもサポートします。
 その後も、孤独な存在といわれる経営者の相談相手として、さまざまな悩み事を解決していきます。
―― まさに「経営者の味方であり続ける」わけですね。
木地 仰るとおりです。起業家の皆さんには、私たち専門家が悩みを解消することで、起業や経営の楽しさ、喜びを感じていただきたいという思いがあります。

整骨院・接骨院への業種特化

―― 最近は業種特化の取り組みも進めているそうですね。
木地 はい。創業・開業のなかでも、特に治療院と呼ばれる分野に力を入れていきます。具体的には、整骨院や接骨院になります。
―― 治療院は木地先生が開拓された分野なのでしょうか。
木地 ええ。何か専門の業界を持ちたいと思い、興味を持ったのがこの分野です。飲食業も検討したのですが、他の人とは違う形で貢献できることはないかと思い決めました。興味のある分野だからこそ頑張れるという考えもありました。
―― この分野に興味を持ったきっかけがあれば教えていただけますか。
木地 私自身、毎月のように治療院に足を運んでいるのですが、治療を受けながら施術者と話していると、経営の専門家のアドバイスを受けていないと感じることが多々あります。
 実際に、最近は整骨院の廃業率が上がっています。しかし、高齢化が進む今の日本には、治療院のニーズは根強くあります。専門家が適切な指導をすることで、経営を改善し、廃業を防ぎ、この業界に貢献する余地があるのではないかと考えました。
 治療院は、人口減少時代においても、将来性のある業界だと私は考えています。

顧問先の支援には経営者の視点が必須

―― 最後に、今後どのように事務所を経営していくのか伺います。
木地 最近、スタッフの採用面接で20代後半から30代前半の応募者と話すことがあります。その人たちの多くは、「資格を取りたい」と言います。
 しかし、資格を取った後どうしたいかを話す人は、あまりいません。資格を取ったら満足してしまう人が多いのではないでしょうか。
 資格はあくまでも出発点であり、その業界に入るためのパスポートのような位置付けです。資格を取った後に何がしたいのか、極論すればその資格を取る必要が本当にあるのか、十分に考えるべきだと思います。
―― 貴社の場合、「経営者の味方であり続ける」という理念を共有できる人と働きたいということでしょうか。
木地 仰るとおりです。
―― 会計事務所に入った後は、どのような心構えで仕事をしていけばよいのでしょうか。
木地 まず、仕事は楽しいものだという意識を持ってほしいですね。仕事は楽しくないと思われがちですが、そのようなことは全くありません。
 例えば、会計事務所で働く楽しさのなかで最も大きいのは、顧問先企業の社長と話せることでしょう。普通の人は、会社を経営している人と話す機会はほとんどありません。
 経営者の話は聴いているだけで面白く、興味深いものです。
 特に、経営者として成功している人は、従業員や取引先を引き付ける魅力があったり、売れる商品を開発する力があったり、商品をたくさん販売する力があったりするという、特別な資質を持っています。
 そのような経営者とお付き合いができれば、いろいろなことが学べて仕事の役に立つのはもちろん、自分自身の成長にもつながると思います。
―― 会計人は、そのような経営者に対等の立場で提案や助言ができます。
木地 ええ。私はスタッフに、税務調査で問題にならないことと、解約にならないことの2つさえ守れば、何をしてもいいと言っています。
 法律を守るのは最低条件です。例えば、お客様の会社の資金繰りをよくするために脱税を指南するのはNGです。違法行為をすれば、後で税務調査が入って問題になるだけで、意味がありません。
 また、常に経営者目線を失わないことも大切です。経営者のことを考えずに仕事をしていれば、当然ながら解約されてしまいます。
 最近はもうひとつ、スピードを重視するようにと言っています。例えば、メールや電話で問い合わせが来たらすぐに回答します。時間が経つほど情報の質は落ちていくので、レスポンスの早さと密なコミュニケーションを大事にしています。
―― 「経営者の味方であり続ける」とは、自分がその会社の経営陣のように考え、行動することでもあるといえそうですね。
木地 そのとおりです。私は基本的に、顧問先の会社は自分の会社という気持ちで対応していますし、売上が伸びれば自分のことのようにうれしくなります。
―― 本日は貴重なお話をありがとうございました。貴社のますますのご発展を祈念しています。

執筆者情報

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株式会社実務経営サービス

株式会社実務経営サービスは、会計事務所の成長や発展をご支援している会社です。税理士の先生方を対象とする勉強会「実務経営研究会」の運営、各種セミナー・カンファレンスの企画、会計事務所経営専門誌「月刊実務経営ニュース」の発行を事業の柱としています。おかげさまで2018年に、創業20周年を迎えることができました。

「月刊実務経営ニュース」は、成長の著しい会計事務所、優れた顧問先支援を実践している税理士を取材・紹介し、会計業界の発展に貢献することを目指しています。おもな読者は全国の会計事務所の所長や職員の皆様で、全国に約3万件あるといわれている会計事務所の約1割にご購読いただいています。最新号を無償で読むことができる「Web版実務経営ニュース」もありますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

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下川・木地税理士法人/木地健介公認会計士事務所 代表 税理士・公認会計士 木地健介下川・木地税理士法人(東京都中央区)は、日本橋に拠点を構える会計事務所である。代表税理士の木地健介氏(写真)は、大学在学中に公認会計士試験に合格し、監査法人勤務を経て、34歳で個人事務所を開業した。以来、「経営者の味方であり続ける」ことを信念として掲げ、中小企業経営者の支援に取り組んでいる。木地氏は中小企業の創業・融資支援に強く、他の若手会計人と連携して業界全体の発展にも精力的に取り組んでいる。今回の取材では、事務所成長戦略や最新テクノロジーへの対応、会計人としての抱負などについて、同氏にお話を伺った。(写真撮影:市川法子)
2020.01.10 15:18:55