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第2回「税理士事務所における生産性向上のポイント」

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 前回解説した通り、税理士事務所においては『一人1時間あたり売上高』が最も主要な生産性指標です。しかし、この指標では、事務所の現状を客観的に把握することはできても、

 「これだけの売上高しかないのに、なぜこんなに労働時間が長いのか」
 「こんなに働いているのに、なぜこれだけの売上高しかないのか」

のいずれに問題があるのかがわかりません。そこで、

  ①総労働時間の内、有効時間の割合がどれくらいあるか? (稼働率)
  ②有効時間で、どれくらい売上高を上げているか?(時間単価)
    ※有効時間:売上高を上げるために直接的に関わっている時間

 という全く異なる2つの視点で分解して考えます。特に税理士事務所においては、②に着目することが大切です。すなわち、

  どのお客様に、どれだけの人と時間が投入されているか

に着目し、

  お客様に提供している業務一つひとつの投入時間の妥当性

を時間単価によって検証するのです。

 その時間単価を把握するためには、以下の要件を満たしたグループウェアの活用をおすすめします。

□分析のためにわざわざデータを登録するのではなく、スケジュールや日報などの目的で登録したものが自動で分析用データとして生成され、手間なく活用することができる。
□そのデータが、業務分類別・顧客別・担当者別に自動的に集計され、複数の視点から分析することができる。
□原因の追究がスムーズに行うことができるよう、使われた時間の明細を掘り下げて見ていくことができる。

 これらの機能があることによって、余分な手間を掛けずに時間単価を把握できます。

 お客様ごとの時間単価を算出できたら、次の視点に基づき、具体的な改善を進めていきます。

①「高過ぎる」のではないかと疑ってみる。

 時間単価が「高過ぎる」ことが問題である場合があります。手間を掛けずに高い売上高を上げることは、効率的には好ましいのですが、それがもし“手抜き”の結果であるとすれば大問題です。その場合、報酬が高額な先ほど解約のリスクが高いものです。時間単価は高いに越したことはありませんが、適正な業務が行われているうえでの結果でなければならないことを忘れてはなりません。

②「低過ぎる」は改善推移を評価する

 「低過ぎる」場合、現担当者の能力や資質、ないしは努力不足によるものであれば、担当者の指導をしていくことになります。しかし実際には、「前担当者から引き継いだ業務を正しいものと信じて続けている」「不合理であるとわかっていても、お客様の意向によって変えることができない」といった場合もあるでしょう。よって一口に現担当者だけに原因があるとは言い難いものなのです。
 しかし、放置するわけにはいきません。よって低過ぎる場合は、「年々よくなっている」状態を目指しましょう。

  「今、時間単価が低いことは、あなただけの責任だとはいいません。
   しかしこのまま時間単価が低い状態であり続けるとしたら、それはあなたの責任です」

という姿勢が大切です。

③工夫する者をスターにし、個々の工夫を全体に反映させる

 上記のような姿勢で改善を行い、成果が上がったならば、他のお客様にも応用できるはずです。その取り組みを見逃すことなく拾い上げ、事務所全体に展開することによって、改善スピードも大幅にアップさせることができます。「工夫する者をスターにする」という発想は、とても重要です。

④改善は個人任せにせず、チームビルディング発想で行う

 時間単価の改善は、個々人の改善だけではおのずと限界があります。一人よりも二人、二人よりもチームで一致団結して改善した方が、数倍の成果をもたらすことができるものです。職員一人ひとりの不断の努力に、チームの協力を加えて改善していくことが大切なのです。

執筆者情報

株式会社名南経営コンサルティング

1966年開業の佐藤澄男税理士事務所(現・税理士法人名南経営)を祖業としたコンサルティングファーム「名南コンサルティングネットワーク」の中核企業。ネットワークでは、経営に関わるあらゆる専門家を抱え、中堅・中小企業を対象に、企業経営をワンストップでサポートして信用・実績を積み重ね、多くのクライアントをもつ。総スタッフ数569名(2019年7月1日現在)。同社は生産性向上を目的に開発したクラウドシステムMyKomonを使った会計事務所支援のほか、戦略的経営計画策定支援などの経営コンサルティング、経営者・後継者・経営幹部の育成指導、人事労務コンサルティングを得意分野とする。本コラムは全国の会計事務所向けコンサルティングに実績のある同社取締役の亀井英孝が執筆。

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 前回解説した通り、税理士事務所においては『一人1時間あたり売上高』が最も主要な生産性指標です。しかし、この指標では、事務所の現状を客観的に把握することはできても、 「これだけの売上高しかないのに、なぜこんなに労働時間が長いのか」 「こんなに働いているのに、なぜこれだけの売上高しかないのか」のいずれに問題があるのかがわかりません。そこで、
2019.12.25 10:00:15