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78年の歴史を持つ東口会計事務所 人と人との絆を大切にして地域経済の発展に貢献

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東口会計事務所 所長 税理士・行政書士
 東口哲夫
税理士
 東口晃三

東口会計事務所(奈良県奈良市)は、歴史ある街並みが印象的な船橋商店街にある老舗会計事務所である。昭和16年の開業以来、80年近くにわたり地域の中小企業をサポートし続けており、顧問先数は約500件、創業者の教師時代の教え子の店の大半が顧問先になっている。所属する5名の税理士は全員が身内という税理士一家の事務所で、20代の若手から70代のベテランまで、幅広い層の職員約30名が在籍する。顧問先の経営者に親身になって寄り添うことを信条としており、提供するサービスは会計・税務にとどまらず、起業支援から資金繰り、相続対策まで多岐にわたる。今回の取材では、創業者から数えて3代目の所長である東口哲夫氏と、4代目となる東口晃三氏に、地域企業に向き合う姿勢や、会計事務所のゴーイングコンサーンについてお話を伺った。(写真は右から松村吉映先生、東口哲夫先生、東口晃三先生、松村真良先生。写真撮影:市川法子)

身内から5名の税理士

戦前から3代続く東口会計事務所

―― 本日は奈良県奈良市の東口会計事務所にお邪魔しています。船橋商店街という歴史のある商店街に面しており、創業者である東口保見先生の教師時代の教え子の店の大半が顧問先という、まさに地域密着型の会計事務所です。事務所の歴史は長く、開業は昭和16年だと伺っています。
 本日はその東口会計事務所の取り組みについて、東口哲夫所長と、ご子息の東口晃三先生にお話を伺います。まずは、事務所の沿革からお願いいたします。
東口哲夫 東口会計事務所は、私の祖父が戦前の昭和16年に開業した事務所です。当時はまだ税理士制度や公認会計士制度がなかった時代で、税務代理士という制度のもとに開業しています。
 もともと祖父は商社に勤めていたのですが、肺病を患ってやむなく退社し、生活のために奈良の商業高校で会計教師の職に就きました。その後、税務代理士という制度があることを知り、その資格を取って開業したと聞いています。
 終戦後、公認会計士制度、続いて税理士制度が施行され、昭和23年に2回目となる公認会計士試験に合格し、県内第1号として会計士登録、公認会計士事務所として再スタートを切りました。その後、私の父が後を継ぎ、公認会計士事務所から税理士事務所へと看板を替えました。
―― ご子息の晃三先生も税理士ですが、どのような経緯でこの道に進まれたのですか。
東口晃三 自宅と事務所が隣接している環境のなかで育ち、ずっと父の背中を見てきたことが、この道に進んだ理由でしょうか。気がついたら税理士を目指していたという感じです。
 正式に入所したのは7年ほど前です。平成22年、26歳のときに税理士登録をし、すぐに父の仕事を手伝い始めました。一度は外に出たほうがよいかとも思ったのですが、早く身近にいる人の支えになりたいと、資格を取得してすぐに入所しました。
―― 現在の規模はどれくらいになりますか。
東口哲夫 顧問先の数は個人が200件、法人300件ほどで、職員は24名になります。有資格者を含めると29名です。実は、私の父は94の現在も健在で、今も現役の税理士です。さらに、私の妹の夫と、その息子も税理士になっていますから、私と彼(晃三先生)を加えて、当事務所には現在、5名の税理士がいます。
―― まさに税理士一家ですね。将来的に晃三先生が事務所を継がれたら、4代目ということになります。これほどの歴史がある会計事務所は多くありません。
 今は中小企業だけでなく、会計事務所もゴーイングコンサーンの実現が難しい時代ですが、どのような思いで事務所経営に取り組んでおられるのですか。
東口哲夫 東口会計は、家業として代々税理士業務を引き継いできました。同様に、お客様の会社も世代交代をしていますから、古くは戦前から引き継いでこられた会社を、私たちも世代をまたぎながら引き継いで、ご支援させていただいてきました。そのような流れのなかで、自然に親族内で有資格者が増え、永続的にお客様をサポートしていく体制が出来上がってきました。

コミュニケーション力が会計事務所の肝

―― 時代が変化し続けているにもかかわらず、事務所を継続させ、地元企業を支援し続けているのは素晴らしいことですね。
東口晃三 世代を超えてお客様をご支援するため、世の中の変化にも対応していく必要があります。例えば業務ソフトやツールはどんどん進化していますから、新しいものを貪欲に取り入れていく覚悟が必要です。
 周りの変化に常にアンテナを張りながら、ここぞというときに変化に対応できる、そのような体制を整えていかなければならないと思っています。何事にもセクシーに対処していきたいですね。
―― 日頃、業務に取り組むうえで心がけていることはありますか。
東口晃三 社長さんとお話をするときは、「楽しく明るく」を心がけています。世の中が変化し、テクノロジーが進化しても、やはりこの仕事は人対人が肝です。
 何をおいても社長さんとのコミュニケーションが重要ですから、私たち税理士は話題も豊富でなければなりません。そのために、常に社会の動向や出来事に関心を持ち、仕事だけでなく、あらゆることに興味を持つよう心がけています。
―― 所内のコミュニケーションは、どのようなことを意識されていますか。
東口晃三 当事務所には、下は20代前半の新人から、上は70代のベテラン職員まで在籍しています。20代と70代では価値観が全く違います。
 しかし、見方を変えれば多様な価値観の集まりともいえますので、これを事務所の力に変えていく努力をしています。そのために必要なのが、やはりコミュニケーションです。
 上は下に長年培ってきた経験や知恵をしっかり伝え、下はそれを素直に聞く耳を持つ。上の人たちも、下の意見を広い心で受け止める努力をしてもらいます。
 こういうと堅く聞こえますが、要は仲良くやってくれればよいのです。歓迎会や親睦会などの飲み会も積極的、自主的にやってもらいたいと思います。
 特に新人は、私たちにはない価値観を持っていますから、奇抜な考え方であっても頭ごなしに否定せず、注意深く受け止めるようにしています。
―― 今、会計業界全体が、深刻な求人難に陥っていますが、貴事務所では採用において、何か特別な取り組みをされていますか。
東口晃三 今は採用が難しい時代だと聞いてはいますが、地域性もあるのか、当事務所はそこまで深刻な状況にありません。ですから、採用の取り組みといっても、地元の商工会議所に採用ブースを出す程度です。
 私個人としては、採用活動よりも、ここで働いてみたいと思ってもらえるような、魅力的な事務所になることが重要だと思っています。
 最近の若い人たちを見ていて思うのは、おしなべて仕事にやりがいを求めているということです。そのやりがいをきちんと発信する必要はあると思います。
―― 晃三先生の考える、会計人のやりがいとは何でしょうか。
東口晃三 税理士は、税金の専門家として多くの経営者の方々と接しています。それも、その人の人生に入り込むほど深く接します。その結果として、私たち税理士は、たくさんの方の人生に、影響を与えることがあるでしょう。
 人と深く関わり合えることが税理士の特権であり、やりがいだと思います。

地域の活性化と、世代を超えた縦のつながり

―― 東口会計事務所の特徴、経営理念についてお聞かせください。
東口哲夫 特に明文化して理念を掲げているわけではありませんが、私としては、奈良の大仏様の手のひらのような事務所でありたいと思っています。
 大仏様の右手は恐れを取り除く、左手は救いの意味を持っています。いつでも手を開いて、乗っていただいた方を優しく包み込んでお守りする。そのような包容力のある事務所でありたいと思っています。
東口晃三 私たちは典型的な地域密着型の事務所なので、地域の活性化にも目を向ける必要があります。東口会計は地域と運命共同体であるといっても過言ではありません。
 ですから、税理士としての仕事はもちろんのこと、地域のための活動にも取り組んでいます。例えば、私は商工会議所の活動に積極的に参加するようにしており、その活動を通して、私自身も成長していきたいと思っています。
―― 今後の方針、将来的な展望、ビジョンについてお聞かせください。
東口哲夫 今この時代を生きている職員同士のつながり、お客様とのつながりを大事にすると同時に、世代を超えた縦のつながり、とりわけ未来の子孫とのつながりも大事にしたいと思っています。
 先人の築いてきたものを大切に受け継ぎながら3代続いてきた事務所ですから、今後も、そのスタンスを維持していきたいですね。そのうえで、今あるべき姿、そしてこれからの東口会計のあり方を探っていきたいと思っています。
―― 時代の変化、特にテクノロジーの変化についてはどのようにお考えですか。
東口哲夫 私は昔、画家になりたいと考えていたくらいで、アナログ世代であるといえます。
 ただ、何かをひらめいたり、工夫したりするようなことが得意で、創造的な感性は多少あると思います。
 今話題になっているAIは、そのような創造的な作業が苦手だと聞いています。自分の感性とAIが、うまく補完し合えるとよいのではないかと思います。
 また、社会全体の高齢化がどんどん進んでいくなかで、今まで以上に優しく、温かみのある人間関係が求められてくるのではないかと考えています。
 特に、会計事務所の仕事は人とのコミュニケーションが基本ですから、そこに温かみがなければいけませんし、AIが台頭してくればくるほど、それが求められると思います。
 税というと堅いイメージがありますが、国を動かすのは税であり人間です。国民の誰もが税金を支払い、それがいろいろな形で私たちの生活を支えているわけです。
 ですから、正しく税を納め、正しく税を使う。それによって少しでもよい社会を目指す。そのためにどのような役割を果たすべきか、果たしていけるのかを、税理士はもっと考えていかなければならないと思います。
 近鉄奈良駅前には、奈良時代の僧である行基の像があります。大仏像造営の責任者でもあり、行った数々の慈善事業から「文殊の化身」ともいわれている僧です。
 私も行基上人に倣い、税理士という役割を通じて、社会に貢献していきたいと思っています。

税の教育者としての使命

―― 東口所長が考えている、税理士としての社会貢献とはどのようなことでしょうか。
東口哲夫 ひとつは税の教育者になることだと思います。なぜなら、税務は法で定められた税理士の独占業務であり、税理士にしか税務は語れないからです。
 税務相談ができるのは税理士だけであると、税理士法に書かれています。税理士以外が税法についての検討や解釈を書くことは、税理士法違反になり得ますし、税法に関するコラムを書くことさえ、内容によっては税理士法に抵触し得る。架空の事例でも税理士法違反になり得るのです。
 税務当局ですら一般人に教えることはできませんが、税理士には教えることができます。彼(晃三先生)も今、地域の中学校で租税教室を受け持っています。
 国民の皆様に、税についてお伝えできるのは税理士しかいません。そういう立場にあるということを、私たちは再認識すべきです。
―― 晃三先生は租税教室を受け持っていらっしゃるのですね。
東口晃三 税理士会が実施している租税教室に参加させていただいています。税の基本的な仕組みや、今の時期なら消費税が上がるとはどういうことかなどについて、中学校で教えています。
 実は数年前、初めて母校に教えに行きました。正直、最初は「仕事も忙しいのに大変だ」という気持ちがありました。しかし、教壇に立ってみると、この仕事には本当にやりがいがあるのです。
 私の話を聞いてくれる生徒たちのまなざしはとても真剣でしたし、グループディスカッションにも、皆が意欲的に取り組んでくれました。
 もちろん、租税教室の講師の仕事は割のいい仕事ではありませんが、お金には換えられないものを、生徒の皆さんからもらえたような気分になりました。
 税理士は、税の専門家として、人に知識や情報を伝えていく仕事です。その一環として、租税教室の講師は今後も続けていきたいと思っています。
―― 最後に、東口所長から読者の皆様にメッセージをお願いします。
東口哲夫 今、全国に約8万人もの税理士がいますが、この業界も高齢化が進んでいます。
 そこでお願いがあるのですが、ご高齢の税理士の先生方に、税の教育者になっていただきたいのです。日本の未来を担う小学校や中学校の生徒さんたちに税金のイロハを伝えるのは大切なことです。税金がどのように集められ、どのように使われるのか、分かりやすく具体的に教えてあげていただきたいと思います。
 現行の教育制度のもとでは、税に関して子供たちが学ぶ時間はたった50分です。授業を1回受けるだけだそうです。大学でも、簿記論や税法は教えるけれども、税金そのものについては教えていません。
 税理士法の制約もあり、学校の先生は税金について教えられません。では、誰が子供に税金について教えればよいのでしょうか。
 ですから、ぜひとも全国の税理士の方々には、日本の将来を背負って立つ子供たちに、税金について教えてあげていただきたいと思います。
 税金は私たちが生きる糧であり、社会の仕組みの根幹です。これからは、子供のときから税金のイロハを教えていく仕組みをつくるべきだと思います。
―― 本日は、大変興味深いお話をありがとうございました。東口会計事務所のさらなるご活躍を祈念しています。



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株式会社実務経営サービス

株式会社実務経営サービスは、会計事務所の成長や発展をご支援している会社です。税理士の先生方を対象とする勉強会「実務経営研究会」の運営、各種セミナー・カンファレンスの企画、会計事務所経営専門誌「月刊実務経営ニュース」の発行を事業の柱としています。おかげさまで2018年に、創業20周年を迎えることができました。

「月刊実務経営ニュース」は、成長の著しい会計事務所、優れた顧問先支援を実践している税理士を取材・紹介し、会計業界の発展に貢献することを目指しています。おもな読者は全国の会計事務所の所長や職員の皆様で、全国に約3万件あるといわれている会計事務所の約1割にご購読いただいています。最新号を無償で読むことができる「Web版実務経営ニュース」もありますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

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2020.01.10 15:11:08