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消費税増税に伴う社会保険の月額変更について

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今日は守田社会保険労務士の訪問日です。

リエ「守田先生、こんにちは。早速ですが、10月から消費税が10%に増税になりましたが、社会保険上で注意することはありますか。」

守田「そうですね、給与の額に消費税はかかりませんが、支給されている通勤手当には消費税が含まれているので、増税に伴って増額される方が多いですよね。」

リエ「はい。ほぼ全員の通勤手当が変更になります。せっかくなので、このタイミングで社員の現住所と新しい通勤手当を確認しました。」

守田「通勤手当は固定的賃金なので、変更があった場合は月額変更(随時改定)のチェックをしなければいけませんね。具体的には、変更のあった月から3ヵ月間の残業手当等を含めた報酬の平均が、現在の標準報酬月額より2等級以上の差が生じた場合は、4ヵ月目から保険料が改定されることになります。」

リエ「通勤手当を毎月日割りで支給しているパートの方は固定額ではないから、対象外ということですか。」

守田「毎月支給や3ヵ月毎もしくは6ヵ月毎での支給の社員はもちろん対象ですが、日割り支給のパート社員も1日単価は固定額ですから、単価に変更があれば対象となります。」

リエ「それでは、全員の10月から12月の報酬を確認して2等級以上の差が生じていれば、1月の月額変更として処理しなければいけませんね。」

守田「いくつか注意点があります。今回は消費税増税に伴う変更ですから、対象者全員が『増額↑』ですよね。その場合、報酬の3ヵ月平均額も2等級以上の『増額↑』でないと対象になりません。固定的賃金が『増額↑』なのに報酬平均が2等級以上の『減額↓』の場合や、固定的賃金が『減額↓』なのに報酬平均が2等級以上の『増額↑』の場合、つまり、ベクトルの方向が逆向きの場合は月額変更の対象にはならないのです。それと、その3ヵ月間の基礎日数は17日以上(※注)である必要があります。病気やケガ等で欠勤があり基礎日数が不足する月が1ヵ月でもあれば、月額変更の対象になりません。ここは算定(定時決定)と異なるところです。」

リエ「対象になる人とそうでない人をしっかり確認しないといけないですね。」

守田「もう1つ気をつけなければいけないことがあります。通勤手当を毎月支給している会社は、10月もしくは前月から通勤手当を変更しているケースが多いと思いますので、変更した月から3ヵ月間で確認すればいいのですが、3ヵ月毎もしくは6ヵ月毎に支給している場合は、新しい額で初めて支給した月から3ヵ月間で確認する必要があります。全社員一括で同時期に支給していれば、同じタイミングで確認すればいいのですが、入社時から個人毎に支給している場合は、それぞれの社員が新しい額で支給された月から3ヵ月間で確認する必要があります。」

リエ「一人ひとりの確認のタイミングが違うなんて見落としてしまいそうで不安ですね。」

守田「なので、通勤手当はできるだけ支給月を統一するか毎月支給をお勧めしています。」

リエ「うちは毎月支給で良かったです。ところで、今回の住所確認でひとり、半年前に引っ越しをして通勤手当が変更になっていたのに届け出をしていなかった社員がいることがわかりました。差額の調整額は10月給与で支給しましたが、月額変更はその調整額を除いて確認すればいいのですよね。」

守田「はい、10月からの月額変更確認はその通りです。ただし、もう1つ確認しなければならないことがあります。その社員は、本来ならば半年前に通勤手当が変更になるはずだったのですから、半年前から3ヵ月間の報酬を正しい通勤手当が支給されたものとみなして確認し、2等級以上の差が生じていれば遡って月額変更届を提出する必要があります。保険料額の修正ももちろん行わなければなりません。」

リエ「そうなんですか、早速確認してみます。先生にお話ししてよかったです。ありがとうございました。」

(※注)パート社員は15日以上、特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上

監修

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税理士 坂部達夫

坂部達夫税理士事務所/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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今日は守田社会保険労務士の訪問日です。リエ「守田先生、こんにちは。早速ですが、10月から消費税が10%に増税になりましたが、社会保険上で注意することはありますか。」守田「そうですね、給与の額に消費税はかかりませんが、支給されている通勤手当には消費税が含まれているので、増税に伴って増額される方が多いですよね。」リエ「はい。ほぼ全員の通勤手当が変更になります。せっかくなので、このタイミングで社員の現住所と新しい通勤手当を確認しました。」守田「通勤手当は固定的賃金なので、変更があった場合は月額変更(随時改定)のチェックをしなければいけませんね。具体的には、変更のあった月から3ヵ月間の残業手当等を含めた報酬の平均が、現在の標準報酬月額より2等級以上の差が生じた場合は、4ヵ月目から保険料が改定されることになります。」リエ「通勤手当を毎月日割りで支給しているパートの方は固定額ではないから、対象外ということですか。」守田「毎月支給や3ヵ月毎もしくは6ヵ月毎での支給の社員はもちろん対象ですが、日割り支給のパート社員も1日単価は固定額ですから、単価に変更があれば対象となります。」リエ「それでは、全員の10月から12月の報酬を確認して2等級以上の差が生じていれば、1月の月額変更として処理しなければいけませんね。」守田「いくつか注意点があります。今回は消費税増税に伴う変更ですから、対象者全員が『増額↑』ですよね。その場合、報酬の3ヵ月平均額も2等級以上の『増額↑』でないと対象になりません。固定的賃金が『増額↑』なのに報酬平均が2等級以上の『減額↓』の場合や、固定的賃金が『減額↓』なのに報酬平均が2等級以上の『増額↑』の場合、つまり、ベクトルの方向が逆向きの場合は月額変更の対象にはならないのです。それと、その3ヵ月間の基礎日数は17日以上(※注)である必要があります。病気やケガ等で欠勤があり基礎日数が不足する月が1ヵ月でもあれば、月額変更の対象になりません。ここは算定(定時決定)と異なるところです。」リエ「対象になる人とそうでない人をしっかり確認しないといけないですね。」守田「もう1つ気をつけなければいけないことがあります。通勤手当を毎月支給している会社は、10月もしくは前月から通勤手当を変更しているケースが多いと思いますので、変更した月から3ヵ月間で確認すればいいのですが、3ヵ月毎もしくは6ヵ月毎に支給している場合は、新しい額で初めて支給した月から3ヵ月間で確認する必要があります。全社員一括で同時期に支給していれば、同じタイミングで確認すればいいのですが、入社時から個人毎に支給している場合は、それぞれの社員が新しい額で支給された月から3ヵ月間で確認する必要があります。」リエ「一人ひとりの確認のタイミングが違うなんて見落としてしまいそうで不安ですね。」守田「なので、通勤手当はできるだけ支給月を統一するか毎月支給をお勧めしています。」リエ「うちは毎月支給で良かったです。ところで、今回の住所確認でひとり、半年前に引っ越しをして通勤手当が変更になっていたのに届け出をしていなかった社員がいることがわかりました。差額の調整額は10月給与で支給しましたが、月額変更はその調整額を除いて確認すればいいのですよね。」守田「はい、10月からの月額変更確認はその通りです。ただし、もう1つ確認しなければならないことがあります。その社員は、本来ならば半年前に通勤手当が変更になるはずだったのですから、半年前から3ヵ月間の報酬を正しい通勤手当が支給されたものとみなして確認し、2等級以上の差が生じていれば遡って月額変更届を提出する必要があります。保険料額の修正ももちろん行わなければなりません。」リエ「そうなんですか、早速確認してみます。先生にお話ししてよかったです。ありがとうございました。」(※注)パート社員は15日以上、特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上
2019.11.05 16:12:26