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押さえておきたい契約と契約書の基礎知識

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弁護士の川上修です。今回は、主に創業時の事業者の方に押さえていただきたい契約と契約書に関する基礎知識とポイントをご説明いたします。

Q 契約とは何ですか。
A 分かりやすくいうと、二人以上の当事者の間で売買や賃貸などの一定の法律的効果の発生を目的とした合意をいいます。

Q 契約は自由に破棄できるのですか。
A 契約により当事者双方に権利と義務が発生しますので、自由に破棄することはできません。ただし、一方当事者のみに義務が発生する契約や、自由に破棄できることが契約の内容になっている場合は、この限りではありません。

Q 契約は口頭でも成立するのですか。
A 原則として、口頭で成立します。

Q 契約が口頭で成立しても契約書を作成しないといけないのですか。
A 契約書の作成は義務ではありません。ただし、口頭だけでは契約を締結した証拠が残らないことが多く、また複雑な契約の場合は当事者間で契約内容の認識について齟齬が生じることもありますので、将来のトラブルを防ぐために、契約書は作成しておくべきです。

Q 契約書がないと裁判はできないのですか。
A 契約書がなくても裁判を提起することは可能です。ただし、裁判を提起して相手に契約に定めた義務の履行を求める場合は、契約の存在と内容を証明しなければなりません。契約書がなくても、相手が契約を認めている場合や、録音など契約を証明できる他の証拠がある場合は良いのですが、その他の場合は、証明することが困難な場合が多いといえます。

Q 見積書、納品書、請求書があれば契約書はいらないのですか。
A 見積書、納品書、請求書でも契約の存在や内容を推認することはできますが、これらの書類は一方当事者が作成するものですので、双方の当事者が作成する契約書とは決定的に異なります。やはり契約書は必要だと考えられます。

Q 契約書の案は当事者のどちらが作成しても良いのですか。
A どちらが作成しても構いません。ただし、例えば、裁判になった場合の裁判所をどちらの住所地に近い方にするかなど(専属的合意管轄といいます。)、契約書の定め方によっては、当事者の一方が有利になることがありますので、まずは自分で作成してみることをお勧めします。

Q 相手が契約書の内容に違反した場合、直ちに相手に義務の履行を強制することができるのですか。
A 契約書だけではできません。契約書を契約が成立した証拠として、相手を被告として、訴訟を提起して、判決(債務名義)を取得して、強制執行を申し立てることになります。

Q 契約書を公正証書にする意味は何ですか。
A 公正証書とは公証人が作成した証書のことです。契約書を公正証書にして、違反した場合は強制執行ができることを定めておけば(強制執行認諾約款といいます。)、上のQAのように訴訟を提起することなく、直ちに強制執行を申し立てることができます。相手の義務違反による不利益が大きい場合や、相手の義務違反の可能性が高い場合は、公正証書にすることをお勧めします。

Q 収入印紙が貼られていない契約書は無効ですか。
A 収入印紙の有無は契約書の内容には影響しません。ただし、収入印紙が貼られていない場合は、最大で印紙額の3倍の過怠税が課される可能性があります。

Q 契約書は必ず自署をしなければいけませんか。また、印鑑は実印でなければいけないのでしょうか。
A 必ず自署する必要はありません。また、実印も必須ではなく、認印でも大丈夫です。ただし、記名式や認印だけの契約書は、当事者以外の者が偽造することが容易です。連帯保証契約書など一方当事者の負担が大きい契約書は、偽造が問題になるケースが多いので、当事者本人が自署して、実印を押印した上で、印鑑証明書を添付することが望ましいです。

その他、契約や契約書に関する質問がありましたら、ご遠慮無くお問い合わせください。

執筆者情報

弁護士 川上 修

弁護士法人ALAW&GOODLOOP

会計事務所向け法律顧問
会計事務所向けセミナー

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弁護士の川上修です。今回は、主に創業時の事業者の方に押さえていただきたい契約と契約書に関する基礎知識とポイントをご説明いたします。Q 契約とは何ですか。A 分かりやすくいうと、二人以上の当事者の間で売買や賃貸などの一定の法律的効果の発生を目的とした合意をいいます。Q 契約は自由に破棄できるのですか。A 契約により当事者双方に権利と義務が発生しますので、自由に破棄することはできません。ただし、一方当事者のみに義務が発生する契約や、自由に破棄できることが契約の内容になっている場合は、この限りではありません。Q 契約は口頭でも成立するのですか。A 原則として、口頭で成立します。Q 契約が口頭で成立しても契約書を作成しないといけないのですか。A 契約書の作成は義務ではありません。ただし、口頭だけでは契約を締結した証拠が残らないことが多く、また複雑な契約の場合は当事者間で契約内容の認識について齟齬が生じることもありますので、将来のトラブルを防ぐために、契約書は作成しておくべきです。Q 契約書がないと裁判はできないのですか。A 契約書がなくても裁判を提起することは可能です。ただし、裁判を提起して相手に契約に定めた義務の履行を求める場合は、契約の存在と内容を証明しなければなりません。契約書がなくても、相手が契約を認めている場合や、録音など契約を証明できる他の証拠がある場合は良いのですが、その他の場合は、証明することが困難な場合が多いといえます。Q 見積書、納品書、請求書があれば契約書はいらないのですか。A 見積書、納品書、請求書でも契約の存在や内容を推認することはできますが、これらの書類は一方当事者が作成するものですので、双方の当事者が作成する契約書とは決定的に異なります。やはり契約書は必要だと考えられます。Q 契約書の案は当事者のどちらが作成しても良いのですか。A どちらが作成しても構いません。ただし、例えば、裁判になった場合の裁判所をどちらの住所地に近い方にするかなど(専属的合意管轄といいます。)、契約書の定め方によっては、当事者の一方が有利になることがありますので、まずは自分で作成してみることをお勧めします。Q 相手が契約書の内容に違反した場合、直ちに相手に義務の履行を強制することができるのですか。A 契約書だけではできません。契約書を契約が成立した証拠として、相手を被告として、訴訟を提起して、判決(債務名義)を取得して、強制執行を申し立てることになります。Q 契約書を公正証書にする意味は何ですか。A 公正証書とは公証人が作成した証書のことです。契約書を公正証書にして、違反した場合は強制執行ができることを定めておけば(強制執行認諾約款といいます。)、上のQAのように訴訟を提起することなく、直ちに強制執行を申し立てることができます。相手の義務違反による不利益が大きい場合や、相手の義務違反の可能性が高い場合は、公正証書にすることをお勧めします。Q 収入印紙が貼られていない契約書は無効ですか。A 収入印紙の有無は契約書の内容には影響しません。ただし、収入印紙が貼られていない場合は、最大で印紙額の3倍の過怠税が課される可能性があります。Q 契約書は必ず自署をしなければいけませんか。また、印鑑は実印でなければいけないのでしょうか。A 必ず自署する必要はありません。また、実印も必須ではなく、認印でも大丈夫です。ただし、記名式や認印だけの契約書は、当事者以外の者が偽造することが容易です。連帯保証契約書など一方当事者の負担が大きい契約書は、偽造が問題になるケースが多いので、当事者本人が自署して、実印を押印した上で、印鑑証明書を添付することが望ましいです。その他、契約や契約書に関する質問がありましたら、ご遠慮無くお問い合わせください。
2019.10.30 17:18:18