生産緑地法の改正のポイントと関連税制の見直しについて
生産緑地に指定されている土地の多くが2022年に指定解除を迎える ことで、都市部の地価の下落が懸念されている、いわゆる「 2022 年問題」を背景に、都市農地の保全・活用を図るため、生産緑地法の改正が行われました。
<生産緑地法の改正のポイント>
① 特定生産緑地制度の創設
生産緑地の買い取り申出期日より前に、予め土地所有者が「特定生産緑地」の指定の申し出を行うことで、買い取り申し出の期日をさらに10年間延期する制度が創設されました。10年の期間延長後は、改めて所有者の同意を得てさらに10年毎の延長ができ、買い取り申し出を実質的に先送りすることが可能となりました 。
② 建築規制の緩和
従来、生産緑地地区内で建築可能な施設は、農業用施設(ビニールハウスや農産物集荷施設、農機具収納施設等に限定されていましたが、今後は農産物加工施設や農産物直売所、農家レストラン等の建築も可能となります。これによって、都市農家における農業ビジネスの幅も大きく広がることとなりました。
③ 面積要件の引き下げ
都市計画で生産緑地地区を定める場合、従来は一律500平方メートル以上の面積要件がありましたが、条例を通じて300平方メートルまで緩和することが可能となりました。これにより、従来、区画整理等に伴い、生産緑地 地区の一部が解除された場合に、残された面積が規模要件を下回ると生産緑地地区全体が解除されていた、いわゆる「道連れ解除」も少なくなり、営農意欲のある小規模都市農家の保護が図られました。
以上のような生産緑地法の改正を受けて、平成30年度税制改正により生産緑地に係る税制の見直しが行われました。
<生産緑地に係る税制の見直し>
① 相続税の納税猶予における「特例農地等」の範囲の拡大
・生産緑地の指定を延長された「特定生産緑地 」である農地等の追加
・三大都市圏の特定市の「田園住居地域」にある農地の追加
⇒従って、今後次世代が相続税の納税猶予を受けるためには、必ず「特定生産緑地」の指定を受ける必要があります。
② 市民農園等への貸付けにおける相続税の納税猶予の適用拡大
・納税猶予の適用を受ける農業相続人が、市町村長の認定を受けた認定事業計画に基づき、他の農業者に直接農地を貸し付ける場合
・地方公共団体や農業協同組合が農業委員会の承認を受けて開設する市民農園の用に供するために、これらの開設者に農地を貸し付ける場合
・農地の所有者が農業委員会の承認を受けて市民農園を開設し、利用者に直接農地を貸し付ける場合
・地方公共団体や農業協同組合以外の者(株式会社など)が農業委員会の承認を受けて開設する市民農園の用に供するために、開設者に農地を貸し付ける場合
上記の貸付けについては、その貸付けを行った日から2ヶ月以内に納税地の所轄税務署長へ届け出ることにより、その貸付けに係る地上権、永小作権、使用貸借による権利又は賃借権の設定はなかったものとみなされ、かつ農業経営も廃止していないものとみなされ、相続税の納税猶予制度の適用を受けることができることとなりました(租税特別措置法第70条の6の2①)。相続開始後、自ら農業を行わなくてもよくなりました。
③ 固定資産税・都市計画税の激変緩和措置の適用
特定生産緑地として指定された生産緑地については、農地評価・農地課税が適用されます。買い取り申出期日までに特定生産緑地として指定されなかったもの、特定生産緑地の指定の期限が延長されなかったもの、特定生産緑地の指定が解除されたものについては、三大都市圏特定市では、宅地並み評価・宅地並み課税へ段階的に引き上げられます(※激変緩和措置)。
※激変緩和措置
課税標準額に初年度0.2、2年目0.4、3年目0.6、4年目0.8の軽減率を乗じる措置
当事務所では、土地評価における考え方等のアドバイスや、規模格差補正率適用後の評価額が時価より高い場合等における時価申告による鑑定評価も行っております。