「自社ポイント」の税務上の取扱い
リエ「黒田さんこんにちは。最近、毎日コツコツできる節約術を模索しているんですけれど、その時に見つけた近所のスーパーのポイントサービスについて質問してもいいですか。」
黒田「リエちゃんこんにちは。どんな内容ですか。」
リエ「多店舗展開していないスーパーなのですが、以前まで使っていたスタンプカードの代わりに、独自のポイント制を導入するらしいんです。100円の買い物につき1ポイント、500ポイント溜まったら500円引きするサービスを始める、という広告がありました。」
黒田「リピーター客を増やす目的などで、最近はそういうサービスも普及していますね。」
リエ「確かに、買い物をしてポイントを溜めようと、他のお店に行くのを控えたりしますね。集客目的ならば、店舗側は販売促進費として経理処理しているのでしょうか。」
黒田「スーパーということであれば、飲食品などを多く取り扱っているので『自社ポイント』は『売上値引き』として処理しているのではないでしょうか。」
リエ「今回の例だと、100円売上計上ごとに1円の売上値引きを計上するんですか。」
黒田「いえ、この例でいうと、顧客から500円の値引きを求められた時に、500円の売上値引きを計上します。実際には使用されないポイントもありますからね。」
リエ「有効期限があったりすると、溜まる前に失効してしまうこともありますからね。失効して使われないことが多いなら、売上値引きではなく、販売促進費のような経費に計上したほうが見やすいように思うのですが。」
黒田「そういった場合、消費税法上の扱いを注意しなければなりませんね。経費勘定を『課税仕入れ』、売上値引きを『売上に係る対価の返還等』で集計しているならば、売上値引き勘定を使わなくてはなりません。消費税法上の『課税仕入れ』の要件は、何らかの『役務の提供を受けていること』が含まれますが、ポイントを使用する際に顧客から店舗側が役務の提供を受けることはないでしょう。」
リエ「なるほど、消費税の計算に関わるのですね。とはいえ、課税仕入れの増加も課税売上の減少も、結論の納税額は同じになりますよね。」
黒田「10月より軽減税率制度が導入されると、納税額にも差が発生する場合があります。」
リエ「どういうことでしょう。」
黒田「たとえば軽減税率対象の税込売上1万800円の商品に対して、ポイントで500円分の値引きをしたとします。
(1) 販売促進費などの課税仕入れとして処理
販売促進費 455 / 売上 10,000
仮払消費税 45 / 仮受消費税 800
現金 10,300
(2) 売上値引きとして処理
売上値引き 463 / 売上 10,000
仮受消費税 37 / 仮受消費税 800
現金 10,300
このように、課税仕入れとして処理するのか、売上値引きとして処理するのかによって消費税の納税額が異なってきます。」
リエ「なるほど。軽減税率の対象になる売上に対してのポイント値引きには特に注意が必要ってことですね。しかもこの例であれば、正しい計算よりも消費税の納税額が少なくなりますから、後々延滞税などを納めることになったら大変ですね。」
黒田「現在の単一税率制度上でも、売上に係る対価の返還等として処理することが求められていますから、今から正しい処理をしておけば問題ないですよ。」
リエ「私たち消費者側からできることは、お店がどうやって処理しているかを調べることよりも、付与されたポイントを効率よく確実に使用することなんですけどね!」
黒田「リエちゃんやる気満々ですね。節約頑張ってください。」