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個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度

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1.制度の仕組み

 認定相続人が相続等により特定事業用資産を取得して事業を継続する場合、担保提供を条件に、その認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税の納付が猶予されます。

認定相続人
承継計画に記載された後継者で、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の規定による認定を受けた者

特定事業用資産
被相続人の事業(不動産貸付事業等を除く)の用に供されていた土地(面積400㎡まで)、建物(床面積800㎡まで)及び建物以外の減価償却資産(固定資産又は営業用として自動車税若しくは軽自動車税の課税対象となっているものその他これらに準ずるものに限る)で青色申告書に添付される貸借対照表に計上されているもの

承継計画
認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて作成された特定事業用資産の承継前後の経営見通し等が記載された計画であって、平成31 年4月1日から令和6年3月31 日までの間に都道府県に提出されたもの

2.猶予税額の計算方法

 非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例と同様です。

3.猶予税額の免除(全部免除・一部免除)

全部免除
① 認定相続人が、その死亡の時まで、特定事業用資産を保有し、事業を継続した場合
② 認定相続人が、一定の身体障害者等に該当した場合
③ 認定相続人について破産手続開始の決定があった場合
④ 相続税の申告期限から5年経過後に、次の後継者へ特定事業用資産を贈与し、その後継者がその特定事業用資産について贈与税の納税猶予制度の適用を受ける場合

一部免除
① 同族関係者以外の者へ特定事業用資産を一括して譲渡する場合
② 民事再生計画の認可決定等があった場合
③ 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特定事業用資産の一括譲渡又は特定事業用資産に係る事業の廃止をする場合

4.猶予税額の納付

① 猶予税額の全額を納付
・認定相続人が、特定事業用資産に係る事業を廃止した場合等
② 譲渡等をした部分に対応する猶予税額を納付
・認定相続人が、特定事業用資産の譲渡等をした場合

5.利子税の納付

 猶予税額の全部又は一部を納付する場合には、その納付税額について相続税の法定申告期限からの利子税を併せて納付する。

6.その他

① 青色申告の承認
・被相続人は相続開始前において、認定相続人は相続開始後において、それぞれ青色申告の承認を受けていなければならない。
② 継続届出書
・認定相続人は、相続税の申告期限から3年ごとに継続届出書を税務署長に提出しなければならない。
③ 現物出資で会社設立
・認定相続人が相続税の申告期限から5年経過後に特定事業用資産を現物出資し、会社を設立した場合には、その認定相続人がその会社の株式等を保有していること等一定の要件を満たすときは、納税猶予が継続されます。
④ 被相続人の債務免除
・被相続人に債務がある場合には、特定事業用資産の価額からその債務の額(明らかに事業用でない債務を除く)を控除した額を猶予税額の計算基礎とする。
⑤ 小規模宅地等の特例
・この納税猶予の適用を受ける場合には、特定事業用宅地等について小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けることができない。

7.適用時期

 平成31年1月1日から令和10年12月31日まで。

このコンテンツは、平成31年4月20日現在の法令・通達等によっています。

資料提供(書誌出典)

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書名:令和元年版 税務・労務ハンドブック

発行日:2019年6月7日
発行元:株式会社 清文社
規格:B6判788頁

著者:公認会計士・税理士 井村登、公認会計士・税理士 馬詰政美、公認会計士・税理士 菊池弘、特定社会保険労務士 佐竹康男、特定社会保険労務士 井村佐都美

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2019.08.20 16:08:24