店舗を購入しようと思ってるんだけど
固定資産の取得
あゆみ:まだ開業して1年も経ってないけど、お店を移転しようと思ってるの。今は賃貸だけど、移転先は自分で購入する計画。
ケン:なるほど。購入資金は大丈夫なんですか?
あゆみ:新創業融資制度を利用して融資してもらう予定なの。
ケン:返済計画は無理のないものになっていますか?
あゆみ:返済期間は20年、利率は2.1%、毎月の返済額は20万円ちょっとであとは利息。今の家賃の支払いと同じくらいです。
ケン:わかりました。
固定資産の経理処理
あゆみ:お店を購入した時の経理方法で気を付けることある?
ケン:お店の購入の際支払った金額を経費処理するのではなく、一旦資産計上します。その資産の科目を「土地」、「建物」、「建物付属設備」に分ける必要があります。建物、建物付属設備については資産計上した後は決算ごとに減価償却費を計上します。土地については減価償却をせずに取得価額のまま資産に計上することになります。
あゆみ:減価償却費って何?
ケン:取得価額が10万円以上のものについて、資産に計上した後、その取得価額を使用可能期間にわたって順次費用計上します。この使用可能期間にわたって費用計上することを減価償却と言います。使用可能期間のことを耐用年数といい、資産の種類ごとに耐用年数が決められています。店舗用建物の耐用年数は木造合成樹脂製の場合は22年、鉄筋コンクリート造の場合は39年です。
あゆみ:わかったわ。購入した時の処理は改めて聞きます。
固定資産を購入するとかかる税金
あゆみ:お店を購入することによってかかる税金はありますか?
ケン:不動産取得税と固定資産税がかかります。不動産取得税については、購入してから約6か月から1年半までの間に都税事務所から納付書が送られてきます。取得時1回限りですが、これを納付書が送られてきた月の末日までに納めなければなりません。固定資産税については、翌年から毎年6月ころに納付書が送られてきます。固定資産税は毎年かかるものです。また、建物付属設備の中に建物と一体となっていないものがあれば、毎年1月に償却資産税申告書を都税事務所に提出し固定資産税と同じ時期に償却資産税を納める必要があります。
あゆみ:随分と税金がかかるのね。資産を購入するのも大変ね。
ケン:社長のお店の場合は関係ないかもしれませんが、1つの市区町村で事業所の床面積が1,000㎡を超える場合には決算ごとに事業所税を納めなければなりません。事業所税がかからない市区町村もありますが、首都圏の主要都市は事業所税がかかります。課税される金額は東京都の場合1,000㎡で60万円、1㎡増すごとに600円加算されます。
あゆみ:お店は1,000㎡ないから事業所税はかからないわね。
固定資産を購入した場合の消費税
あゆみ:ところで、これだけ大きな買い物をするときの消費税ってどうなるの?
ケン:土地を購入する際の消費税は非課税です。建物については消費税がかかるため、その支払った消費税を消費税の申告書上で控除することができます。ただし、控除できるのは全ての収入の中の消費税がかかる収入の割合の部分だけとなります。その控除した消費税が売上の消費税よりも多い場合にはその多い部分の消費税が還付されます。
あゆみ:開業当初、消費税は2年間申告も納税もしなくていいって言われたけど。
ケン:はい、その通りです。開業から2年の間は消費税を納める義務はありません。ですから、何もしなければ払った消費税が還付されることもありません。そこで、消費税の還付を受けようとする場合は「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署に提出をします。これにより開業した事業年度から消費税の申告書を提出することとなり、高額の資産を購入した際の消費税の還付を受けることができます。しかし、「消費税課税事業者選択届出書」を提出して高額の資産を購入すると、その事業年度から3期は課税事業者となります。1期、2期について消費税を納めなかった場合と1期目還付、2期、3期について消費税を納税した場合とでどちらが有利か判定を行いましょう。
あゆみ:わかったわ。そこはお願いね。
経営力向上計画の申請
あゆみ:もう一杯一杯だけど他にも何かある?
ケン:お店を購入することで年平均の投資利益率が5%アップするという計画が立てられれば、経営力向上計画の申請をして確認を受けることにより、取得価額の10%相当額が法人税額から控除、もしくは取得価額の全額を即時償却することができます。
あゆみ:よく分からないけど、そこもお願いね。
ケン:かしこまりました。