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公務員の勤務関係の特殊性

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 民間の労働者と違い,公務員は国家公務員法や地方公務員法により,勤務先である国や自治体と特別な勤務関係を形成しています。以下,私企業とは異なる点をいくつか紹介いたします。
 まず,第一点として,公務員は国や自治体と労働契約をして雇われているのではなく,任命権者による任命という行政行為によって勤務関係(任用関係)を形成していることが挙げられます。勤務条件は法律や条例,人事院規則で定められることになります。
 このため,民間では,「採用内定」により始期付き解約権留保付き労働契約が成立したとされ,内定取消には解雇権濫用法理が適用されますが,公務員の「採用内定」は契約とはいえないため,法的拘束力がないとされています(もっとも,内定取消の態様や時期によっては国や自治体に賠償責任が発生することはありえます。)。
 第二に,今述べたことの裏返しとして,公務員は「辞めます」という一方的な意思表示により離職できるものではなく,任命権者の辞職承認があってはじめて職を解かれるということになります。
 自らの意思に反しても当然に失職することもあります。たとえば,地方公務員が罪を犯し,裁判で禁錮刑以上の判決を受けた場合,仮に執行猶予が付いていても原則として当然に失職をすることになります(ただし,条例で救済できるケースもあります。)。
 第三に,公務員が職務を行うにあたり故意または過失により他人に損害を与えた場合,損害を被った被害者は,公務員個人ではなく国や自治体に対して賠償を請求することになります。公務員個人に対し直接に責任を追及することは原則としてできません。もっとも,国や自治体は,賠償をした後,公務員に対して求償することができますが,それも公務員に故意・重過失があった場合に限られています。
 以上のとおり,公務員の勤務関係をめぐっては,民間の労働者と異なる点がありますので注意が必要です。



執筆者情報

弁護士 鷲見 賢一

弁護士法人ALAW&GOODLOOP

会計事務所向け法律顧問
会計事務所向けセミナー

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 民間の労働者と違い,公務員は国家公務員法や地方公務員法により,勤務先である国や自治体と特別な勤務関係を形成しています。以下,私企業とは異なる点をいくつか紹介いたします。 まず,第一点として,公務員は国や自治体と労働契約をして雇われているのではなく,任命権者による任命という行政行為によって勤務関係(任用関係)を形成していることが挙げられます。勤務条件は法律や条例,人事院規則で定められることになります。 このため,民間では,「採用内定」により始期付き解約権留保付き労働契約が成立したとされ,内定取消には解雇権濫用法理が適用されますが,公務員の「採用内定」は契約とはいえないため,法的拘束力がないとされています(もっとも,内定取消の態様や時期によっては国や自治体に賠償責任が発生することはありえます。)。 第二に,今述べたことの裏返しとして,公務員は「辞めます」という一方的な意思表示により離職できるものではなく,任命権者の辞職承認があってはじめて職を解かれるということになります。 自らの意思に反しても当然に失職することもあります。たとえば,地方公務員が罪を犯し,裁判で禁錮刑以上の判決を受けた場合,仮に執行猶予が付いていても原則として当然に失職をすることになります(ただし,条例で救済できるケースもあります。)。 第三に,公務員が職務を行うにあたり故意または過失により他人に損害を与えた場合,損害を被った被害者は,公務員個人ではなく国や自治体に対して賠償を請求することになります。公務員個人に対し直接に責任を追及することは原則としてできません。もっとも,国や自治体は,賠償をした後,公務員に対して求償することができますが,それも公務員に故意・重過失があった場合に限られています。 以上のとおり,公務員の勤務関係をめぐっては,民間の労働者と異なる点がありますので注意が必要です。
2019.06.25 16:57:04